27. 森のドライブ
「おはようございます。昨晩はご迷惑をおかけして申し訳ありません。」
「おはよう。大丈夫だよー。二日酔いとかない?」
翌朝、顔色は悪いがしっかりとした足取りでアルフォンス君は起きてきた。夜倒れたときは慌てたが、フェンリル曰くここは治癒力が働いているから放っておいて大丈夫とのことで、フェンリルがベッドまで運んでくれた。聖なる気様は万能である。だから、子供達も出会った初日など身体が冷えたはずなのに風邪をひかずいられたのだとわかった。
今日の朝ごはんはスクランブルエッグにカリカリベーコンと、甘すぎないパンケーキ、クリームチーズと蜂蜜添えだ。色どりと気持ち健康のためレタスとミニトマトも乗せて、ワンプレートで片付けは簡単にしよう。
お昼ごはんはホットサンドにするので、あとは焼くだけのところまで仕込んでおく。ハムチーズトマトに、ツナマヨとキャベツの千切りと人参のマリネ、シンプルにスクランブルエッグの三種類をランチボックスに入れる。
「「「「いただきまーす!」」」」
「しょっぱいのと甘いのがうまいな!」
「甘じょっぱいのいいですよねー。」
食べ終わったらすぐ出発だ。家を収納する前に記念写真を撮り、フェンリルに少しの間お別れを伝える。本日は夜ごはんのご臨席希望だそうだ。
フェンリルの散歩道という道なりを、時速20キロから30キロでゆっくりと走る。初めのうちははしゃいでいた子供達も、乗り物に乗るとくる謎の眠気にやられている。アルフォンス君は助手席で家族のおもしろエピソードなど話し相手になってくれ、単調な運転での息抜きになった。
四時間ほどがあっという間に過ぎ、お昼休憩をとる。心配していた肉食動物だが、森の動物は用心深く、車の図体とエンジン音の煩さに、当分は恐れて寄ってこないとのことだ。レジャーテーブルをだし、上着を羽織りホットサンドの準備を始める。食後は暖かいお茶で一服し、皆で少し外を散歩して身体を動かす。軽くストレッチをして、再度出発だ。慣れてきたので少しスピードをあげよう。
「アルフォンス君も寝ていいよ?」
「…大丈夫です。暖かいので少しあくびがでますが、何があるかわかりませんから。」
しっかりしているアルフォンス君だが、実は5年前までは末っ子だったらしい。姉二人の兄一人弟一人で、生まれ育った領地の話を聞いたり、できれば弟に会ってもらいたいなど遊びに行く約束をした。
シートバックポケットにタブレットを入れアニメを流したり、音楽を聴いたり、昨日の多めに作ったおやつを食べたり、休憩を挟みながら日が傾き始めた頃少し広まった場所が見えたので今日の運転は終えた。
今日の通信は、こちらの都合優先で繋げることになっている。ほとんど前日に決めた流れのまま動いているので、あまり長引かず通信を終えた。
「この辺にテントを立てましょうか!もう少し待ってくださいね!」
木々のない広場は積雪が結構ある。アルフォンス君はやっと目一杯動けるという感じに、にこにことすごい速さで雪を整えてくれた。アプリからテントを出しストーブを稼働させ、急遽トイレ用として防災トイレと海で使うポップアップテントも自宅の保管品から探し出した。お昼休憩中、大自然の空間で行う羞恥心に気絶しそうになり、運転中になんとか考案した結果だ。
「テント大きいとは思ってましたが、中も広いですね。」
「一人だったけどごろごろしたくてさー。まあ皆の寝るスペースとテーブルは並べられないけど、寝るときはテーブル片付けちゃえばいいよね。」
「十分ですよ!外でもこたつがあるとは思いませんでした!」
「電気毛布だから家のよりは弱いんだけどこたつで鍋は最高だからねー!」
ストーブも稼働させ、ポータブル電源に電気毛布の組み合わせでこたつを作ってある。今日は冬とこたつの定番、鍋にしようと材料も昨日のうちに下準備済みだ。
『ふむ。いい時に来たようだな。』
「レグルス様どうもー。もう少しで出来上がりますのでこたつへどうぞ。」




