46. 小物作りは楽しい
待たせていた星鯨や、アリスちゃん用など増えた人数分を焼いていき、減ったフェンリル分につまみを追加した。胸肉のタタキ、カラフル野菜のソース掛けだ。
「「「いただきます。」」」
「ひゃー、旨味がすごい!」
「これは、すごく美味しいですね。」
「おいしいです!」「おいち♪おいち♪おいちぃーごあん!」
「あ!アリスちゃんのおいちぃダンスだ!」
「これは……ははっアリスが躍るのも仕方ないですね。」
「そうですよねー。あ、レグルス様、このお肉少し頂いてもいいですか?同じ国から来た人に食べさせてあげたくて。」
『良いぞ。まだまだおったからな。』
「ありがとうございます!そういえばなんであんな姿になっていたんですか?」
瘴気が溜まると居合わせた動植物に巣くうそうだ。聖獣はそれら瘴獣を倒したり、伐採したり処分するのが仕事で、普段は龍脈に落としたり、龍の御許へ運び浄化するそうだ。
『これは美味であるからな。白龍の御許では塵ひとつ残らんのよ。』
聖女がいれば物体が残ったままの浄化が行えるそうだ。今はいないので神器である携帯電話ならば代用できるはずだと、アルセアバードが食べたくて持ってきたようだ。
食後にお茶を飲みながら、ちょうどいいとフォトブック二人へを渡す。
「これはありがとうございます!二人の様子をこの目で見てきたかのようです。」
「にいちゃ!わんわん!」
「そだよー!レグルス様もいるよ。」
この時はこうだったとロバート君が楽しそうにコンラッドさんへ伝え、一通りページを眺め、二人が目を擦り始めた頃お開きとなった。
「まゆ様、この度はご相伴にあずかり感謝申し上げます。わが国の騎士を助けていただうえに、数々のご厚意は筆舌に尽くしがたい思いです。本当にありがとうございました。皇都でお待ちしております。どうぞ道中ご安全にお過ごしください。」
丁寧な挨拶をくれ皇太子はそのまま出発された。ロバート君達はお昼寝で天幕に戻り、今度はコンラッドさんが起きるまで付き添うようにするそうだ。聖獣達から聞いたぬいぐるみの効果も伝えたので、泣かないで済むように祈る。
おやつの時間にひょっこりアリスちゃんが出現しても大丈夫なように大目にケーキを作っておこう。来なくても収納しておけば、フェンリルが希望したときすぐ提供できるだろう。
クリスタベリーがまだ余っているので、日本の苺とコラボロールケーキを焼くことにした。食感の違いが楽しいのではと思う。ベリーパウダーで生地をほんのりピンクに染め、白の生クリームとのコントラストが可愛らしく女子受けしそうだ。
「よし、あとは冷めるまでは、アルセアレースを染めようかな。アルフォンス君は休んでていいよ。」
「あ、では辺境伯領での滞在について詳細を聞いてきますね。」
「ありがとう!カギ渡しとくね!」
開錠の仕方を説明し、ここからは、まったり裁縫の時間だ。小さなボールでアルセアレースを二種類染めている間に、本体の布とプラスチックのアジャスターを用意する。ぬいぐるみを持ち運べる鞄を二人へプレゼントしたい。巾着袋に足と手が抜けるゴムの通った穴を作るだけなので、おおまかな本体を作るのはかなり簡単だ。ミシンでぱぱっと塗ってしまい、残りはレースが乾いたら装飾して、明日の出発までには渡せるだろう。
「ただいま戻りました。それ可愛いですね。」
「試しにうちのぬいぐるみ入れてみたんだー。いい感じだよね。」
「二人へですよね。絶対喜びますよ!」
親が居てくれたからか、ぬいぐるみで落ち着いたのか、アリスちゃんの突撃は行われず、昼から入り浸っている星鯨と三人で久しぶりの静かなおやつを過ごした。
浴室の室内乾燥で小さな布はあっという間に渇き、おやつ後も完成に向けてちくちくと縫い合わせていく。
淡いピンクに染めたふりふりレースのフリルが下部を彩り、ぬいぐるみを入れるとスカートを穿いているように見える物はアリスちゃんへ。上部と下部で色を変えた袋の口付近にブルーに染めたリボンをつけて、蝶ネクタイをしたように見える物がロバート君へのプレゼントだ。
「使ってくれるかなー。」




