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GatherED me  作者: やきとり
第一章 見知らぬモノ
2/2

故人

最初に感じたのは、衝撃だった。


次に、音。


骨が軋むような、

岩が割れるような、そんな音。


「……」


聞こえる。


呼吸音。

心音。


ーーー生きている音。


暗闇の中で、意識だけが浮かび上がってくる。


重い。


体が、異様に重い。


ゆっくりと、瞼を開いた。


視界に入ったのは、切り立った岩肌と、砂と、積み重なる無数の"不要物"。


魔獣の死骸。

砕けた装備。

血の乾いた痕。


(……ここは)


言葉にしようとして、何も出てこない。


喉が震えるだけで、声にならない。


――思い出せない。


自分が誰なのか。


なぜここにいるのか。


未知に押し潰されながらも、不思議と恐怖はなかった。


ただ、ここにいてはいけない。


その感覚だけが、頭の奥から響いて来る。


軋んだ体を起こすと、痛みが遅れてやってきた。


それでも、立てた。


(……動く)


指も、脚も、思った通りに動く。


一歩、踏み出した瞬間。


ーーべちゃ

ーーべちゃ


周囲に湿った音が反響する。


後ろを振り返ると、()()


低く、濁った、無機質な唸り声。


爬虫類の下半身。

昆虫の上半身。


それらが継ぎ接ぎされた様な異形。


過度に恵みが増幅した事により、獣が変異した異常存在、

魔獣。


体の半分が潰れ、それでも動いている。


赤く濁った目が、まっすぐこちらを捉える。


「……」


直ぐにでも逃げ出すーーー


はずだった。


咄嗟に、足が止まった。


恐怖で足がすくんだのか


それともーーー


魔獣が、吠える。


次の瞬間、巨体が突進してきた。


気付いた頃には、視界が反転していた。


体が、岩に叩きつけられる。


「……っ」


熱と痛みが、体中を駆け巡る。


視界が、滲み、揺れる。


(……死ぬ?)


その問に答えたのは、崩れ落ちた体だけだった。


「どう…して?…」


そんな疑問が自然と口から零れ落ちる。


最後に目に映ったのは、上から見下ろす人影だった。



♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢



ぱち、と火が爆ぜる音で目が覚めた。


周りを見渡してみると、夜の闇に紛れて、谷の輪郭が見える。


体を起こそうとするーーーが動かない。


全身に鈍い痛みが響く。


「…っは…」


体が熱い。


息も絶え絶えになる。




「あっ…動かない方がいいですよ、かなり酷い怪我ですからね」


声が聞こえた方を見てみると、焚き火を挟んだ所に人がいた。


黒い髪。

青い目。


そして頭部には、尖った獣の耳。


ピクリと動いていることからして、偽物ではなさそうだ。


(魔人…)


「一応、応急処置はしてありますが、無理するとまずいですよ」


視線を落とすと、身体に掛けられた布の下には、確かに処置した跡があった。


ーーー助けてくれた?


わざわざあんな場所に行ってまで?



「…あなた…は誰?…なぜ…私を助…けた?」


途切れ途切れながらも言葉を出す。


獣の耳がピンと張った。


「えと、名前はエルスで、見てわかる通り魔人です。立場は…うーん…」


少し考えて、首を傾げる。


「まぁ、通りすがりの旅人…みたいなのでしょか…」


(…旅人?)


身なりは整っている。


たが、それ以上にーーー


「"なぜ助けたか"でしたっけ。」


エルスは焚き火を見つめながら言った。



「困ってたら助ける。当たり前の事ですよ。…"谷"にいたなら尚更」


……不自然。


善意にしては、迷いが無い。


だが、悪意は感じない。


「そういや…まだ何も言ってなか…たね。」


「…?」


少し、間を置いて。


「お礼、だよ。ありがとう。助けてくれ…て」


エルスは目を見開いた。




数秒の沈黙。




エルスが、沈黙を破る。


「当然ですよ、ヘスティア様」


真っ直ぐ過ぎる視線が、返って異様に感じた。








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