Y-19 異世界食材
翌朝、長電話の弊害で眠すぎて、マイクに運転を代わってもらう。
「ふわぁ。」
「おはよ、山田さん。めっちゃ夜更かししたんだって?」
「あぁ。運転ありがと。まさかこっちに来てると思わなかったから、話したいこと尽きなかったんだよ。」
「やっぱ、女?なんかにやけてるけど。」
「いや、そうだけど!にやけてはないって。」
わちゃわちゃ話ながらも旅は続き、合間に届くメッセージを見ては、冷やかされて、同胞がいることが嬉しいだけだと言い訳を繰り返した。
「今日は村内で休みましょう。」
この村は、清流がちょうど二股に分かれる付近で、魔物被害の少なさから、養鶏が盛んな地域とのことだ。柵に囲まれていて安全なので、テントでの寝泊まりになるが、夜中の火の番はおかず、今日は皆でゆっくり酒を飲もうと話していた。
これは晩酌タイムに鳥刺しへ挑戦できるのではと、期待に胸が躍り始める。
スマホが神器だとまゆさんから教えてもらったので、やはりモリオンキャトルが生食可能になったのも浄化の効果だったのだろうと推測している。さすがに子供たちへ鳥の生肉が大丈夫などと危ない知識を植えたくないので、大人時間にこっそりいただこう。
「鶏って、まるまる新鮮なやつ買えるかな?」
「いけるけど、捌けるのか?」
「いや、それは報酬渡すので教えてほしいんだけどいける?」
「報酬が何かによるかな~。」
ジャックがにやにやしながら聞いてくるので、ジェスチャーで飲む振りを見せる。
「っしゃ!任せな!」
交渉成立だ。大人だけ美味いものを食べる子供たちへの罪悪感から、今晩は唐揚げを大量に揚げて振舞った。
案の定、男子は狂喜乱舞で貪り食っていた。女子には甘い物がいいかとデザートに女子人気が高そうな苺を提供する。
子供たちが寝静まったころ、さっそく酒盛りタイムだ。
「んで、結局山田さんは鶏肉をどうすんだ?」
「生で食うんだよ。」
「「「うぇー!!!!」」」
「まじかよ。山田さんって勇者なんじゃねーか?」
「俺のいた国だと地域によっては食べるんだよ。これで収納すればモリオンキャトルもいけただろ?」
「「あぁ~。」」
「そゆこと。」
九州へ出張した際に感動した醤油を購入し、ハツや肝など、いろんな部位をちびちびとつまむ。酒は万人受けするだろうと瓶ビールで振舞った。
「この酒うめー!」
「山田さん、ちょっと一口頂戴。」
「レオ、お前も勇者かよ。」
鳥刺しを試したり、酒がうまいと騒いだりと楽しく夜も更けていった。
翌朝、鳥刺しが羨ましいとまゆさんが言っていたので、もう一羽購入しておいた。あちらでは、海鮮が大量にありどでかいウニも手に入ったそうで、うに丼が好物だと話すと、手つかずで会える時まで収納してくれるそうだ。魚ばかり食べているようなので、モリオンキャトルを自分の取り分のうち、まゆさん用に除けておこうと思う。




