2話 操縦室
操縦室のドアが開くと同時に女性の声がした。
「こんな所でデート?」
ニキとアレックスは振り向く。
「ニキ、こいつには気を付けなきゃだめよ~。
あちこちにガールフレンドがいるんだから」
その言葉に、アレックスはあきれたように答える。
「ラン、人聞きが悪いな~。
将来有望な新入社員に、変なことを吹き込まないでくれよ。
それにオレは女を追っかけるなんてしないよ、向こうの方から寄ってくるのさ」
ランは、肩をすかしながらやって来て、ニキの座っている副操縦席の背もたれに寄りかかると、前方の惑星を見た。
ニキは「将来有望だなんて・・・」と小さく言いかけて黙る。
もちろん自分は、将来有望といえるほど有能だと思っていない。
ただ、それはユーモアーの一つで、否定するほどのことでもないと思い、黙ったのだ。
ランは、アレックスより少し年上で、アレックスをよく知っているらしい。
どちらかと言うと姉のような存在で、たまに、ふざけるアレックスをたしなめる。
「十年ぶり、いわくつき惑星への再会ね」
ランが独り言のように言った。
それを聞いたアレックスは眉を潜める。
「いわくつき? オレたちは、宇宙ステーションの整備点検に来ただけじゃないのか?」
ランは、アレックスを見て言った。
「そうよ、そのつもりよ」
再びドアが開く。
「操縦室がミーティングルームとは知らなかったな」
「あらキース、それもいいんじゃない」
あきれながら入ってきたコーディネーターのキースを、ランは軽く受け流した。
「はいはい、皆さん、なんだかこの惑星に興味があるみたいですよ~」
アレックスは、ふざけたように言う。
「美しい惑星だからね。
まあ、僕もそれを見に来たんだけれど」
キースの答えは、即座で無機質だ。
「で、隊長さん、あと二時間で宇宙ステーション・ヴェラムに着くんですけど」
「僕は隊長じゃないよ、アレックス。
保険会社の依頼で、今回の点検整備チームのコーディネートをしているだけだ。
二時間か。
ラン、ヴェラムに着く前に、もう一つチェックしたい所があるのだけれど」
「OK、キース、いつでもどうぞ」
いつも淡々としているキースは、アレックスにあまり取り合わない。
ニキは、この二人は、同じ年のはずなのに性格は両極端だと思っていた。
そして、キースはアレックスと気が合わないのかなと思ったりする。
むしろ、アレックスを疎んじているようだ。
かと言って、嫌っていると言う風でもなさそうで、変な感じだと思う。
「ニキ、ジェイクは?」
突然のキースの質問に、ニキは戸惑う。
自分の考えていることを、見透かされたように思えたからだ。
「さ、さあ・・・まだクォーターかもしれません」
「そう、朝食をすませて準備をするよう言ってくれ。
じゃ、後で。
ラン、行こう」
と言うと、キースはランを連れて操縦室を出て行った。