Y-26 異世界面談
本日より三話ずつの投稿となります。
「おいちゃん、おあよー。」
「おはよー!まこっちゃん、早いな!」
「ダニー、リックおはよう。実はまだ寝てないんだよ。今から少し寝るわ。隣で遊んでてくれ。きちんと歯みがけよー。」
眠すぎると大あくびをしていたら、子供たちが起きてきた。伝言を残し硬いベッドにもそもそと入り込む。
パジャマから着替えているリックの、穴が綺麗だ!という喜びの声が聞こえニヤケながら眠りに落ちた。
列車の振動の音と、隣の車両から漏れ聞こえる子供たちの笑い声を遠くに感じながら、気持ちのいい眠りから目が覚めた。まだ頭は重く感じるが腹も減ったので大きく伸びをしながら起きる。
「おはよう。きちんと朝飯食べたか?」
「おはよー!まこっちゃん!」
「まこっちゃん!まこっちゃん!ズボンのあな!すげー!ありがとー!」
「まこっちゃんありがとう。」
ジョンとリックが騒がしく感謝を叫び、キャロとロンは近くに来て可愛らしくお礼を伝えてくれた。
「山田さん、おはようございます。ちょうどお昼ご飯だそうですよ。」
徹夜で朝抜きのせいで血糖値がやばそうだ。自覚すると腹の虫が鳴り続けている。
「おっちゃん、はらの音すごいな。はは。」
アレックスの笑い声にふと、日数を経たからか列車で興奮しているのか、子供たちはどんどん素がでてるような、喜怒哀楽がはっきりしてきたように感じる。西部に着いてから子供たちがどうしたいのかなどきちんと話していなかったので、昨夜も考えた通り午後は一人一人と時間を作ろう。
「昨日、尻の穴で気づいたんだ。俺に言いたくても言えないことあるんじゃないかって。だから一人一人のこと知りたいんだ。誰かと一緒でもいいし一対一でもいいから話さないか?」
「なにはなすんだー?」
「好きなことでもいいし、この旅のこととかこれからのこととか家族のことでもいいし、なんでもいいよ。」
「それじゃ、わたしはなしに行くわ!」
キャロが率先して一番を買って出てくれ、寝台車のほうで二人話しをした。
「わたし、村に帰りたいの。でもみんなとおわかれもさみしい。」
列車に乗って旅が早く終わりそうとなって、お別れが近づくことに寂しさがでたそうだ。この旅が終わってもこれで最後にならないよう、何かしら繋がりを作ろうと話す。あとは、村での生活や家族の話を聞いた。自分の尻尾の穴を開けるとき、初めて村のお姉さんのように刺繍がうまければ綺麗にできたのにと後悔したので、裁縫を覚えたいそうだ。
「俺も下手なんだが基本は教えられるから、あとで一緒にやってみようか。」
「まこっちゃん、ありがとう!」
次は、ミミとリリのかしましコンビだ。
「わたしシスターにあいたい。」
「あたしも。」
早く孤児院に戻りたいこと、ぬいぐるみで遊ぶのが好きなこと、また海老が食べたいことなど話した。孤児院に戻ったら懐いているキャロやリック達とはお別れなのだが、幼いからかまだ気づいていなそうだ。キャロと話した繋がりを作る方法はまだないので、悲しませる必要ないと黙っていた。
アレックスが付き添い次はサンの番のようだ。ダニーとロンは昼寝中とのこと。
「おいちゃん、ぼく、あのね……こじいんいやだ。おいちゃんといたい。」
アレックスをちらちら見ながらも、勇気を振り絞って自分の気持ちを語ってくれた。サンは孤児院長が代わってから入ったそうで、孤児院の印象がよくないらしい。昨夜ちくちく縫いながら考えていたことの一つだ。もし自分と離れたくないと言ってくれるのなら、しっかりと面倒を見ようと。世の中の不条理など経験することは人生において必要かもしれないが、目の前の小さな子供たちが十分理不尽な目にあっているのにこれ以上我慢をすることはないだろうと。
「うん。いいぞ!一緒にいるなら、うちの子になっちゃうか?」
「え!!!いいの?……とうちゃんになってくれるの?」
「おう。かあちゃんはいないけどな!」
泣き出したサンを抱き上げながら冗談を言って笑かそうとするが失敗した。サンはそもそも父がいなく母一人で育てられ、その母も帰ってこなくなり近所の人に孤児院へ連れられたそうだ。慌てすぎていつか素敵なかあちゃんができるはずだと謎の弁明をするが、激しく泣き出してしまったサンにおろおろとしてしまう。するとアレックスが嬉しいのもあって泣いているんだと通訳してくれた。こくこくと頭を振るサンにほっとした。
「おっさんは、ダメだなあ。」




