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Y-16 異世界和牛

 「止まっている時はバーをこっち、動くときはこのマーク。これがアクセルで進む、こっちがブレーキで止まる。この丸いので方向を変える。簡単だけど、スピードがでると危ないから、そっと一センチ踏み込むつもりで最初はやってみて。」


 「一センチってかなり繊細だな。」

 「魔道具って考えたらそんなもんじゃね?」

 「やっぱ俺は乗らなくて正解だぜ。」


 細かく説明して、助手席に乗せ運転をしながらまた説明をする。運動神経は素晴らしい者たちなのですぐ運転できるようになった。


 「おい!飛ばしすぎだぞ。」


 「いやーこれ簡単にスピードでちゃうな。楽しくなってついつい踏んじゃうぜ。」


 「マイクの運転はかなり丁寧だったな。」


 「性格でるんかな。まあ山田さん疲れた時は使ってやってよ。ずっと運転してるだろ?俺たちは交代してるから心配だったんだよ。」


 好奇心だけかと思いきや、心配から運転を覚えようとしてくれていたみたいだ。


 「おい!次は俺だぞー!代われー!」


 やはりただ乗りたいってだけが八割はありそうだ。




 今日の野営地を決め、初のテントを設営する。大人八人用なので、九人の子供と大人一人くらい大丈夫だと思うがどうだろうか。


 「テント初めて作ったんだけど、このワンポールっての簡単でいいな。」


 「おれでもできるぜー!」

 「おれもー!」


 「おー、ジョンとリックは頼もしいな!明日は任せようかな。」


 設営が終わったら、ジャックとユリヤに付き添ってもらい、キャロとアレックスは薪を拾いに行った。夕暮れ時が近づいてきているので、早めに夕ご飯をこしらえないといけない。色のついた野菜も大事だから、スープみたいで食べやすいだろうとトマト鍋に決めた。


 「おっさん!すごいぞ!ちょっとこっち来てくれ!」


 いつも冷静で頼りになるアレックスが、子供らしく興奮して駆けよってきた。


 「あんぜんな所だからダニーたちもみんなで見に行こう!」

 「モリオンキャトルがいたのよー。」


 ジャックたち曰く、希少魔獣の一種で角が黒水晶でできてる巨大な牛らしい。気性も大人しく乱獲対象かと思えば、知能も機動力も高く武器を向けると一気に角で貫かれるらしい。攻撃する意思がなく剣も鞘に収まっていれば何もしないらしいので、皆でぞろぞろと見に行った。


 「巨大って、でかすぎないか?軽トラくらいあんじゃん。」


 「でけーよなー。」「めっちゃ美味いらしいぜ。」

 「斬撃飛ばせるようになれなきゃ倒すの無理だわなー。」

 「そりゃAランクじゃん。」


 「「「でけー!くろーい!!!」」」


 テントの安全範囲内であったので安心して記念に写真を撮ろうと、スマホのカメラを向けた。


 「翻訳アプリじゃなくて鑑定チートだったのか?」


 画面に映るモリオンキャトルの横に感嘆符がついており、そこをタップすることで鑑定欄が現れた。


 〈モリオンキャトル〉

 黒水晶の角をもつ牛の魔獣。基本穏健だが殺しにくるなら殺す。子供は脅威ではないとガン無視。魔法は使えないが全身を魔力で強化している。黒水晶?折れるわけないじゃん。極上の黒毛和牛。


 「なんか……強いな。それにしても黒毛和牛か。食べてみてーなー。」



 でかい、強そう、美味そう、と大騒ぎしながら設営場所に戻って、料理の続きをする。


 「まこっちゃーん!なにこれー!」

 「めっちゃあかい!」


 「あー、トマトが入ってるからなー。」


 「なにそれー。」

 「もしや……やさい?」


 「カストル半島の名産のトマトですか!」


 帝国南部の半島ではよく食べられる食材で、皇都でも最近は魔導列車での輸送が盛んになり入ってきているらしい。


 「魔導列車ってのがあるのか?」


 「山田さんが乗ってる軽トラを大きくしたのが連なってるかんじの魔導具です。めちゃくちゃ高いんですが、帝国を縦断するのに一週間かからないそうですよ。」


 帝国を縦と横の十字に線路が走っているそうだ。五十年前から着工してようやく全線開通したらしい。


 「創案者は末裔じゃないかって噂されてたらしいですよー。名前も姿も表にでてないので噂止まりですけど。」



 夕食は皇都で高価なトマトを使った鍋ということで、現金なやつらは美味いうまいと、締めのリゾットも全て空っぽになった。

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