Y-2 異世界探索
山田視点
見知らぬアプリを確認したらチートだった。
「テンプレ様、神様ありがとうごさいます。」
自然と膝をついて感謝していた。
家も出せるようだが、マンションの一室はどのように出るのだろうか?まあどんな形でも、この気候での野宿は無事に過ごせる気がしなかったので有難い。
一度自宅を出してみた。
「豆腐ハウス……。ぷっ。」
屋根が平らで同じ階の他の部屋全てない状態だが壁はしっかりしている。結構自宅だけを切り取ってみると大きく感じるが、真四角でなんか可愛らしい。中に入り水回りや設備を確認する。
「全部使える……。有難いな。」
腹が減ったのでカップラーメンを食べることにした。
「……うめー。スープが染みるわー。」
「着替えたら岩場を少し探索してみるか。」
クローゼットの中から丈夫な服装を考え、バイクに乗る際の格好を選んだ。あとは、異世界の定番、魔物がいるかもしれない。武器を持つべきかと考えたが、武道はからっきしなのでなにも使える気がしなかった。
とりあえずは使いやすそうな斧と鉈とで悩み、なんとなく威力のありそうな斧を持つ。外にでて、家を収納する。海辺へ近づいてみようと丘をくだり始めた。
もうそろそろ岩場だなと思ったその時、
「ギャギャッ!!」
「ひっっっ!」
大型犬サイズの爬虫類がいた。尻尾が平べったく背から先まで棘の並ぶ異様な生物だ。色は青黒くてかり、ぬめりとなにか藻のようなものがへばりついている。これが魔物か!と興奮よりも、生身の生き物のグロテクスさに恐怖が這い上がってきた。
ダッシュで逃げる。
登りは追いつかれるかもしれないと、できるだけ海沿いから離れながら草原を駆ける。
ガツン!
頭への衝撃で驚き倒れるが、ヘルメットのおかげで頭にケガはなく、服も頑丈で転げた際の衝撃を吸収してくれたようだ。なんとか立て直し、振り返ると子供のこぶしほどの石が落ちていた。結構近づかれている。
ここは戦うしかないのか……。
この瞬間はいつ振り返っても自分を尊敬できるだろう。
戦うと考えて間髪入れずに身体が動いていた。斧を振り上げ、弱点であろう目の付近に打ち下ろす。
斧が肉に食い込む鈍い感触が手を伝い、筋肉が一瞬びくついたが、雑念を振り払い何度も打ち付けた。
しばらくして、生き物の反応はなく動かないことに気がついた。五感は鈍っていたのか唐突に生臭い匂いを感じ吐き気がこみ上げる。
「……ここを離れよう。」
普段であればもうバテてもおかしくない距離を無我夢中で走り続けていた。一種の興奮状態だったのだろう。
周りが見えているようで視野が狭まっていたのは、かなり近づくまで川に気づかなかったことから自覚した。
「もう家に籠ろう……。」
虚無の心持ちで家に逃げ込んだ。
服を脱ぎ捨て風呂に入り、長時間頭からシャワーを浴びた。少しすっきりしたところでお湯につかると気持ちがほぐれてくる。魚を捌くことはあるが、あれほどのサイズの命を奪ったことに戸惑う。しかし、確実に命を取りに来ていたのだからと、無理矢理気持ちに区切りをつけた。
異世界転移だ!とあれだけ喜んでいたが、異世界の魔物について楽観視していたことを反省する。
「ふー。アイス食べよ……。」
火照る身体に糖分が染み渡り、疲れが取れる気がした。
ピコンッ
まゆさんから連絡がきた。もう寝てしまおうかとうとうとしていたのだが、嬉しいので一通だけは頑張ろう。明日はもう少しやりとりできるといいのだが……。




