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お気に入り小説5

婚約者を大事にしなかった屑の美男が婚約破棄されて転落するまで

作者: ユミヨシ
掲載日:2026/02/23

アラウス・マセル伯爵令息は金髪碧眼の凄い美男だ。だから、婚約者であるマリーア・フェレス伯爵令嬢を馬鹿にしていた


マリーアがアラウスに、


「アラウス様。明日、劇を見に行きません?わたくし、新しく始まった劇を見に行きたいのです」


「ああ、いいよ。明日、馬車で迎えに行こう」


「有難うございます。楽しみですわ」


マリーアはまったく美しくない。

茶の髪の地味で冴えない令嬢だ。


美しい自分に惚れているみたいで、フェレス伯爵家から頼まれて結んだ婚約。

仕方が無いから結んでやったんだ。

だから鬱陶しくて仕方なかった。


私位、美しければいくらでも、美しくて上位の女性と結婚出来るだろう。

現在、アラウスもマリーアも17歳。王立学園の生徒だ。

隣国から来ている王女様もアラウスを見ると頬を赤らめてこちらを見る。


マリーアなんて冴えない女を大切にしなくてもいいのではないか?

劇だって?めんどくさい。確か恋愛の劇だろう。すっぽかしてしまおう。


翌日、アラウスは迎えに行かなかった。

屋敷の自分の部屋でのんびりと過ごした。


メイドの一人が色目を使ってくるから、廊下でキスをして淫らに過ごした。

子が出来るような行為まではしないが、キス位いいだろう。


翌日、マリーアが文句を言って来た。


「昨日はずっと待っていたのですわ。連絡位、寄越して下さったらいいのに」


「すまない。ちょっと急用が。忘れていた訳ではない」


「それなら許しますわ。次から連絡だけは寄越して下さいませ」


そう言われてしまった。口うるさい女。

私はこんなに美しいんだぞ。

ほら、王女様がこちらを見ている。


王女様はエレナ。隣国から留学に来ているのだ。


アラウスは近づいて、


「エレナ王女様。私の顔に何かついていますか?」


「いえ、あまりにもお美しいので見惚れておりました」


「なんだったら学園を案内して差し上げましょう。さぁお手を」


エレナ王女は輝く程に美しい。

金の髪が煌めく美女だ。マリーアと大違いだ。


エレナ王女の手を取って、学園を案内してあげたら、とても喜ばれた。


マリーアが見ているが構わない。


マリーアとは仕方なく婚約を結んでやったのだ。

私に惚れているから。マリーアが。

だから仕方なく。


私程の美しい男は少しくらい羽を伸ばしたっていいだろう。


エレナ王女は、


「有難う。学園の中が良く解りましたわ」


「困った事がありましたらいつでも、私におっしゃって下さい。私はアラウス・マセル。マセル伯爵家の長男です」


「まぁアラウス。素敵なお名前。解りました」



マリーアがこちらを見ている。

何だか気持ちよかった。

自分にふさわしいのは、エレナ王女様だ。お前じゃない。


それからもマリーアがどこかへ行こうと誘ってくるたびに、どたキャンした。

馬車で迎えに行くといっては、当日連絡もしないで行かなかった。


そのたびに、マリーアに文句を言われた。

構わない。

自分にふさわしいのはエレナ王女だ。


エレナ王女と親しく食事をする。

お昼に食堂でだ。皆、ひそひそと話しながらこちらを見ている。


羨ましいのだろう。

美しき私がエレナ王女と食事をしているから。



そこへマリーアがやって来た。

そして言ったのだ。


「貴方とは婚約破棄を致します。両親も、貴方の家のマセル伯爵家も承知しているわ」


「何だって?両親から聞いていない」


「マセル伯爵家は渋っていたけれども、慰謝料も払って頂きます。貴方はわたくしに対して婚約者としての交流を怠った。何度も約束を守らなかったわ。それだけでも十分、婚約破棄の理由になるわ」


「君は美しくないし、私にはふさわしくない。私にふさわしいのはエレナ王女様のような方だ」


そうしたらエレナ王女が言ったのだ。


「あら、貴方とはお友達ですわ。わたくし、国に帰りましたら名門公爵家に嫁ぐ事になっておりますの」


「何だって?親しくしてきたではありませんか」


「二人きりで会ったことはありまして?今だって、お付きの二人の侍女と一緒ですわ。ですから、貴方とわたくしは何でもありません」


ショックだった。


ともかく、学園から帰って両親に婚約破棄が成立しているのか確認しないと。

慌てて、学園を早退し、家に帰って確認した。


父であるマセル伯爵は、


「婚約者としてマリーア嬢を大事にしてこなかったのか?」


母も呆れたように、


「約束を何度も破ったって聞いたわ。貴族としてあり得ない行動よ」


アラウスは慌てた。


「だって、マリーアが私に惚れて婚約を申し込んできたのでしょう。私は嫌だったのです。私程の美しい男があんな平凡な女と」


父が怒った。


「平凡な女だからって、婚約者を粗末にして良いはずはない。フェレス伯爵家とは共同事業を進める予定だったんだ。それなのに。その話も無くなった。慰謝料も払う事になった。貴族の令嬢を侮辱したんだからな。お前に伯爵家を継ぐ資格はない。隣国に留学している弟マリウスに家を継がせる事にしよう」


