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31. リラックスなんてできない


 子供達も星鯨の登場には興奮したのかなかなか寝付けず、動物のぬいぐるみを二人と一緒に選んで購入した。抱き枕は効果的だったのか、すとんと眠りに落ちてくれた。ロバート君が猫にユリウス、アリスちゃんはうさぎにみーちゃんと名付けていた。

 

 寝静まる家で皆を起こさないようにハーブティーをこそこそと淹れる。


 すごいとしか感想は出てこないが、まだまだ興奮しているようだ。移動で神経を張っていた疲れと色々な驚きで、身体がびっくりして火照っている気がする。アイスティーにしようと、常備しているハニーバニラカモミールを用意する。香りは甘いのに口当たりはまろやかで、甘い飲み物が苦手だがさらっと飲めてしまう。不眠に向いていてリラックス効果があり今の自分にぴったりだろう。


 「驚いたなぁ……。」


 頭を整理するように今日の出来事を振り返る。一つ一つ思い出していると、最後の魚介類のパレードにまた少し興奮してしまった。





 ピコンッ



 連写で溜まった写真の整理をしていると、ちょうど山田さんからメッセージが届いた。



 ――――〈山田〉返信が遅くなってすみません。写真驚きました。とても綺麗ですね。どちらで撮られたんですか?



 ふと、何の話か分からなかった。自分が何を送ったのか、上段に目を向けると白龍の写真を添付していた事実に驚く。よくよく思い出すと久々のお酒で気持ちよくなりフェンリルに自慢したり、山田さんに送ってしまったようだ。忘れていたことや誤字の酷さに結構酔っていたのが読み取れる。



 ――――〈私〉あ、これはフォーマルハウト山脈ってところなんです。レグルスの森の湖にいたんですよー。



 森を抜けることや、フェンリルとの食事などバタバタした日々を送っていたので、日本のことを考えることが減っていた気がする。実際、山田さんとのことも最初は繋がりが嬉しかったはずなのに、立て続けの出会いに意識は身近なところへ移っていて返信がないことに気づいていなかった。


 考えないようにしていたが、なんとなく日本に帰れないように漠然と感じていて、この際もう会うこともないだろうと、ヤバい人と思われてもいいから本当のこと書いちゃおうかと悪戯心がでてきた。




 ――――〈山田〉フェンリルのレグルスですか?



「…………え、……え?」




 フェンリルという言葉に心臓が震えた。


 日本にそんな創作物があったのだろうか。


 血の気が引くような沸騰するような訳のわからない鼓動を感じ、緊張で文字をうまくフリックできない。



 ――――〈私〉ご存知なんですか?白龍の息吹とか…。



 携帯電話の画面に映る、文字にするとすごく厨二病というのか、ファンタジーな言葉に少しだけ頭の熱が冷える。



 ――――〈山田〉はい。フォーマルハウト山脈から流れる聖流近くにいます。今帝国に向かってる最中です。これめちゃくちゃ美味しかったです。



 聖流というのは知らない言葉だが、レスポンスの早さや、添付された写真に、すとんとなにか納得感が落ちてきた。


 そこには真っ黒な巨体に、黒く輝く角が生えた見たことのない牛のようなものが映っていた。



 ――――〈私〉うわ!魔物ですか?山田さんも本当に異世界だったんですね。


 ――――〈山田〉そうなんです。モリオンキャトルと言うそうですよ。まゆさんの写真を見てこちらも本当に驚きました。


 ――――〈私〉異世界話はずっと冗談だと思ってました笑 帝国のどちらに向かっているんですか?


 ――――〈山田〉私もです笑 西部にあるリュクスという街に向かっています。


 ――――〈私〉こんな時間で微妙かもしれませんが、通話とかってできますか?



 文字を打つ時間がまどろっこしく感じ、アプリの通話機能で話ができないか提案した。



 それから二人、初めての会話であったが、共通の話題には事欠かないを体現するかのように長時間語り合った。


 

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