W世代
裏路地を飛び出し、大通りへと駆け出した日向葵と速水徳彦の眼前には、異様な光景が広がっていた。何重にも張り巡らされた規制線の内側で、重装備に身を包んだ警官隊が混乱した様子で指示を出し合っている。
『ちっ、動きが鈍すぎるだろ、ノリ!』
葵が舌打ちしながら見ると、規制線に立っているのは、年季の入った制服警官ばかりだ。彼らの多くは五〇代以上に見え、重い防護服の中で汗を滲ませ、支給されたばかりのデータパッドの操作に戸惑っている。
徳彦は走りながら、冷静な解析結果を提示した。
『当然だ。彼らはW世代以前の警察官。龍理テロに対する訓練や情報処理能力は、我々とは比較にならない。彼らの任務は、単なる警戒線の維持に過ぎない』
まさにその時、ひとりの年老いた警官が、ふたりの子どもが警戒線を突破しようとしているのを見て、声を荒げた。
『こら、そこのガキども! 止まれ! 危険区域だ!』
葵は振り返りもせず、ポケットから出したけん玉の玉を指で弾きながら叫んだ。
『うるせぇ! 龍理が分からねぇオッサンは引っ込んでろ! 炎龍は単なる爆発じゃねぇ!』
彼らの迅速かつ合理的な動きと、状況への的確な適応力は、旧世代の警官たちには理解不能な「熱量」だった。徳彦は既に、夜野焔が東京タワーの心臓部ではなく、熱が最も集中し、視覚的な効果が最大化される「頂上部」を狙っていると予測を立てていた。
『夜野の動線は、既にタワーのエレベーターシャフトに収束している。我々は最短ルートで頂上へ向かう。遅れるな』
ふたりは、一般警官の隙間をすり抜け、まるで厳重な警備をあざ笑うかのように、巨大な東京タワーの鉄骨の足元へと潜り込んでいった。決戦の場は、あの夕焼け空に突き刺さる、朱色の鋼の塔だ。W世代