「父上それはっ‥‥‥私が悪かったのです。ですから家を継がせて下さい」


「だったら、マリーア嬢に謝って婚約破棄を撤回して来い。そうしたら家を継がせてやろう」


そう言われて慌てて、マリーアに会いに行った。

しかし、フェレス伯爵家の門前で門番に追い払われた。


「マリーア様はお会いになりません」


「だったら王立学園で会えばいいか‥‥‥」


翌日、王立学園に行っても、マリーアに接触出来なかった。

マリーアに近づこうとしたら他の生徒達に阻まれるのだ。


「マリーア嬢から聞いた。いくら顔がいいからと酷い事をしてきたらしいな」


「貴族として約束を守らないだなんて最低だ」


エレナ王女が近くにいたけれども、知らないふりをされた。


あああっ…私はどうしたらいいんだ。








所変わって、ここは変…辺境騎士団詰所。


ゴルディルは納得いかなかった。


自分のやった事は間違っていたのか???


ヴォルフレッド辺境騎士団の四天王の一人、北の夜の帝王と呼ばれる大男。それがゴルディルの立ち位置だ。

どこの王国にも属していないこの辺境騎士団は、魔物討伐を主に引き受けて生活をしている。160名の騎士団員が所属している騎士団だ。


ゴルディルは古株だ。五年前にこの辺境騎士団に入団した。

魔族に金を払って転移して貰い、国を選ばず、魔物討伐の仕事をギルドで探して引き受けてやっている。


命の危険もあったが、なんとか切り抜けてきた。

そして、この騎士団。とある事件があってから、屑の美男をさらって教育するという特殊な任務を遂行することになったのだ。

そう、彼らの中では任務である。


勿論、任務にかかる金は有志による騎士団員達の積み立てから支払われる。

さらってきた屑の美男を愛好する男達だからこそ、積み立てがなりたっているのだ。



ギルドで年端もいかない少女が、自分の宝物を差し出そうとして、屑の美男ではなく、豚のような醜い男をどうにかして欲しいと困っていた。

その男によって姉が、自分の家の伯爵家が苦しんでいる。だから助けて欲しいと。

幼い子がだぞ。

それを引き受けることを他の四天王、三人が嫌がった。


馬車を調達する金はどうする?皆、持ち出しになってしまうのだ。

赤字になってしまう。

自分達の給料で調達するしかないのだ。


だが、ゴルディルは少女が困っているのを見ていられなかった。

だから引き受けた。

屑の豚をさらって、鉱山へ放り込んだのだ。

その馬車代は全てゴルディルが支払う事になった。


懐が痛い。


それによって得した伯爵家から謝礼の一つも渡されなかった。

礼を求めて豚をさらったわけではない。


でもでもだって。そんな事は言いたくない。

ただただ懐がサビシイ。


ゴルディルは大男だ。飯も酒も沢山食べる。


詰所で悩んでいたら、四天王の金髪美男のアラフが街へ連れ出してくれた。


酒場で酒をおごって話を聞いてくれた。


「お前が正義を貫きたい気持ちは解る。解るが、こんな事を繰り返していたら、お前が苦しむだけだ。世間は冷たい。良い事をしたって、金が降って来るとは限らない。そうだろ?」


