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婚約破棄したら浮気王子がスライムになりましたが、むしろ理想の婚約者です

作者: 霧原いと
掲載日:2026/03/16



「エレノア・アシュフォード! 貴様との婚約は破棄する!」



 王立学院の卒業記念パーティーで、レオナルト殿下は突然そう宣言した。

 その隣には、聖女リリアーナが立っている。


「はあ、そうですか」


 場違いな暴挙に会場はざわめくが、私はやる気のない返事をかえしただけだった。

 そんな私の姿に苛立ったのか、レオナルト殿下は声を荒げる。


「なんだ、その反応は!! 大体、お前は可愛げがないんだよ。リリアーナを見習え!」


「リリアーナ様を見習う?」


 私はゆったりと首を傾げながら、殿下に縋りついている聖女を見つめた。

 薄い桃色のカールした髪は、何とも可愛らしく儚げな雰囲気を醸し出している。

 

 しかし、その女の実態は、王立学園に通う者であれば皆よく知っていた。


「それは、顔のいい男と見れば誰彼構わず愛想を振りまき、学内でも不純異性交遊を繰り返し、学業は講師を色仕掛けで篭絡して誤魔化す……ということですか?」


「なんてこと言うんだ!! ……って、誰彼構わず愛想を? ええっ!?」


 殿下は抗議するように大声をあげたが、私の言葉に引っかかりを覚えたらしい。

 彼に驚いたように見つめられて、リリアーナも声を荒げた。


「ちょっと! いい加減なこと言わないでよ、この地味女!! モテない女の嫉妬は見苦しいわよ!!」


「身分もわきまえず、そもそも人としての礼儀がなっていない態度も追加ですわね」


 私が表情一つ動かさずに淡々と告げると、リリアーナははしたなく地団太を踏む。


「きいいいーっ! なによ! 公爵令嬢より、聖女の方が偉いのよ。あんた知らないの!? それに私は、殿下の妻になる女――未来の王女なんですから!!」


「……話になりませんわね」


 だんだん相手するのも面倒になってきた。

 私は大きく溜息をつくと、呆れたように殿下と聖女を見つめる。



「では、婚約を破棄いたしましょうか。レオナルト殿下、本当に宜しいのですね?」



 私の返答に、殿下は表情を明るくした。

 経緯はどうであれ、自分の望みが叶ったのが嬉しいのだろう。


「おおっ、ついに観念したか。勿論だ、お前みたいな冷たい女とは、今日でおさらばだ!!」

「やったわ、レオナルト様。これで私たちは結ばれるのね!」


 声を弾ませる眼前の二人に、私は静かに頷いた。


「わかりました。婚約破棄を受け入れますわ」


 私が宣言した瞬間、会場内が大きな光に包まれた。

 そして――、



 ――ぷるるんっ。



 先程まで聖女の傍で意気揚々としていたレオナルト殿下は、青くてツヤツヤした手のひらサイズのスライムへと変化した。


◇ ◇ ◇


 殿下がスライムへと変化した瞬間、卒業記念パーティー会場の空気は凍り付いた。

 あまりにナンセンスな状況に、誰もがこれは夢ではないかと現実逃避した。


 その意識を引き戻したのは、聖女リリアーナのけたたましい悲鳴だ。


「いやああああっ、レオナルト殿下ぁああっ!?」


「ぷるるん」


「ちょっと、人語を忘れたの! 困るわよ! どうすんのよ、私と結婚するんでしょアンタ!!」


「ぷるる……」


 リリアーナの剣幕に、レオナルト殿下――だった小型スライムは、怯えたようにぽよぽと後ずさった。


「一体、どうなってんの!? エレノア、アンタが何かしたんでしょ!!」


 リリアーナに睨みつけられたが、残念ながら私に思い当たる節はない。

 思案気に目を伏せた後、私は彼女へと告げた。

 

