33. ご奉納の作法
子供達と絵本を読んだり、アルフォンス君には小説を貸したり皆でまったり読書の秋を満喫する。星鯨は私が学生の時の参考書を読み込んでおり、今後はできれば全ての文献を読んでみたいとご所望された。
「お昼は麺がいい?お米もいけるけど、パンがいいかな?」
「あ、では麺がいいです!」
「そう?んじゃまた違う麺にしてみようか!」
「はい!」「やったー!」「あーい!」『きゃん!』
「アルナイル様もよかったら召し上がってください。」
「ありがとうのぉ。」
すっかり麺の虜になった三人と一匹のために、また違った麺料理を考えよう。
昨夜回収した魚介類や、ダイヤモンドフィッシュ達は、きちんとフォルダ分けされている。アプリの一覧を確認していると、チートとはこういうものだと決めつけていたのか、日常扱いというのか、慣れが起きていると気づいた。先ほど神器の話を聞いて、なんだか今更ながらきちんと感謝しなければと落ち着かなくなる。
「アルナイル様、神様へのお祈りというか感謝はどのようにしたらいいとかありますか?」
『ん?特別なことなど何もないのじゃよ。ただ真摯に祈れば神もお聞きしておる。』
「そうなんですかー。でも、お気持ちで少しでもお供えとかしたいのですが、祭壇?とかに置けばいいですか?」
『おうおう。偉い子じゃなぁ。気持ちだけでいいんじゃよ。ただこの神器の中であれば神にも届くであろうの。』
祭壇やシンボルを置きたいのならば好きに飾って自由にしてもいいらしい。お供えの為にも早速気合を入れて作ろうと、昨夜いただいた魚介から何種類か選び、下処理をしていく。
イカを見たことも触ったこともなかったアルフォンス君は、おっかなびっくりに手伝ってくれた。
「今日はテーブルの真ん中で焼こうと思うんだよね。」
「火を置くんですか?」
「これ使うよー。」
ホットプレートでイカに帆立にエビと野菜たちを炒めていく。火が通ったら、麺を入れ水を少しかけて解す。ロバート君たちの分と大人用を分けて、ソースをかけて混ぜ合わされば完成だ。
「すごく美味しそうな匂いですね!」
「塩焼きそばもいいんだけど、ソースが一番好きなんだー。」
「子供達のは何が違うんですか?」
「甘いお多福顔のソースだけで作ってるよ。んで、うちは大人用はウスターソースも混ぜるんだー。」
片付けていたサイドチェストを壁に寄せ置き、百均のイーゼルに白龍の鱗を神鏡のように立てかけてみた。そして三方の上に料理をお供する。
パンパンッ
(アプリチートありがとうございました。本当に助かっています。本当にありがとうございます。)
「あ、柏手は関係なかったかな……。」
『よいよい。すべて気持ちじゃ。ほれ神へ届いたようじゃよ。』
日本でのお供えのように、並べたあとは後でお下げするものと思っていたら、本当に届くとは思いもしなかった。もっと手の込んだものや、好き嫌いとか聞いておけばよかったと少し後悔する。
「まゆたん、ごあんっ!ちゃべゆ!」
「あ、ごめんごめん、それじゃ食べようか!」
アリスちゃんの催促で、皆で椅子に座りホットプレートを囲う。
「おいちぃー!」
子供達がお昼寝を始めた頃、救助隊より先だって通知が届いた。アルフォンス君が個別で対応したところ、フェンリルに送ってもらうのならば、辺境伯での対応は準備が間に合わず、また荷が重すぎるので、救助隊の到着と合わせて欲しいそうだ。救助隊には驚くことに、皇太子が行啓されているとのこと。
「気にしなくてよさそうだけど。というか、レグルス様すぐ帰っちゃいそうだよね。」
「はい。一応お人柄というか、気立てはお伝えしたのですが……。ご挨拶申し上げたいとのことです。本隊と合わせる場合は、到着は明後日の午後一番までに着くのを目指すことになります。」
お昼寝から起きたら、家族との団らん通信の時間だ。その間に、今までの収穫品の分別をしよう。
ダイヤモンドフィッシュは、まっさらな十三尾は四人で割って、余った一尾と料理に使って余っている切り身は料理に使っていこう。
昨日いただいた魚介は大量すぎて目が回りそうだったが、おおまかに四等分にフォルダ分けし、余りはダイヤモンドフィッシュと同じで今晩と明日明後日で調理してしまおうと思案する。
『ん?少し早かったか。』




