輝く雷の翼、トネールルミナスリュミエール
アウシルの指示によって皆が艦橋に集められた。
「ふむ、状況は把握した。では左目と左腕は後ほど買い取るとして、先にセトを潰そうか。これに反対の者は?」
誰も声を上げなかった。何故ならここにいる皆、セトを早急に排除せねばという思いで集い、そしてアウシルを復活をさせたのであり、本人がそう言っているのなら止める理由はなんいんだ。
ただ一つ、問題もある。アウシルは魔力で肉体の欠けた部分を補っている、故にアウシルの魔力が切れたらその瞬間に彼は死ぬし、魔力を使うことそのものが寿命を縮める行為であると言う点だ。
「全員賛成か。さて、ここにおいて一つ提案させて貰う。私に万が一があった場合の後継者を指定させて貰う」
アウシルは僕の背中を押して皆の前に出した。
「アウシル・オシリスが死亡もしくは意思能力を喪失した場合、ラムセスを家宰としてこの小ホルスをファラオとして立てよ。またその時の神名は暁の地平線を征く者とする」
僕がファラオ!?いきなりそんなでこの人たち納得するのか!?
「軽い神輿だ、諸君らも納得するだろう」
周りを見渡す。誰も言葉を発さず、ただ頷いている。それはスビアもそうだった。しかしアイシスだけはそうではない。仏頂面だけれど、耳を絞っている。あれは怒ってる時の耳だ。
「さて諸君。色々決まった所で戦争と行こうか。キプロスのマスドライバーを利用して首都に弾道強襲を行う。諸君、十分に健闘されよ」
各々が持ち場に着く。僕らは特にすることがないのでアペプの船にいた時同様に立ってるだけである。
「お父様、どうしてシュンをファラオになんて付かせるんです?」
アイシスは自分の父親を睨んでる。そんなに僕がファラオになるのが嫌なのか、頼りない、だろうか?
「アイシス、お前とてわかってるだろう。それよりもこれをつけてくれ」
黒い眼鏡?サングラス?そう思った時、バチバチ、小さな電気の音がした。
「主翼にエネルギー回りました!浮上します!」
バチン!
雷の落ちるような音と共に船は浮く。
「主翼エネルギー70、80、90……」
周りの人は耳栓をして黒いガラスの眼鏡をかける。サングラス的なやつだろうか?僕らも先ほど渡されたそれを付けてみる。なんというか本当に暗いな。信じられないくらい暗い。
「この船には欠陥があってな。長時間の飛行が出来ない、それに加えてめちゃくちゃうるさくて眩しいんだ」
バチバチという小さな音が更に大きくなる。まるで雷雲の中を飛んでいるみたいだ。
「100、120……雷の翼、来ます!」
バチーン!
巨大な雷の轟音、そしてそれが連続的に鳴り響く。うるさく、そして眩しい。なんだこれは、無限に降り注ぐ雷じゃないか。
「翼から余剰エネルギーを排出している。雷としてな、だから雷の翼なのだ」
速度を表すメーター、もう時速2000キロになってる。アペプの船よりもずっと速い。
「ほら見えてきたぞ、あれがキプロスマスドライバーだ」
アウシルはそう言ってるけれど、眩しすぎて何も見えない。
「主機停止します。9、8、7、6……」
雷の音は徐々に小さくなる。それと同時に目の前の眩しすぎる視界は晴れていく。
そして見えた、巨大な塔、天を貫くような。マスドライバーである。
「着水します!お立ちの方は手摺りをお掴みになって!」
船の高度はどんどん下がり、そして激しい揺れの後に海の中に沈んだ。
「このまま潜水してマスドライバーに入港する」
海の中、魚も珊瑚もある。でも一番びっくりしたのはこれだ。
「N……AS……A?」
NASA。そう描かれた残骸が海の中に沈んでいる。偶然の一致、だろうか。異世界にNASAがある訳ない。だって現実世界に魔法が無いんだから。
「読めるのか?」
「少しだけ、スビアに教えてもらいましたから」
僕の咄嗟の嘘、スビアの耳が少し動く。あれは、不満だな。もう半年近く一緒に居るから耳の動きだけで何考えてるか代々分かる。
しばらく間海中を進み、やがて中心に到着する。
「横に立ってる……」
重力慣性制御、アペプの船ではそう呼んでいた。ともかく、マスドライバーは垂直であり、従って今船は垂直に立っている。にも関わらず僕らは床に立っているし、船の中でペンを落としたら床に落ちるんだ。
「重力慣性制御以外のエネルギーを主機に回せ。生きてるんだろう?システムは」
「はい、そうしています。ですが一つ問題が、マスドライバーの射出後、おそらく重力慣性制御が切れます。ですから……」
「いや、むしろそれでいい。宇宙空間で地に足ついたままでは趣がないだろう」
マスドライバーのレールの横の灯が付く。それと同時に船の電灯が消えて暗くなる。バチバチと、そう聞こえた。
「遮光眼鏡の装着をお願いします、7、6、5……」
「雷の翼、来ます!」
轟音と稲光。そして見える、空。僕らは今飛んでいる。
「す、すごい……」
アイシスが感嘆を漏らす。それもそのはず、もう雲を越えたんだ。そして空の青がどんどん暗くなっていく。暗く、暗く。青が黒になった時、僕らは見た。瞬かない星空を。
「主機沈黙、重力慣性制御切れます」
重力がどんどん弱くなる。やがて僕の足は床を離れる。そしてそれは皆同じであり、スビアは長いスカートを押さえながら宙に浮かび僕に手を伸ばした。僕もそれを掴もうとする。
歩くために足を動かす、だが重力のない世界を僕は知らない。だから僕は身体の制御を失って天井に頭をぶつけてしまった。
「痛っ……」
頭を抑えながら外を見た。するとそこには青く美しい星があった。あれが世界、僕らの住んでいた、地球。
「あれ?」
違和感。大陸の形がおかしいのだ。