「私は何もしておりません。ですが、強いて言えば……」


「ごくり」


「天罰ではないですかね?」


「ふっざけんじゃないわよおおおぉぉ!!」


 再び怒鳴りだすリリアーナに、ついにスライムは逃げ出した。

 ぷるぷる、ぽよぽよ、私の足元へと飛び跳ねてきて、リリアーナから身を隠すように留まった。


「まあ、なかなか可愛いではないですか」


 私はその姿に、思わず少しときめいてしまった。

 元があの馬鹿王子であることは癪だが、このスライムは愛らしい。



 そんな中、周りの人だかりをかき分けて、騒ぎの中心まで背の高い黒ローブ姿の男が辿り着いた。

 王立学園の講師も務める、宮廷魔術師のネイサンだ。


「これはまた、珍しい現象ですねぇ」


「ネイサン先生。一体、殿下に何が起きているんですか?」


「何らかの加護の暴発でしょう。詳しく調べてみないと分かりませんが……。少なくとも、殿下の自我は、スライムとしての本能に置き換わってしまっているようです」


「あらあら、それはそれは」


 私は足元のスライムを、掌の上にすくいあげてから頷いた。



「……以前より、扱いやすいですわね」



 にっこり微笑む私の元に、王子の世話係であるセバスチャンが駆けつけてきた。


「え、エレノア様! なんということを仰るのです!!」


「だって、そうではありませんか。貴方も殿下の身勝手には手を焼いていたでしょう?」


「はっ、はあ、それはそうですが」


「良いですか、皆さん。よくお考えになって?」


 私はセバスチャンだけでなく周囲にもプレゼンするように、事態を見守る貴族や学生たちへ向き直った。



「まず、このスライムちゃんは静かですわ。喧しい声で、ギャーギャー喚きませんの」


 私は皆に向かって、スライムを乗せた掌を高く掲げた。


「ぷるるんっ」


 かつてのレオナルト殿下は、口を開けば自慢話や我儘な要求を騒ぎ立てていた。

 しかし今、スライムは涼やかにぽよぽよと揺蕩っているだけだ。


「た、確かに……」


 私は見逃さなかった。

 いつも王子の世話で心労が重なっていたセバスチャンが、ぽつりと救われたように呟いたことを。



「それに面倒な屁理屈で口答えもしませんわ。あれ、ストレスでしたのよ」


 私は畳みかけるように続けた。


「こちらが何度、王としての振る舞いを説いても、チャランポランな言い訳ばかり!!」


「エレノア様! 相手は王子ですよ、王子!!」


 セバスチャンが慌てたように叫ぶが、私は負けなかった。

 というか、普通に積年のストレスが思い出されて、怒りが収まらなかった。


「王子だからです! 私は陛下より、将来の王を支える者として、殿下を導くように仰せつかっておりましたわ。それなのに、あんのボンクラぁ……!!」


「エレノア様! 落ち着いてください! 駄目な顔してます。外で見せちゃ駄目な顔してます!!」


「あら、ごめんあそばせ?」



 私はこほんと咳払いをする。

 気を取り直すと、もっとも大切なスライム化のメリットを口にした。


「あとは何より、浮気をしないこと。ころっとその辺の女に引っかかるなんて、未来の王失格ですもの」


 私はじとりと聖女リリアーナを見つめた。


「その辺の女って何よ!!」


 抗議するように、ズカズカと大きな足音を立ててリリアーナが近づいてくる。

 その姿に、スライムは飛び上がって震えた。


「ぷる……、ぽよ……、ぷるる……」


 その姿は泣いているようで、哀れを誘う。


「おい、聖女様が、スライム殿下を虐めているぞ」

「あんなに声を張り上げて、怖いですわぁ」


 周囲のひそひそとした会話に、リリアーナは顔をひきつらせた。


「えっ、ちょっと!? 私は、ただ、愛する王子のために――!!」


 リリアーナがスライムを指さす。

 その姿に、スライムは威嚇するように頭の当たりをとげとげさせた。


「ぽよよ!」


 勿論、スライムなので、とげとげに触ってもぷるぷる気持ちがいいだけだ。

 ただし意思表示はこれで、はっきりとなされた。


「嫌われていますわね、リリアーナ様」


 私が呟くと、リリアーナは桃色の長い髪をかきむしった。


「むきいいっ、なんかムカつくううっ!!」



 そんな聖女を放置して、私は他にもスライムの良い所がないか思案する。


「他には……そうですわね。食費が安いですわ!」


 私は魔物学の授業を思い出した。明るい声で、ネイサン先生へ同意を求める。


「スライムの餌は、確かパンくずで良いのでしたわよね、ネイサン先生」


「そうですねぇ。一般的には、パンくずひとかけで一日過ごせます」


 うんうんと頷く先生へ、私はにっこりと笑った。


「ほら!! コスパ最強ですわ!!」


「エレノア様!! 繰り返しますが、王子です。相手は、王子です!!」


 セバスチャンが叫んでいたが、私は気にしないことにした。



「そして最後に何より――」


 私はプレゼンの締めくくりとばかりに、大きな声で宣言する。


「スライムちゃんは可愛いですわ!! 可愛いは正義! いるだけで癒し効果あり! これだけで、元のレオナルト殿下より100倍は国に貢献していますわ!!」


 私の言葉に、会場が一瞬、静まり返った。

 伯爵夫人はぽかんと口を開け、学生たちはお互いに顔を見合わせる。


 そして少しの間をおいて、わあっと拍手が巻き起こった。


「そうだそうだ!」

「確かに!!」


 それは、皆の気持ちが一つになった瞬間だった。



(うすうす、勘付いてはいましたが)


 私は拍手の渦の中で、ぼんやりを天井を仰いだ。


(殿下、どれだけ嫌われていたのかしら……)


