表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/101

Y-18 異世界通話


 運転を代わり、倒れて動かないモリオンキャトルの元へ向かう。


 「……倒しちまったな。」


 「だな。はは。」


 「山田さん、Aランクじゃん!」


 「いやいや、轢いたのはアメリヤだよ。」


 「えー、ハンドル最後に回したのは山田さんだよー。」


 罪の擦り付け合いをしていたら、オリバーが駆け付け、すぐ収納して、水場で血抜き処理をしようと促された。


 「へー、収納すると浄化されるんだ。」


 「浄化ですか?」


 「人間に悪い物質を消すっていうのかな。腹壊す原因の菌とかウイルスって奴とかもなくしてくれるらしい。」


 「いいなそれ!生焼けで死ぬ思いしなくていいってことか!」


 収納された際に滅菌処理されるのか、注釈には浄化済・生食可能と表記されていた。バーベキューは生焼けが怖くてできなかったが、この肉なら子供たちでも安心して食べられるだろう。


 「今日は焼肉にしよう!」


 「いいねー!」「最高!」


 清流へ寄りダニエル達が解体してくれている間に、こちらは昼ごはんを作る。夜が楽しみすぎて、何を作ってもしょうもなく感じてしまうだろうと、サンドイッチで簡単に終わらせることにした。


 「おーい!できたぞー!」


 巨大な肉の存在に惹きつけられ、川縁に並んでる子供たちを呼ぶが全く反応しない。


 「きちんと昼食べないと肉はなしだぞー。」


 普通の声量で聞こえるぎりぎりの声で言ってみると、獣人兄弟の耳がぴくぴくっと動き、ダッシュでこちらへやってきた。


 「まこっちゃん、そりゃないぜー。」

 「もちろんきちんと食べるにきまってんじゃーん。」


 調子のいいことを言いながら、下の子たちも呼びよせ、昼を食べていく。なんやかんやで面倒見のいい二人に微笑ましくなる。



 「よし!出発するか!」



 心臓に悪い運転を経験したばかりなので、比較的丁寧な運転だったマイクにすら今日は任せられる心情にはなれなかった。助手席はダニーの番だったが、揺れが気持ちよかったのか寝てしまい、午後は一人黙々と運転をし続けた。



 「まゆさんにきちんと確認を取ろう。」



 棚上げしっぱなしだったメッセージに、先ほどの衝撃からうじうじ悩んでるのが馬鹿らしくなり、当たって砕けるではないがまずは質問してみようと思い立つ。




 決心が着いたころ今夜の野営地へ到着した。


 「にくだー!!!」

 「にーく!にーく!」


 「まずはテントだろー!」


 「まこっちゃん!ここはおれたちにまかせろ!」

 「そうだ!まこっちゃんにはやるべきことがあるはずだ!」


 なんだかカッコいい言い回しで料理の催促をしてくるジョンとリックに、そこまで好きなのかと気持ちに完敗して、笑いながら肉を用意し始める。


 「肉と野菜並べて焼いても絶対食わないな。」


 「だね。スープにしたら?」


 「そうだな!お湯わかしてくれるか?」


 肉を用意している間に、アレックスに切り方を教え、人参とキャベツ、えのきを切ってもらう。もやしと鶏ガラを入れ、火が通ったら溶き玉子を流しいれた。


 「そのままぶちこんじゃだめなのか?」


 「それでもいいけど、溶いてから入れるとふわふわでまた違った旨さなんだよ。」


 肉の部位を教えたり、鶏ガラの粉は何でできているかを過程を伝えて驚かれたり、和やかに準備をしていたら、じわじわと待てない子供たちが周りを囲んでいた。

 

 「よし!網も準備万端だし、焼肉するか!」


 「「「「いえーい!!!!」」」」


 タンにドン引き、旨さに憑りつき、カルビやハラミで捕り合いになり、賑やかに肉祭りは過ぎていった。



 子供たちが寝静まったころ、焚き火を囲み大人たちで静かに雑談をする。昼間に考えた通り、まゆさんへどこで撮ったのかの簡単なメッセージを送ってみた。


 「レグルスの森……。」


 「レグルスの森がどうしたんですか?」


 「あぁ、知り合いがそこにいるらしくて。」


 「あ、もしかして白龍の?」


 「そうそう。そこの湖でこれと同じようなの使って撮ったんだって。」


 スマホを見せ、相手もやはり末裔なのかと聞かれたので、そいえば自分の状況は詳しく話していなかったと転移の話を伝える。


 「はあ、転移だから、その人侵入できない森にいたんですね。」

 「森から出れるのか?冬が終わると魔物で溢れるぞあそこ。」


 「あぁ、それは、とりあえず脱出できたらしい。」


 ここまでの符号の合致に異世界転移の仲間がいたのだと、ほのかな安堵と興奮が寄せてきた。まゆさんからの通話の誘いに、席を外す断りを入れ、一人月を眺めながら受話ボタンを押した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