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図書館のアラタくん

作者: 永進
掲載日:2026/04/23

ネット投稿者の少年×元文芸部の部長(2年生)

「あなたの作品、読ませてね」

「い、嫌だって言ったら?」

「何もしないよ。言い触らさないし、苛めもしない。ただ元文芸部の部長が悲しくなるだけ」


そう、元文芸部部長は微笑んで言ってきた。


入学したばかりなのに『ライトノベル作家を目指している』という秘密が、この女子にはバレていた。




「作品を現実で見せたくない」


家に帰り、自分の部屋に行き、椅子に座る。

ノートを取るが「こっちじゃなかった」と別のノートを取る。

あっちは『ネット投稿用』のノートなのだ。


現実の人に作品を見せるのはいつ以来だろう。


小学生だった頃、地域の図書館で出したことがある。今、そのコーナーはないけど、前は小説や詩を投稿するコーナーがあった。

『アラタ』が筆名、僕の下の名前。


それで、載ったから調子に乗って同級生に自慢したら「創作とか恥ずかしくないの?」て言われたんだけど。


創作は恥ずかしいもの、という世間の印象。

本は恥ずかしくない。なのに、本にしようとするのは恥ずかしい。

正直、訳が分からない。


『小説家になろう』に投稿を僕はしている。

ネットの人たちは、純粋に褒めたりしてくれる。


けど、現実は、そうじゃない。


「正直、見せたくない…」

何て言われるか、考えるだけでおぞましい。

あの元文芸部部長に見せたら、どんな冷たいことを言われるか。


元文芸部部長。

学年は2年生。

2年生になると文芸部部員は彼女だけになり、廃部になった。

「若者の読書離れ、悲しいよ」

とか、なんとか、ちょっとだけ部長だった先輩は言っていた。


見せたくない。

けど、悲しませたくはない。


「のらないけど」




翌日の放課後。


2人きりの文芸室。いや、元文芸室か。


「ふむふむ」

先輩は、真面目に読んでいる。

僕の書いたノート1枚分の短い、本当に短い作品を。


初めて感じる、読まれているときの緊張感。

何を相手は思っているのか、何を相手は、どんな風に言ってくるか。

ネットにはない、現実にしかない緊張感。


「うん。読んだよ」

笑顔で元文芸部部長は口にする。

「面白いよ」

「そ、そうですか。よかった」

「けど」

「けど?」

「うーん。遠慮してるっていうか、本気で書いてないっていうか、何か、違うなぁ」

「そうですか…」

ダメ出しは、やっぱり傷つく。ネットと変わらない。


「だからさ、また読ませてよ、放課後、文芸室で」

「え?」

「期待してるよ、図書館のアラタくん。アラタくんは本当は凄いんだから」

僕の戸惑いを気にしないで、ぴょこん、と椅子から立ち上がると、最後に僕を見て、笑みを深めると、出ていった。


「なんで…図書館のことを…」

知っている人はバカにした友人だけで、その人は別の高校に入ったのに。


1人きりになっても、僕はずっと混乱していた。

本当は凄いって言われて、嬉しくもあった。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

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