 ――まあ、良いか。

 私は深く考えることを止めた。



「さて、これで満場一致で、皆さまの同意が得られましたわね。私はこのスライムちゃんと、国を治めていくことに――」



「待ったあああああっ!!!!」



 まとめに入りかけたのに、しぶとく食らいつきてきたのは聖女リリアーナだ。

 正直、そのガッツだけは素晴らしいと思う。

 元の殿下よりも、よほどやる気に満ちあふれている。


「なんですか。リリアーナ様」


「いやいやいや! 常識的に考えて、スライムと国を治めるなんて無理でしょ!?」


「でも貴女、そのスライムと婚約しようとしてたじゃないですか」


「そ、それはそうだけどぉ! 私は聖女だから良いの!! そもそも、アンタは殿下と婚約破棄して、もう国を治める立場ではないはずでしょ!!」


「まあ……!」


 私はリリアーナのあまりに世間知らずな発言に、口元に手を当てた。


「御存じありませんの? アシュフォード公爵家は、代々、国を堅実に支えてきた実績がありますわ。そして私は幼少の頃より、陛下には特別目をかけて頂いていますの」


「なんですって!? まさか、アンタ、陛下を誑かして――!」


「貴女と一緒にしないでくださいっ! 真摯に学び努力した結果のことです。そもそも、レオナルト殿下が王位を継承する条件の一つが、私と結婚することでしたのよ?」


「え、えええっ!?」


「つまり、婚約破棄した今、レオナルト殿下と結婚しても王女にはなれません」


「嘘でしょ??」


 リリアーナが取り乱しながら周囲へ視線を投げる。

 彼女へ向けられるのは、呆れ、嘲笑、軽蔑の眼差しばかりだ。


 私が陛下と交わした約束は、公式に発表されていたものではない。

 しかし、ある程度の宮廷事情を学んだものであれば、誰もが知っていることだった。


「でも、でもでもっ、公務はどうするのよ! あるでしょ、書類とか、式典とか!」


「元から全部私がやっておりました。何の問題もございません!!」


 私は少しだけ怒りを込めて叫んだ。

 その剣幕に、リリアーナはびくっと肩を跳ねさせた。


「くだらない殿下の邪魔が入らないだけ、むしろ効率は上がるはずです!!」


「ぷる……、ぷる、ぽよ……」


 かつての自分が責められていると感じて、手の上のスライムがしょんぼりしている。

 私はその子を慰めるように、ぽよぽよ頭を撫でた。


「ふふ、良いのです。もう、良いのですよ。貴方とレオナルト殿下は、別物として考えますので――」


「ぽよよっ!」


 私の言葉にスライムちゃんは元気を取り戻し、嬉しそうに飛び跳ねた。



「くっ、許せない。もう少しで王位も手に入ると思ったのに」


 もはや打つ手がないと感じたリリアーナは、最後の暴挙に出た。


「アンタなんか……、アンタなんか――!!!!」


 それは自棄としか言えない行動だった。

 彼女は近くにあるワイングラスを手に取ると、私のドレスにバシャリと浴びせかける。


「きゃあ!?」


 予想外の行動に、私は避けることができなかった。

 薄水色の式典ドレスが、ワインの赤色に醜く染まっていく。


「なんてことするの!」


 私は思わず声をあげた。


 ただドレスが汚れただけであれば、相手の無礼さに憤りは覚えるが、まだ我慢できる。

