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40. 擦り合わせは大事


 「あれ、寝ちゃいましたね。」


 「ほんとですね。なんだか重いなと思っていたんです。天幕に寝かせてきますね。」


 父親に抱き上げられて安心感もあったのだろう、両肩に頬をのせ二人はすやすやと眠っている。すらっとしているのに、二歳と五歳の二人をずっと抱えたままだった力持ちのコンラッドさんは、子供達を寝かせに天幕の方へと向かって行った。少しして拝謁の場も整い、皇太子も到着したようだ。フェンリルも様子が分かっていたかのように家から出てきた。




 『それで?我に会いたいというのはどこだ?』


 「あ、いらっしゃったようですよ。」


 皇太子はアルフォンス君と変わらない高校生ほどに見えた。淡いブルーの髪を襟足はすっきりに、上部はくせ毛をセットして纏めており、瞳はオレンジが強いトパーズのように輝いている。


 これぞ王子様という服を纏い歩いてきたと思ったら、さっとフェンリルの前に膝をついた。フェンリルの横にいたため、急な展開にどのようなポジションに立てばいいのかとあたふたとしてしまう。とりあえずは、そっと二歩ほど下がってみた。



 「……それで、そちらがまゆ様でいらっしゃいますか?」



 周りには騎士が多く並び、自分の立ち位置にずっとおろおろとしていたので、最初の方から話を全く聞いていなかった。



 「はい!立花茉優と申します!」


 「今後のことについて、お話があると伺っております。外は寒いのであちらの天幕へ移動しましょう。」


 『我は風呂でも行こうかの。まゆよ、おやつはいつだ?』


 「子供達が起きたらと思ってます。先にお召し上がりになりますか?」


 『いや、一緒でよい。では、またな。』



 フェンリルはシュンッと消えてしまった。少し心細くなったが、アルフォンス君や、コンラッドさんも一緒に移動するようでほっとした。





 「今一度、ご挨拶させていただきますね。私、マルカリオン帝国皇太子ノックスと申します。この度は予想外の難局にもかかわらずご尽力いただき、誠に頭が下がる思いです。」


 「はい。ありがとうございます。」

 

 「それで、いくつか確認をしたいのですが、まゆ様は異世界よりいらしたということで間違いはございませんか?」


 「そうですね。全く違う世界なので異世界ではないかと思います。」



 この世界に来た時の様子や、子供達やアルフォンス君と出会ったときの状態など話をした。原因も調べてくれているが、帰れるかは全然目処が立っていなく、帝国で居を構えるならば習慣や文化など教授し、生活のサポートも行うとのこと。また、別の国を希望するなら、その国へ繋ぎを取ってくれるそうだ。そのため一旦は皇都へ一緒に赴いてほしいらしい。



 「その、ご提案とても有難いのですが、転移被害者で私の知り合いもこの国に来てまして。マグラ村の孤児院と自治区の獣人の子たちと一緒にいるんです。」


 「異世界転移者が他にも?」


 「そうですね、同じ日本出身です。今イリソス領の国境付近の村から領都のクバンに向かっているそうです。西部のリュクスの街で一旦合流できないかと話しているんです。」



 山田さん側での子供達との出会いや、一緒に同行している冒険者の話を伝えた。



 「私のほうで、その状況に合う転移被害者の情報は入ってきております。昨日に国境ということであれば一致しますね。末裔様とお聞きしてましたが異世界からの来訪者でしたか。」

 


 騎士団長のほうに昨日のうちに連絡があったそうだ。クバンで一度逗留してもらう予定だったらしい。何事もなければ旅程的にも今日にはクバンに着いておかしくはないらしく、騎士に接触するよう通達してくれるようだ。

 

 そのあと、地図をみせてもらい、現在地と山田さん達の位置を確認した。荷馬車での移動を考えると山田さん側がリュクスへ着くのは一ヶ月以上掛かるのでないかと言われる。クバンから魔導列車を手配するので、辺境伯の領都トゥリアで合流するのが早いと勧められた。

 山田さんと話しどうするか決めたら、明日には騎士団長へ伝え手配してもらうことになった。




 そこでちょうど天幕が開き、騎士の一人が入ってきた。


 「失礼します。セントローレンス候、お子様のことで少々。」


 

 外では盛大な泣き声が響いていた。

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