はじまり承前
葵は重い鉄扉を蹴破り、内部へと飛び込んだ。地下倉庫は湿ったコンクリートの臭気が立ちこめ、違法な龍理を取引していたであろう五人の男たちが、散乱したコンテナの影から一斉に銃を構えた。
「Wのガキが、舐めやがって!」
轟く銃声。しかし、葵にはスローモーションに等しい。彼は天魔夜光剣の蒼いオーラを全身に波及させ、龍理の防壁で弾丸の軌道を僅かに逸らした。一歩目、彼は地面を蹴り、残像を残して敵集団の懐へ。
一瞬の静寂の後、金属音と鈍い打撃音が連続した。
龍理を乗せた刀剣は、防御と攻撃を兼ねた完璧な軌道を描く。一人目は脇腹に柄を打ち込まれ呻きを上げる間もなく倒れ、二人目と三人目は、刃を鞘に収めた状態で放たれた衝撃波に吹き飛ばされた。残る二人も、葵の冷たい眼差しと、喉元に突きつけられた冷たい切っ先に、戦意を一瞬で喪失し、意識を刈り取られた。わずか五秒の出来事だ。
「雑魚どもを片付けるのは、早くて助かる」
葵が息を整え、任務完了を確信したその時、奥の暗がりから嘲笑が響いた。
「まさか、たった一人の餓鬼がここまで来るとはな」
巨大な影が、龍理の炎で照らされたコンテナの隙間から姿を現す。組織のボスらしき巨漢が、葵を睥睨していた。
「だが、お前の役目はここで終わりだ」
男が右手の分厚いグローブに嵌められた黒曜石のリングに触れる。それは葵のリストガードと同じ、宝貝の精神的なスイッチだった。禍々しい紅の光が噴出し、地下室の壁に巨大な影を走らせる。
「出でよ、我が宝貝――邪神獄炎棍!」




