C 困惑満載
パパ視点
王城でロバートの発信器を辿るとフォーマルハウト山脈の麓を指し示した。
その時の絶望は言いようもない。息吹の舞う季節で魔物は出ないだろうが、幼子二人で何ができよう。
寒さに震え、空腹を抱えて彷徨う様を想像し叫び出したいほどの衝動を抑えることができなかった。
妻は意識を失い、自身は茫然と寄り添うことしかできない。
少しも眠れず、意識はあるのに、思考がぐるぐると回っているような止まっているような、目は虚ろに宙を彷徨う。
ふと、強く揺さぶられ、頬に衝撃を感じ意識がはっきりとした。
「おい!ロバート達は無事だ!しっかりしろ!!!」
いつの間にか、別邸に居を移していた両親が駆けつけていたようだ。
「なん……です?なんと言いましたっ!?」
殴られた頬の熱さと、耳に届いた己の願望が強く現れている言葉に、脳みそに血が通うのを感じた。
「帝国より通信があった。この度の転移事故で帝国騎士も巻き込まれたようだ。レグルスの森で魔女様に保護された子供達を確認したそうだ。」
「なんと…………神よ…………ありがとうございます。」
一つも反応していなかった涙腺が一気に動き出し、滂沱の涙が溢れ前が何も見えない。妻も目が覚めていたようで泣き声が聴こえた。
「領のことは任せておけ。二人急ぎ帝都へ向かいなさい。あちらで合同の救助隊を組むそうだ。」
「父上、ありがとうございます。」
「よい。私たちも今回は本当に肝が冷えた。魔女様へどのようにご恩返しするか考えておかねばな。」
王より魔導馬車の使用許可がおり、次の日には帝国へ入った。さすがの急展開で妻は少し体調を崩してしまい、通信は私一人行うことになった。
子供達の可愛い言葉の数々に涙が滲み、元気な様子に心底安堵した。
絵本の通りだと話す魔女様との偶然の出会いには本当に驚く。そして、魔女様もまた、転移事故でたまたまそこに居たのだというではないか。奇跡の邂逅にまた神へ感謝を捧げた。
しかも、ロバートがフェンリルのお子と主従契約を結ぶなんて!
ダイヤモンドフィッシュや、まさかの白龍様を目にしたなど伝説の大行進に、良かったなと、ありきたりな言葉しか出てこない。
翌日には妻も立ち会い、少しだが魔女様と言葉を交わす。人柄の良さそうな女性の声が聞こえ、妻も不安が軽くなりほっとしたようだ。
あちらが早く動けることになるが、森も抜ける目処が立ち一安心だ。
出発日には初めての野営に喜ぶ息子たちの声に和み、翌日少し遅くなった通信に、もうこれ以上は驚くことなどないだろうと過信していた自分を未熟者と叱りたくなる。
「なんで海…………。しかもアルナイル様ってどれだけなんだ。」