 しかしこのドレスは、両親が今日のために時間をかけて手配してくれた特別な品だった。


 私は何より、その祝いの気持ちを汚された気持ちになり悲しくなる。


「ふんっ、いい気味よ!!」


「衛兵、何をしているっ。暴れている聖女を捕らえろ!」


「きゃー、何すんのよぉ!!」


 騒がしい喚き声と共にリリアーナが近衛兵に捕まるが、私の気持ちは沈んだままだ。

 暗い表情でドレスの染みを見つめていると、スライムがそっと寄り添ってくれた。 


「ぽよよ……」

 

「まあ、慰めてくれるの? 優しいのね」


「ぷるるっ!」


 スライムは肯定するようにぷよぷよ、ぽよぽよ弾む。

 そして次の瞬間、ペタッとドレスの染みのついた場所へ張り付いた。


「ひゃっ!?」


 突然の行動に私は驚き、飛び上がる。

 その反射で、張り付いていたスライムはペイっとドレスから剥がれて転がった。


「まあ、ごめんなさい! 急にくっついたから、驚いてしまって――えっ!?」


 私は床にぷるるんと転がるスライムを慌てて拾いに行く。

 その最中、異変に気付いた。 



「ドレスの汚れが……、綺麗になってる!?」


「ぽよん!」



 先程までワインで真っ赤に染まっていたドレスが、今は新品のように綺麗になっていた。

 唖然とする私に、スライムは得意げに飛び跳ねる。


「まさか、貴方の能力なの!?」


「ぷるるんっ」


「な、な、なんてお利巧さんなのかしら――!!」


 私はスライムの能力と、私を助けてくれた優しさに感動して、高速でスライムをぽよぽよした。


「ぷるるるるるるるるるるる……」


 スライムは体面を波打たせながら、ご満悦の様子である。



「決めましたわ」


 ふうと大きく息をついて気を取り直すと、私は改めて宣言した。


「私、このスライムちゃんを飼いますわ!!」


「エレノア様、王子です!!」


◇ ◇ ◇


 こうして私は、スライムちゃんとの生活を始めた。


 それから数日経ったある日の昼下がり、私は招かれた王宮の応接室でお茶を頂いていた。


「ぷるるんっ。ぽよよんっ」


 スライムちゃんはテーブルの上の小瓶の中に器用に収まっている。

 これは私が住居として与えたものだ。

 お世話の仕方については、「スライムの育て方大全」の本を参考にしている。


「……何か新しく名前を決めたいですわね。レオナルト殿下とお呼びするのは、人間時代を思い出して嫌ですわ」


 ご機嫌なスライムちゃんの頭を撫でながら、私は考えこむ。

 私の言葉に、向かいに座っている王妃殿下がラフな調子で同調した。


「分かるわ。私も浮気男は嫌いだもの」


「うっ、み、ミランダ。しかし、レオナルトは私たちの可愛い息子で……」


「なにか?」


「……浮気は最低だよな! ははは!」


 王妃殿下の隣に腰かけている国王陛下は、一瞬だけ息子である王子の擁護を試みた。


 しかし、王妃の一睨みであっという間に黙ってしまった。

 国民の前ではいつも威厳のある陛下だが、プライベートでは完全に王妃の尻に敷かれていた。


(それにしても、王妃殿下は妙に浮気について刺々しいわね。過去に何かあったのかしら……)


