Y-10 異世界驚愕
「あれ、まゆさんから通知来てたんだ。」
寝る前にスマホを確認すると、マッチングアプリから通知が来ていた。
「山田さん、何見てんのー?……て、えーっ!?」
「おいおい、うるさいぞどーした。」
「こここここれこれ!は、はく白龍っ!!!」
まゆさんから届いた写真には、現代ではAIとしか思えない、美しい白銀の龍と壮大な景色が写っていた。
「山田さん、これ、どうしたんですか?」
「あ、知り合いからのメッセージなんだが。知ってるのか?」
「絵本でしか見たことないぜ。」
「昔絵画で見たことありますが、こんな美しくありのままな姿は初めてです。」
前に話していた、聖流という川の始まり、フォーマルハウト山脈には白龍が住んでおり、この時期白龍の息吹という雪を降らせるそうだ。それが溶け込む川には魔物が寄り付かず、また誰もその始まりの地へは辿り着けないことから伝説となっているとのこと。
麓にはフェンリルの王レグルスが住む森もあり、数百年前には人間も出入りできていたらしい。その当時の記録が少し残っていて、帝国では遺物の研究所もありまことしやかに信じられているそうだ。
「……すごいです!山田さんと出会えただけでもすごいのに、こんな綺麗な白龍様まで目にすることができるなんて!」
「こりゃ、この旅は安泰だな!」
宿の者から注意を受けるまで、皆すごいすごいと大騒ぎになっていた。明日も早い為ベッドに横たわるが、動揺してなかなか寝付けない。
ただのAI写真かと思ったが、画質など不思議と違和感はなく、またダニエル達曰く絵本で見た景色とのこと。自分自身の現状がファンタジーなので、もしかして相手もという期待と、異世界にいるという自分の冗談への悪ふざけなのではというもやもやとした気持ちが頭を占める。
よくある異世界もので、神に会ったり召喚陣を通ったり、そのようなことのない自分の異世界転移は、考えないようにしていたが帰れる要素がどこにもない。
最悪のことを考え、こちらで根を下ろすことを視野に入れて情報収集や今後の身の振り方を考えていた。またまだ未練の残る日本での繋がりがあったまゆさんへの気持ちも、区切りをつけないといけないとも考えていた為、今回のメッセージには動揺がひどい。
こちらが送った"異世界転移"の言葉に乗ってくれたのは冗談ではなかったのだろうか。
こちらに着いて送り合ったメッセージのタイミングも、お互い詳しくは書かない現状報告も、今読み返すと本当のことは書けないが、実際に異世界転移していても辻褄が合うような気がする。
また、白龍の話はしていないことに気付き、少し期待の割合がじわじわとあがってきた。
一人目を瞑りながらも、悶々と考え込んでいたが、これ以上は情報がなくまとまらない。本当に異世界にいるのかをどのように質問するか、それともそのまま流してしまうか。もしくは、日本への気持ちにケリを付け、もう返事は送らないでおくか、何も決められない。今はこれ以上は考えても仕方ないと棚あげした。日数をかけて心が落ち着いたらしっかりと考えようと決心したらやっと眠気が襲ってきた。




