Y-21 異世界魔導
夕方より少し早めにクバンへ着きそうだと話していたら、昼過ぎにまゆさんから連絡が届いた。魔導列車の手配をしてくれるそうで、勿論旅が楽になるならとそちらで合流しようと決める。
「俺たちも乗れるかな?」
「そこは絶対に同乗を条件にいれるよ。」
「やったぜ!」
「おいちゃん!ぼくも!」「あたしもー!」
「もちろん皆で行かないと意味ないだろ?皆一緒に乗るよ。」
いつかと違って歓声の響く道中、魔物被害もなく無事領都に着いた。
街門の騎士に取り次いでもらうと、国境の騎士からと、まゆさんが話した騎士団長からの両方の指示で、宿泊先も手配してくれていたようだ。
「申し訳ないのですが、明日すぐの出発は難しく。明後日午後の便での出発となります。昼食後には私が迎えに上がりますので、それまでは街をお楽しみください。」
宿は四人利用の大部屋を三つ用意してくれていたが、ベッドの数的に、女子部屋、白銀の風の男組、男子部屋で、オリバーはあぶれる計算だ。宿側も謝ってくれたが他の部屋は満室だったので、断りを入れてからアプリ内にある自分のベッドを出した。
「すごいです!中はどうなってるんですか?硬いのに弾力があって、寝心地が想像できません!」
「スプリングってのが入っているんだよ。腰にいいぞー。」
「登録してください!ぜひに!行商は腰にくるんですよー!」
涙ぐみながら揺さぶられるが、さすがにスプリングの構造は詳しくわからない。
「すまん。詳しくないんだよなー。似たようなやつでポケットコイルなら簡単だからまだ登録なかったらやっておくよ。」
いつぞやの藁ベッドではなく、板張りの枠の中に羽毛や綿などふわふわした物を詰めたシーツが入っているこの宿は結構お高めの所らしい。それらも子供たちには初めてのことだったようだが、柔軟さのあるベッドマットの方が新鮮なようだ。大人も皆興味津々、子供たちはただただおもちゃだ!というようにベッドで飛び跳ね、わいわいと騒いでいると夕ご飯の時間が来た。
「おー!この鶏の手羽元の煮込みめっちゃ旨い!ミルンだったか?あの風味が少しあるな。でもこの甘酸っぱいのは何だろ。」
「果実酢だね。うちはリコリのお酢で煮てるんだ。」
「リコリなんですねー。この辺だと多いと聞いてましたが、このような美味しい煮込み料理は初めてです。」
領都の北側の森で大量に生っていて、各々の家や店で作っているお酢やお酒がこの地域の名物だそうだ。子供たちも無言で骨にしゃぶりついていて、大人たちもうまいうまいと合唱する声に気を良くしたのか、女将さんがワインボトルのサイズをお土産にと分けてくれた。
「まゆさん、料理が好きみたいだからいい手土産になったかな。」
満腹で部屋に戻ると真っ暗だった。明かりの取り方を聞いていなかったので、オリバー達男組の部屋に向かい確認する。
「ここは結構いい部屋なので魔道具のランプがありますよ。」
使い方を聞くが、なかなか明かりがつかない。
「まこっちゃん、かしてみー。」
リックがボタンのように配置されている魔石に触れると簡単に光った。
「なんでつかなかったんだー?」
「起動には使用者の魔力がいるんです。あの、もしかしたら、山田さん、日本では魔法がないと言ってましたよね……。」
「あ……そうか、俺魔力ないのか。」
まゆさんからのメッセージで、神に会わなければ力が授けられないということを思い出した。茫然自失は言い過ぎだが、実際に目の当たりするとかなりショックを受け、じっと魔道ランプの光を見つめていると、子供たちの心配そうな目が視界に入る。
「いや!まだまだ魔法を使うのは諦めてないぞ!光続ける時には魔石の力を使っているんだろ?なにか方法があるはずだし。明日はいろいろ調べてみるわ!」
空元気で宣言すると、本当になんとかなる気がしてきた。
明日一日は自由時間なので、午前中は大人組で予定通り魔導具屋へ行こうと話し合う。子供たちは申し訳ないが高価な商品が並ぶので、連れて行くことはできない。アメリヤとマリヤが子供たちを連れて女将さんが言っていた森へ連れて行ってくれるそうだ。リコリが生ってる付近は街の子供だけでも採りに行けるくらい安全らしい。