 私は滝のような汗を流しつつ、必死に王妃の機嫌をとっている陛下を見つめた。


 ーー深く考えるのは、やめておこう。


「そうですわね。新しい名前……、名前……」


 私はスライムちゃんをぷにぷにしながら思案する。

 すると、天啓のように素晴らしい名前を思い付いた。



「決めましたわ。ぷに丸にします!!」



 傍に控えていた従者が吹き出した。

 陛下も顔をひきつらせている。


「え、エレノア嬢。あの、それは、仮にも王子……」


 躊躇いながらも何か言おうとする陛下の声を、王妃殿下が遮った。


「あら! 可愛くて良いじゃない!」


「そうですよね。可愛いですよね!」


「待ってくれ、ミランダ。流石にそれは」


「……良いわよね、ダーリン?」


「最高の名前だと思うよ! ははは!」


 陛下と王妃の承認も無事に得られた。

 私は、にっこりとぷに丸に微笑みかける。


「ふふ。改めて宜しくね、ぷに丸」


「ぷにぷにっ!」


 ぷに丸は瓶から出てきて、私の掌でぽよぽよ跳び跳ねる。


「本当にエレノア嬢に懐いているのね」


「ええ。何だか気に入られてしまったようで」


 応接間は和やかな雰囲気に包まれる。

 私は紅茶を一口頂くと、気にかかっていたことを聞いてみた。


「そういえば、リリアーナ様はどうなりましたの?」


「ああ、聖女ですか。あの子はこれまでの行動の罰として、奉仕活動に勤しんでいるわ」


「リリアーナ様が、奉仕活動……」


 そのあまりに不似合いな並びに、私は思わず呟く。

 王妃殿下がそれに反応し、くすくすと笑った。


「あの子は、ちょっと我儘過ぎたわね。でも、やる気と根性は買っているのよ。聖女としての能力も本物だし……」


 そうして、王妃はふっと笑みを浮かべた。


「大丈夫。エレノア嬢の邪魔にならないように、私が性根を叩き直すわ」


「頼もしいです、王妃殿下!!」


「貴女は私の可愛い義理の娘ですもの」


 私はミランダ王妃殿下の言葉に感激した。

 昔から彼女は強くて聡明で、私の憧れの人だったのだ。

 その想いに報いる為にも、国を立派に治めていこうと誓う。


 そろそろ解散と言う時間になった頃、応接間の扉がノックされた。

 入室してきたのは、ネイサン先生だ。


「ご歓談中、すみません。朗報をお届けに参りました!」


「まあ、ネイサン先生。どうしましたの?」


「実はレオナルト王子の呪いを解く方法が分かったのです」


「ぷに丸が??」


「ぷに丸ってなんですか!?」


 呆気にとられているネイサン先生に返事をするのも忘れて、私はじっとぷに丸を見つめた。



「ぷるるんっ」

「ぷに丸……」



 ぷに丸の頭を撫でると、私は決意と共に顔をあげた。


「戻さなくて結構です!」


「え、ええっ、王子ですよ!?」


「ぷに丸も戻りたくないと言っています!」


「ぷるっ! ぽよっ!」


 ぷに丸は私の言葉を肯定するように、ぽよんと柔らかな胸を張った。


 ネイサン先生は困惑したように、国王陛下と王妃殿下へ視線を向ける。


「えええ……、あの、良いのですか。陛下、殿下」


「いや、流石にそれは駄目だと」


「若い二人の選択を、私たちは尊重するわ!」


「そうだそうだ! 問題ないぞ!」


「……」


 ネイサン先生は二人の反応を確認して、全てを諦めるように天井を仰ぎ見た。

 私は彼に、にっこりと微笑む。



「うふふ。だって、よくお考えになって?」


 私はくすくすと肩を揺らすと、ぷに丸を抱き締めた。


「この子の方が、前よりずっと良い婚約者ですもの!」(終)

ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

少しでも「スカッとした」「ぷに丸可愛い!」と思っていただけたら、とても嬉しいです。


もしよろしければ、作品ページ下部の【☆☆☆☆☆】から評価を入れていただけると励みになります。

ブックマークや感想も大歓迎です。


今後も短編を投稿していく予定なので、宜しくお願いします!

最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました!

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