28. しゃぶしゃぶは楽しい
今晩はダイヤモンドフィッシュのしゃぶしゃぶつみれ鍋だ。昆布と鰹だしのつゆに、白菜を敷き詰め、にんじんと大根をピーラーで短冊状にひらひらにしたものとネギを散らし、つみれは茹でて置いたものを投入。つけダレは梅肉ポン酢とゴマダレの二種類を用意して完成だ。
「ダイヤモンドフィッシュの切り身を、こうやって、しゃぶしゃぶして召し上がってください。」
『うむ!これは面白い!』
「ちゃぶちゃぶ!しゆ!」
「おっと、テーブルに乗っかるのは危ないから、お膝においで。」
フェンリルはなぜか箸を使えているが、他の皆は持てないのでミニトングを使いしゃぶしゃぶしている。アリスちゃんの手の上から、がっつり掴みながらも本人がやってる風に誘導する。ロバート君は膝立ちでアルフォンス君が補助してくれている。
「しゃぶしゃぶというのですか?こういう食べ方は初めてですが、楽しいですね!」
「楽しいよね!やっぱみんなで鍋っていいよねー。あ、締めは雑炊だからお腹の空きは残しておいてね。」
洗い物などは家を出せた時にまとめて片付けることにし、今日は身体を拭いたらすぐ寝る準備だ。友人と旅行などで運転手になることが多く、長距離運転には慣れているが、さすがに森の中の運転は疲れがきて一瞬で眠りに落ちた。
「おはようございます。」
「ぉぁょ。むにゃ。すぅー。」
「おはようございます!」
「ふぁ、おはよー。よし!今日も移動がんばるか!」
朝はマルチグリドルでぱぱっとウィンナーを焼き、端っこでバターロールを温める。パンに切れ目を入れ、レタスとウィンナーを挟んでケチャップをかければ、子供も食べやすいミニホットドッグの完成だ。大人には小さいのでたくさん作ろう。
「昨日でニ百キロ以上は進んだと思うんだよねー。もしかしたら今日で抜けれるんじゃないかな?」
「そんなに早いのですね。通信では辺境の砦より五百キロ地点に位置情報が取れたそうです。砦と森の間も離れてますし、直線じゃないので正確ではないですが、明日には着きそうですね。」
テントは収納し、少しストレッチをしてから出発だ。道なき道を進んでいると、今日は余裕があるのか道端にちょこちょこと植物があるのに気づいた。
「あ、これパールリーフです!少し採っていっていいですか?」
休憩中にアルフォンス君がなにか見つけたようだ。
「あ、かわいい。真珠みたい」
キクも葉っぱも全部が白く、小さな花弁に真珠のような丸い実が鈴蘭の用に垂れている。
「これ、少し違うらしいんですがほぼ真珠だそうです。なので真珠の実と呼ばれてます。家族へのプレゼントやお守りにも有名なんですよ。姉がもうすぐ結婚するので贈りたくて。」
「へえー!素敵だね!私も少し採ろうかな!」
「あっちにたくさんみつけました!」
『きゃん、きゃきゃん。』
「採る時は一つ残すのが決まりだそうです。幸せが途切れないようにという意味があるらしいです。」
素敵な言い伝えを守りつつ、スピカとロバート君が見つけてくれた群生地で皆でお花摘みタイムだ。中腰で疲れたので、休憩がてらここで早めのお昼ごはんにする。
「お昼は簡単でごめんねー。」
朝使ったマルチグリドルはウィンナーを焼いただけだったので拭くだけにしておいた。横着だけど死にはしないだろうと、そのままワンパンカルボナーラを作り、野菜がないので果物で補えないかと林檎をデザートにする。
「おいちー!」『きゃん!』
「おいしいです!パスタすきです!」
「私もパスタ好きです!色々な味付けができるんですね!」
「私も麺類が大好きで、いつも食べてるんだよー。」
「他にも麺?ってあるんですか?」
「そうだよー!今日の夜は違う麺にしてみようか!」
「「「やったー!」」」
午後も休憩を取りつつ、徐行運転を頑張ると、少し植生がばらついてきた。
「これもうすぐ森終わりそうじゃない?」
「ですね!暗くなる前に抜けられてよかったです。」
積雪もどんどん少なくなり、下草の緑も徐々に増えだした頃、森の境が見えてきた。夕暮れを感じる陰りの中、隔たりのない森の外は明るいようで、境に近づくほどやっと一つの区切りが来たと感じた。
「…………ねぇ、海来ちゃったよ。」




