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59. ホラーもパニック映画も無理


 ゾンビ映画だ。


 星鯨の話を聞きながら黒いヘドロを身に纏い腐りながら動く人々を想像し、それがどうしても映画でみる終末世界過ぎて、この平和な時代に転移できたことを神に感謝した。



 「瘴獣により滅んだ国があったとは聞いておりましたが、人が原因だったのですね……。それで、ユリアナはもう大丈夫なのでしょうか?」


 『ふむ。我らが連れて行かんということは大丈夫なのじゃよ。初期はまだ本人の魔素が染まらんように戦っておるんじゃ。聖水で保っておったんじゃろうの。染まっておったら首輪を持った時点で手がなくなっておる。』



 しれっと恐ろしいことをほのぼのと語られ、自分の手の中でユリアナさんの手が消えるようなことが起きなかったことにまた神に感謝した。



 「安心いたしました。それで、アルナイル様がしなければならないこととはどのようなことでしょうか?」



 辺境伯を呼ぶ際の星鯨の話から、アルバートさんが今後の話を促す。



 『そうじゃった。呪詛に関するものは処分したはずなんじゃが、こんな年月が経ってから現れるとは不思議でなあ。あの者の家など処分せなならんから話しておかんとな。』


 「あの者の邸宅は包囲し一人も出さないようにしております。赴く際は私めもお連れしてほしくあります。」



 いつの間に手配していたのかアルバートさんの有能さが窺える。先にユリアナさんの部屋で原因をチェックをし、そのあと侍女の家宅捜査へ赴くことになった。



 「まゆ様、この様なことがあってからで申し訳ないのですが、お伝えしたいことがあります。」



 何かあったのかとびくつきながら話を聞くと、先ほどユリアナさんが転けた場所は家の安全範囲の百メートルの位置らしい。ちょうど今朝紹介予定だった騎士がそこから先へ通れなかったらしく、まだ理由もわからないので煩わせることもないと黙っていたことを謝られた。その騎士は連行された侍女と縁戚だったらしく、今回の関係者ではないかと捜査するようだ。





 「……まゆ様、この度は本当に申し訳ありません。言い訳になりますが、産後ずっと気持ちが乱れクレアの言葉がずっと頭の中を占めておりました。」



 声に力がないながらも、生気を感じる目をしっかりと合わせ謝ってくれる姿に、本来の性格などは知らないが、素にもどったのだと感じた。


 部屋のチェックが終わるまでは、心身の影響も考えユリアナさんはガゼボで休むよう言われ、それに付き添い二人話を交わす。



 「大丈夫です。私はなにもされてませんよ。産後だったんですか?こちらであるか分かりませんが、私がいたところでは心身衰弱しやすく産後鬱っていう病気があったんです。気持ちが落ち着かないのはしょうがないですよ。」

 

 「そのような病気が……お気遣いありがとうございます。ああ、こちらも、本当にありがとうございました。こちらをお渡しくださってから頭がすっきりいたしました。本当に助かりました。」



 涙ぐみながら握らせていたネックレスを差し出されるが、呪詛がなくなっても疲労が濃い顔からそのまま持っていてもらうよう伝える。



 「真ん中の石は白龍の鱗なんです。精神安定にいいそうなのでそのままお持ちください。私が簡単に作ったものなので、普段身に付けやすい物へ作り直してください。」



 希少な物は頂けないと頑なだったが、まだ生まれたばかりのお子さんがいるのだから、少しでも早く元気になってほしいと伝え、なんとか受け取ってもらえた。


 疲れが見えるので休んでいてもらおうと思ったが、聖獣達が戻ってくるまで静かだと寝てしまいそうで嫌らしく、体調を見ながらゆっくりといろいろな話をした。夫婦の馴れ初めやお子さんの話で目が輝く様に安堵し、侍女が吹き込んだ魔女はアルバートさんの後妻になるつもりだという荒唐無稽な言葉に笑いとばし、短いが楽しい時間を過ごした。




 「ユリアナ!もう大丈夫だよ。あとのことはこちらで手に負えることだけだから部屋でゆっくり休もう。」


 

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