26. アッシュとかグレージュが好き
ロバート君とアリスちゃんはリビングで遊ばせ、片付けながら立ち呑みスタイルでいただく。フェンリルとアルフォンス君はきちんとテーブルだ。
「はい、ダイヤモンドフィッシュの肝和えです。ポン酢とワサビ醤油両方用意したので試してみてください。ワサビは鼻にツンときますので気をつけてくださいねー。」
『おー!!!これは初めてだ!この鼻にくるかんじは癖になる!』
「これ私の生まれ故郷のお酒です。合うと思うのでどうぞ。」
『ふむ。これは!!!……懐かしいな。旨い。』
「……ごくっ。そんなに美味しいのですか?」
『我に二言はない。』
「ふふっ、美味しいよー!でも肝は癖があるから身だけ試してみる?ちょっと待っててね。」
アルフォンス君は初めての生魚ということで、どれか一つでも好きになってくれたら嬉しいと、一口二口の量で三種類用意した。和風に刺し身。洋風にオリーブオイルと旨味たっぷりのお高いお塩をかけ、バジルとレモンと胡椒を振る。中華風にごま油とお塩と唐辛子の輪切り、少し小口ネギとピーナッツをぱらっとかけて。作りながら私も欲しくなり多めに切り分ける。
『おい、なんだそれは。我もいただこう。』
「うわっ美味しいです!!!私はこのナッツがかかってあるのが好きです!でも魚の美味しさは醤油だけが一番わかりますね!」
「ありしゅもー!!!」
「アリスだめだよ?おとなのだもん。」
『きゃんきゃん!』
いつの間にか子供達がテーブルに寄ってきていたようだ。アリスちゃんがフェンリルの足にへばりついている。説明文には寄生虫などいないとあるけど、子供に生物は怖いというイメージはやっぱり抜けない。
「生魚は子供には怖いからねー。ごめんねー。」
『ん?何が怖いのだ?』
「生物は子供はお腹壊すかもしれなくて……。」
『あーあの小さき悪さをするやつじゃな。あの湖では浄化されて存在せん。ほれ。』
「あーん!……おいち!」
「あ、アリス!」
「あー。ははっそういえばそうですね。聖水で育っているから浄化されていて当たり前ですね。」
「そういうものなの?」
『ほれ、ロバートも食べてみよ。』
「……ぁーん。ぉいしいです。」
「すみません、肝あえ?も挑戦してみていいですか?」
「どうぞ!」
生食愛好者にとって夢のような魚を堪能し、皆で美味しいと騒いでいたが、子供達はもうそろそろ寝支度をしてお休みだ。
『白子はなかったのか?』
「そうですねー。昨日と今日のは雌みたいです。」
「性別でないものがあるんですか?」
「おっと、これはセクハラになるのかな?んーなんて言えば。」
『わはは!!!雄の精巣が白子と言い美味なのだ!はははっ!』
アルフォンス君は真っ赤になってしまった。話を変えようと明日からの食事をどうするか伺う。
『時間になれば勝手に食いに来る。用意しておけよ。』
「あ、わかりましたー。」
『そういえば、お主はどうやってここに来た?』
「へ?転移事故だと思いますけど……」
『事故?お主聖女ではないのか?ここ最近世界は安定しておるので、不思議でな。』
「えー!!!聖女じゃないですよー。」
『異界の者であろう?神の御業も有しておるし界を渡らねばなかなか授かれんぞ。』
「あーなるほどー。異界?の者が聖女って言われるのかなー。異世界出身っていうのはそうです。なんかいきなりこっちに来てびっくりしたんですよー。」
「も、申し訳ありま、せん。ま、まゆ様は、聖女様だったのですか?……その髪が……黒くはないのですが……。」
「あ、髪の毛は染めてるんだよー。でも、召喚とかされてないから聖女じゃないと思うよ。」
『それもそうだな。その身自体には御業は降りておらんようだ。使命も授かってはないようだし、神が遣わした聖女ではなさそうだな。』
動揺したのかお猪口の日本酒を一気飲みして、アルフォンス君はバタンと倒れてしまった。




