6. 安眠できそう
期待に震える指で、母が愛飲しているオロナミン〇をタップしてみる。
ポトッ
寝袋の上に無防備に投げ出された、見慣れたあの元気がでる飲料。
ガッツポーズが出た。
これで食べ物に当分困らないだろう!
昼間から不安ばかりで、情緒が激しく右往左往していたが、衣食は担保された解放感と炭酸が身に染み渡る。
他のアイコンでお金の袋は、金融機関と自宅の500円玉貯金が合算され表記されているようだ。思ったより貯金箱が貯まっていてニヤけてしまう。定期預金や積金も解約されすべて財産扱いとされていた。
最後は本命の買い物カートのアイコンだ。
アニメなどでみた異世界の定番ともいえるチートではと、全身が歓喜のスタンバイ状態だ。
「……よっしゃーーーーーー!!!アニメで見たやつー!!!」
瓶を倒したが何滴かしか残っていなかったので気にしない。ただただこの高ぶりに合わせて小躍りした。
車からは奇声が漏れ謎に揺れ動き、もし何者かが車を見ても、決して近づかない異様さだっただろう。
「ネット通販だー。」
いつも利用しているサイトごとに分かれているようで、履歴もそのままであり検索しやすい。
「あれ?わからんやつがある」
今までスーパーや雑貨屋さんで購入したもの、居酒屋やごはん屋さんで食事したもの、ネット通販にないものの履歴がまとめられたカテゴリーがあった。
「チートすぎるやろぉ………」
こんなにチートすぎていいのか、なんだか幸運が一気に来たように感じ、今後に揺り返しが来ないかと不安がじわじわと少しだけ吹き返してきた。
「あー、そうだあれしてない!」
そうあの定番のセリフ。忍び寄る不安を吹き飛ばすように…
「ステータスオープン!!!」
………………。
何もない。恥ずかしさが頬にのぼってきた。それでも諦めきれず、ぼそぼそと他の定番の言葉を口にした。
「ステータス開示…」
言葉ではないのかと、心で思ってもなにも反応がない。ちょっと、いやかなりショックではあるが、携帯電話のチートに気持ちは持ち直した。これ以上は高望みしすぎだ。
外もすっかり暗くなり、今まで食べに行ったところの一覧を見ながら、明日は少し贅沢しちゃおうかなと色々と眺め、寝袋の中でゴロゴロする。
「そうだ、山田さんに連絡しようかな。」
――〈私〉探索はできてませんが、色々と嬉しい発見がありました。明日は冒険してみます!
ピコンッ
――〈山田〉僕の方も寝床なんとかなりそうです。結構心労がひどく早めに休もうと思います。また明日やりとりできたら嬉しいです。おやすみなさい。
(心労か…お仕事でトラブルあったのかな…)
自然と利用していたが、普通にやりとりできることに安心する。相手は私の置かれてる状況を知るよしもないが、人との繋がりというのはこんなにも大事なのだと身に沁みた。
明日はなんだか明るい気持ちで迎えられそうで、電気毛布の中ぬくぬくで眠りについた。




