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30. じいじからのお年玉

 湾の沖合、月明かりの照らされる水面がキラキラしているなと思ったら、ぶわっと持ち上がり何かが浮上してきた。フェンリルを初めて目撃した際も縮尺がおかしいと思ったが、その比ではない。昔神戸で見た豪華客船より大きなサイズの生物が一部分を見せていた。


 それは、真珠や、桜貝、淡いタンザナイトの色味がグラデーションのように美しく輝いて光っていた。


 「すごい!アルナイルさまだ!」


 「あれが、伝説のアルナイル様なのか……。」


 「知ってるの?」


 「たぶんですが、アルナイル海に住む聖獣の星鯨様です。」


 大きくキラキラと眩しい鯨がそこにはいた。構えていたカメラではいつの間にか長押しして連写モードだ。




 『よう!久しいな!』




 フェンリルが届くのかわからない普通の声をかけたかと思うと、星鯨はぶわっと大飛沫をあげ夜空に舞い上がりこちらへ突っ込んできた。



 「ひゃーー!!!」

 「うわ!」『きゃんきゃん!!!』



 必死に子供達を抱えながらも腰を抜かしたところ、(あ、潰される)と見上げた瞬間、シュンと光が収縮し、そこにはキラキラと輝く青年が立っていた。



 『レグルスや、久しぶりじゃなぁ。大きゅうなったなぁ。』


 『じいさんは、変わらずボケとるな。我はもう成長せん。ほれ、百年ぶりの眷属だ、スピカ挨拶せよ。』


 『……きゃん。』


 『ほほほ。めんこいのぅ。じいじじゃぞ。』


 『あとは住処に紛れ込んだ人間だ。』


 『ふむ、聖女ではないようじゃな。稀人か。わしはアルナイル、よろしゅうな。』



 星鯨の巨体のときと変わらない輝くグラデーションの長い髪と瞳をもつ美しい青年が、目じりを下げお年寄り口調で親しげに声をかけてきた。


 「あ、立花茉優です。宜しくお願いします。」

 「アルフォンス・ヴェーザーと申します。」

 「ロバート・サグネです!あと、いもうとのアリスです!」「あい!」


 『ほっほっほ。きちんと挨拶できて偉いのぅ。ほれ、褒美をやろうの。』


 物理的にも目が痛いほど眩しい輝きを散らしながら、目が潰れるほどのキラキラとした笑顔で、孫が挨拶をした時の祖父母のように星鯨は応えてくれた。


 そして、手をひらっと動かした時、海が震えた。




 ざっっっっばあーーーーーーん!!!!!!!




 家族旅行で見たのとじま水族館のイワシのビッグウェーブかのように、家の手前に向かい光輝く魚介類が大量に浴びせられた。当たり前に全員が水浸しだ。


 『全く、じいさんは変わらず雑だな。』


 『ん?そうか?人間は魚を食べるのが好きじゃろ?』


 フェンリルがすっと手を振り、全身を乾かしてくれたようだ。以前も乾かしてもらったが、乾かすだけではなく、潮臭くもなくベタつきも感じない。フェンリルがしてくれていたのはアニメなどでみる洗浄なのか!と感動した。



 「えっと、これらはどうしたらいいんでしょうか?」


 『好きにしたらよいよ。食べられるものばかりじゃ。持っておいき。』



 そこからはアルフォンス君とバケツに突っ込みアプリで保管するの往復を繰り返す。骨の折れる作業だったが、地元の名物の寒ブリのごとき魚や、蟹で一番好きな紅ズワイガニに似たものがあってテンションはあがった。謎に全て宝石のようにキラキラして巨大だったが。


 「これは、カジキなのか鰹なのか鮪なのか。」


 「かつお?は知りませんが、それはたぶんツナボニートですね。図鑑で見たことありますよ。」


 カジキのように鼻というのか口が鋭く長い大型回遊魚に似たものもあった。お相撲さん並のサイズで、こっそりカメラを向けると部位によって鮪でもあり、鰹でもあるようだ。疲れが一気に吹き飛んだが、周りを見渡し途方に暮れる。車内の薪が収納できたのだからと、アプリを猛チェックすると、手待ちのようなマークに魚介類が表示されていた。実際頂いたものなので所持品扱いなのだろう。タップスライドで全て収納できた。


 「よしっ!!!!!明日は海鮮三昧だね。お酒も飲んじゃおうか!」


 「いいですね。明日すぐ移動とはならないと思うのでゆっくりしましょう。海鮮楽しみです!」


 『ん?酒か。我もいただこう。おお、そうだ、じいさんも食べて行くとよい。』


 『酒かぁ。久しいなぁ。ちょいとお邪魔させていただこうかのぉ。』

 

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