Y-24 異世界列車
今日は魔導列車に乗る日だ。その前に錬金術ギルドへオリバーと二人街を歩く。
「大きな街には必ずギルドがあるんですよ。」
魔道具は幅広く普及しており、ギルドではその相談も対応していて、皇都のギルドでは授業もあるそうだ。ほとんどは師弟制度の技術継承が主で、職人に近い業種なのだが、鑑定の儀で素質がないと言われても学ぶことで身に付けられる技術らしく、学力ある子供の一番人気の職業らしい。
「魔導ランプだけでも食べていけますが、アイテムバッグなんて作れようものなら豪邸に住めるんです。夢がありますよねー。」
いつもchatGPTのように何でも答えてくれる頼りになるオリバーも、昔は錬金術師を目指していたそうだ。村でも一番賢く推薦をもらい街の学校へ通ったが、経済や商売へ興味が移り、卒業した今は三十までには大きな店舗を持つのが夢だと熱く語っていた。
「商業ギルドに似てるな。」
「同じだと迷わなくても済むので効率もいいですよー。」
入ってすぐは総合カウンターで、相談ごとに別途カウンターがあり、待合場所には掲示板が並ぶ。隅に売店のように小さな店があったので、そちらで道具が買えそうだ。ただ先に陣の作成方法の情報か、無理ならばランプの陣を購入したいので、売買のカウンターの案内に従い個室へ向かう。
「ご希望の品はこちらです。内容や金額にお間違いないかご確認ください。」
カウンターで伝えていた物が表紙付きの冊子で置かれ、明細が別途紙に書きだされていた。ランプの陣はそれなりの金額で驚く。目の前で中身を確認後料金を渡し、サインをしたら売買完了だ。
「ありがとうございました。」
商業ギルドよりかなり義務的なやり取りのあと、売店へ向かう。
「思ったより簡単みたいだな。」
ぱらぱらっと冊子を読むと、極論魔石を混ぜ込んだインクで魔導言語を陣の要所に書き込めさえすれば、なんでも魔道具になるみたいだ。書き込む先の素材の頑丈さが陣の耐久力に比例すようで、ランプなどの商品は大体金属を彫り込みそこへインクを入れこんでいるようだ。
「夜にでも一度このインクで書いてみるか。」
「すげー!!!」「これにのるのか。」
「ひゃー!ちゅごい!」
騎士の案内でオリバーの荷馬車と迎えの馬車に乗り合わせ駅舎へ向かうと、大きな列車が出迎えてくれた。
一番小さなダニーですら血が騒ぐのか、男子は皆口を開けては驚嘆の言葉が溢れている。
「これ……形がSLだ。何を燃やしてるんだ?」
「知っていらっしゃるんですか?さすがに詳細は公開されてませんが、複数の陣をとても複雑に組んでいるそうですよ。燃料は水だそうです。」
「へー。ハイテクだ。陣を見てみたいな。……線路もまんま線路だし、これは盗まれたりしないのですか?」
「陣に関しては、上層部に確認致しますね。線路は血脈のように繋がっており、どこか欠けたらすぐわかるそうです。警備も別部隊で組まれておりますので迅速な対応が可能です。」
ここまで案内してくれた騎士が、ガイドのように付き添い独り言にも補足説明をしてくれた。このまま辺境伯領までサポートとして同行するそうだ。この騎士は、トマス・ヴァンターという二十歳前後の爽やかな好青年で、地球では見ない緑の髪をしていた。街中では色とりどりな頭髪を見たが、子供たちもオリバー達も茶髪や金髪だったので、近くで色彩に富む髪を見るのは初めてだ。ただこの世界の髪色は、アニメやコスプレで見るような鮮やかな発色ではなく、彼の緑も深い森のような渋さがあり、目に優しく不思議と違和感がない。
トマスは会話中も早く入らないのかと腕を引っ張ってくる子供たちを見て、人のよさそうなタレ目を優しく細めながら案内を再開してくれた。
「では、待ちきれない方もいらっしゃるようなので、客車へご案内いたします。」
「ひろーい!」「すげーすげー!!!」
「まこっちゃんおれここでねる!」
客車は最後尾に三つ用意されており、二つの寝台車に軽食が取れるテーブルや寛げるソファが並ぶ居間としての客車が挟まれていた。新幹線よりも長さはないが幅があるので、あまり窮屈感はない。
「こんな客車まるまる用意してくれたんですね。」
「要人用の客車です。お連れ様も多いのでお寛ぎいただけるよう広めのものをご用意いたしました。ご不便もあると思いますが、何かありましたら前の車両に控えていますので申し伝えください。」