酒を飲みながら、ゴルディルはうううむと唸る。


「しかしだな。このままあの時、少女が苦しんでいるのを見ていられなかった。俺は一生後悔しただろう」


「でも、それを繰り返したら?俺達は生きていかなければならないんだ」


「だが、それでも、俺は‥‥‥」


「もっと困っている人たちがお前を頼ってきたら?金にもならないのにお前を頼ってきたらどうする?」


「そりゃ、助ける」


「それによってお前が困窮することになったら?」


「それでも俺は‥‥‥」


「もう酒はおごらねぇぞ。俺は共倒れは嫌だ。俺は自分が生きていくのが精いっぱいなんだ。他の二人もそうだ。自分たちの生活で手いっぱいだ」


四天王の仲間、マルクとエダルが合流した。

マルクは魔手のマルクと呼ばれ、触手を持っている。

エダルは普通の冴えない青年だ。


マルクは触手をウネウネさせながら、


「正義ねぇ。俺はごめんだな」


エダルも頷いて、


「俺もごめんだ。金にならねぇ事はやらない」


アラフはにんまり笑って、


「でも、屑の美男は皆が喜ぶ。金も積み立てから出るしな」


ゴルディルは立ち上がって、


「納得いかねぇ。俺は苦しむ人達を助けたい。ただただ助けたいんだっーーー。助ける為にはもっと強くなる。稼げる男になる」


三人は微妙な顔をした。


特に皆、強い訳ではない。冒険者で凄腕とかそういうのはざらにいるが、別に彼らは凄く強いわけではないのだ。


ただただ、魔物討伐はするけれども、それは集団で成し遂げる仕事であって、突出して凄い奴がいる訳でもない。例外で強い奴は少数いるが、残念ながら四天王は突出して強い訳ではないのだ。


アラフがそれでも、ゴルディルの肩を叩いて、


「まぁ頑張れよ。無理しない程度にな」


「ありがとよ。アラフ」


そこへ、情報部のオルディウスが現れた。


「屑の美男情報だ。とある伯爵家の依頼だ。貴族としてやっていけないであろう息子を引き取って欲しいと」


アラフが三人に向かって、


「欲を満たす仕事だ。皆、行くぞ」








アラウスは気が付いたら、馬車の中にいた。

周りはガタイの良い男達に両脇を固められていて。


「私はどうなるんだ?」


アラフがにこやかに、


「ヴォルフレッド辺境騎士団へようこそ。屑の美男教育を徹底的に受ける事になる」


ゴルディルが肩を叩いて、


「死ぬよりはいいだろう?お前は家から見捨てられた。貴族としてあり得ないとな」


アラウスは絶望した。









変…辺境騎士団の詰所に、一人の女性が訪ねてきた。


「わたくし、マリーア・フェレスと申します。この間、皆さんがさらっていったアラウス・マセルの元婚約者ですわ」


ゴルディルが珍しく応対した。


「ああ、あの屑の美男の。取り返しに来たのか?わざわざ、こんな遠くまで。金もかかっただろう」


「いえ。婚約破棄をした身ですから」


「じゃぁ何故、ここへ?」


「わたくしは美しくないでしょうか?」


「え?」


「もし、わたくしがエレナ王女様みたいに美しかったら、アラウス様に大事にされていたのでしょうか?」


マリーアは涙を流して、


「わたくしだってアラウス様に大事にされたかった。アラウス様の婚約者になれて嬉しかった。アラウス様の事を初めて見た時から好きだったから。わたくしが美しかったら、わたくしがわたくしがわたくしが‥‥‥」


ゴルディルは飲み物を差し出して、


「そんな事ねぇと思う。いくらお嬢さんが美しくてもああいう男はいずれ、浮気をしてお嬢さんを泣かせていたのではないか?自分を責めない方がいい。どうか、マリーア嬢。新しい幸せを。屑ではなくて、まともな男は必ずいるはずだからな」


「有難うございます。アラウス様はしっかりやっていますの?」


窓の外を見れば、ピヨピヨ精霊の着ぐるみを来た人たちが、ふらふらしながら、出かけていく。


ゴルディルは指さして、


「あの中にいるはずだ。しっかりと教会で奉仕活動をしている」


「そう‥‥‥アラウス様をよろしくお願いします」


「叫んでやれよ。思いのたけを」


「アラウス様に叫びたくはありません。終わった事ですから。でも、わたくし、わたくしを大事にしなかった貴方なんて、地獄に落ちればいいわっーーー」


マリーアはわぁわぁ泣いた。

ゴルディルはおろおろしてハンカチっぽい布を差し出すのであった。





アラウスは皆と一緒に、ピヨピヨ精霊の着ぐるみを着ながらよろよろと教会へ出かけていく。


何が悪かったんだ?自分は何が?

今、マリーアの声が聞こえたような気がする。

でも、とりあえず、着ぐるみが重い。

重くて転びそうだ。


今日も、ふらふらと屑の美男達が教会へ向かっていく。

教会では子供達に蹴とばされて転がされる日々。


辺境では、屑の美男達の悲鳴が朝晩、響き渡るのであった。


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ゴルディルさん…(´;ω;`)ストリキッズとかお使いにして一方通行の贈り物()したげて伯爵様。非接触で若しくは指定の場所に忘れ物()とかああ!
え? ジュリアちゃんが辺境騎士団に頼んだのを知っているはずなのに、テレス伯爵家は何も謝礼を出さなかったんですか? うわぁ……ゴルディルさん( T_T) ゴルディルさんは、辺境騎士団に入る前からお人よ…
屑美男以外では無い袖は振れない辺境騎士団……なかなかに世知辛い。 でも逆に、美男じゃない屑を引き取ってもらいたかったら相応の引き取り賃を払うことにすればいける……?さながら粗大ゴミ処理券を貼り付けるが…
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