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51. 職人の道は遠い


 「はい、アルフォンス君のも鱗少し付けてみたんだ。お守りだと思って使ってね。」


 「ありがとうございます。あの、まゆ様から頂いたアイテムバックに入っていました鱗なのですが、まゆ様のほうで使ってもらえないでしょうか?」


 他の海鮮はまだなんとか売ったり食べたりと消費できるが、さすがに白龍の鱗は売ることができず、加工する伝手もないので持っているだけで心労があるらしい。ブレスレッドであれば、小さいので誰にも気づかれず安心して使えるようだ。


 「そっか。じゃあ預かっておこうかな。欲しくなったら言ってね。」


 こちらの気持ちの押し付けで、肝心な相手にしんどい思いはさせたくないので、ここは引き下がった。鱗の加工の目途が立てば、大量のビーズを世にばら撒いて、所持していることがバレても目立たないようにしてあげようと目論む。





 午前の移動は、後部座席は子供達とダリアさんのメンバーだ。


 「本当に揺れが全然ありませんね。」


 「やっぱり馬車とかはお尻痛くなります?」


 「馬車はかなり辛いですね。魔導列車はとても乗り心地よかったですよ。」


 王国でも列車の配備は進んでおり、あと数年で開通するそうだ。ただ、セントローレンス領には通ってないので、魔導馬車など新しい技術への投資が盛んらしい。


 「そうだ、今日のお昼にレグルス様達とお寿司食べるんですが一緒にどうですか?」


 「すみません。お言葉は嬉しいのですが、さすがに聖獣様とご相伴など喉を通らなくなってしまいます。」


 声のトーンに遠慮ではなく、しっかり目に拒否を感じたので無理強いはやめておいた。アルフォンス君も他の騎士の目があるので側で控えるだけにしたいとのことで、食事は三人だけで淋しくなりそうだ。次の休憩で騎士団長や辺境伯夫妻にも声を掛けようかと思案する。




 「お言葉に甘えてご相伴に預からせていただきたく思います。」



 辺境伯夫妻もダリアさんと同じ理由で断りが入ったが、騎士団長はご一緒してくれることになった。お昼休憩になり、タープを張ってテーブルなどのセッティングをする。たまに記念日などで奮発して食べに行くお高めのお寿司屋さんのランチセットを人数分購入し、よく食べる聖獣組に足りないだろうと年末に桶で頼んでいた注文履歴から二桶分も並べた。アルフォンス君が騎士団長を呼びに行っている間に聖獣組は転移してきていた。


 「今日は、レグルス様ご希望のお寿司です。フォークでは難しいので、手でそのまま食べていただいて大丈夫です。こちらおしぼりをお使いください。こちらの桶は味がついていないので、この醤油をつけてお召し上がりください。」


 「……生魚……です、か?」


 「あ、伝えてませんでした?すみません、苦手な物ありますか?」


 アルフォンス君が初めて生魚を食べるときも忌避していたのをすっかり忘れていた。しかし聖獣組がばくばくと食べているのを見てか、騎士団長も勇気を振り絞るかのように、焼き目のあるものに手を伸ばす。


 「あ、そちらは、のどぐろの炙りですね。脂ののった白身魚で高級魚なんですよ。地元でよく捕れるんです。もう醤油はついているのでそのままで美味しいですよ。」


 「……うまい。」


 添え物として茶碗蒸しとあら汁を用意している。秋の冷たい空気に熱々の味噌汁が沁みる。そこからは、説明を入れながらも皆の手は止まらず、桶も綺麗に完食した。


 『ふむ。あやつの握る寿司も美味かったが、こちらにない魚も美味である。』


 「お口にあってよかったです。」


 『ダイヤモンドフィッシュの寿司も久々食べたいのう。』


 『そうだな。まゆよ、お主握れるようになれ。』


 「えー!!!できるかなぁ。……一応頑張ってみます。」


 聖獣組の無茶ぶりに、手が温かいタイプなので確実に向いていないのだが、お世話になっている以上意欲は見せておく。





 午後の移動では、後部座席は昨日同様全て埋め、子供達はお昼寝スタイルだ。アルフォンス君は騎士たちの馬車へ同乗し、助手席のダリアさんと所々ボリュームに気をつけながら女子トークで盛り上がった。

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