23. 雪上ハイキングは苦手
昨夜は遅くまで付き合ったので、かなり眠い。のそのそ起きだすと、転移で帰ると見送ったはずのフェンリルが、大型犬のサイズでこたつで寝ていた。
「ふぁ。おはようございます。」
「あ、おはよう!まだ寝てても大丈夫だよ?」
「いえ、まゆさんのお手伝いがしたくて。調理方法を少しでも知りたいんです。」
今回の転移ですっかり食に目覚め、国に帰ったら実家のシェフにできるだけ教えたいそうだ。少しはにかみながらも、目を輝かせて話すところに年相応を感じて微笑ましくなる。また、素人ながらそこまで気に入ってくれたことに照れがきた。
「それだったら、レシピ書いとくよ?まあ、調味料が美味しいからってのもあるから、どんな調味料かも書いとくね。」
「本当ですか?ありがとうございます!!!」
「んじゃ、とりあえずレタスちぎってもらおうかな。」
今日の朝ごはんは手抜きで、スープメーカーで簡単にかぼちゃのポタージュを作り、トーストとハムエッグ、サラダをワンプレートにする。一応気持ちだけの彩りにミニトマトだ。
「よし!……起きてー!ご飯できたよー!」
昨日はしゃぎまわって疲れてたのか、皆のそのそと寝起きは悪いようだ。
「今日はもうちょいダイヤモンドフィッシュ釣ろうと思うんだー。んで、スノーシュー試したり、移動する用のソリも試そうか!」
「そり!あしょぶ?」
「いどうもそりなんですか?」
「遊ぶやつより大きいの買ってみたんだよー。森を抜ける時は、ロバート君たちを乗せて引っ張って行こうかなって。」
「スノーシュー?は初めてなので少し緊張します。」
子供達はいつものスキーウェアに着替え、アルフォンス君も買い揃えたウェアを着てもらう。
「結構軽いですね。」
「もしも吹雪いても大丈夫だと思うよ!」
実際吹雪いたら車やテントに避難となるが、フェイスマスクとゴーグルも用意しておいた。
最初は足を持ち上げる歩き方や後ろに下がるのが難しかったようだが、やはり騎士であるので運動神経は抜群、すぐ動きに慣れていた。そりはストックもあるので手で引っ張るのではなく、犬ぞりのリードを購入し、途中から腰に巻くことにするとスムーズになった。
「そりは接地面が大きいからか少し抵抗が掛かりますね。」
「真っ平らだったらいいけど、ちょっとした凹凸に引っかかるねー。でも歩かせる以外で他が思い描かばないんだよねー。」
「きゃー!!!」「あははっ!」
「ん……?……えっ!ちょっ!!!危ない!」
いつの間にかスピカがそりを引っ張っており、ちいさな身体からは想像もつかないほどの爆速を見せ、段差を乗り越えた拍子にロバート君達が投げ出された。
「「大丈夫!?」ですか!!!」
「はーい!」
雪がふかふかであったおかげで子供達は笑い転げている。
「スピカすごいね!もう1回しよ!」
「心臓に悪いからスピード落としてほしいかな……。」
「スピカゆっくりだったらいいって!」
「移動中は木とかあるので、スピカは見張っておかないとですね。」
「車で移動できたらいいんだけどねー。」
車に避難した時のため、後部座席を倒し車中泊用のエアマットを敷き詰め、子供達が遊べるように準備した。
「これで森抜けれたらなー。」
雪上ハイキングが嫌すぎて、愛車に抱きつきながらぐだぐだしてしまう。
「……ん?森の端までか?近くまでならこれは通れるぞ?」
「え!?そうなんですか!」
「森の端にある温泉まで、我の散歩道があるのでな。たまには歩きたくなるのだよ。」
「え、レグルス様が通るってあの幅の道みたいのと同じ……?……やったーーー!!!楽になるーーー!」
「これは問題解決ですね。かなりの時間短縮になりそうなので、ちょっと報告してきます。」




