22. イケオジは酒に酔う
話を聞いて、湖に来てから、徐々にびびりが鳴りを潜めていることに気付いた。振り返ると、夜更けに一人で外に出るなんてあり得ないことだ。謎の安心感があったのは、聖なる気の影響なのかと納得した。
「まゆたん、ちょと、あちょぼ。」
「あ……ぼくもまたそりあそびしたいです。いいですか?」
「じゃあ、夕方までもう少し外で遊ぼうか!」
アルフォンス君が雪かき担当をしてくれたおかげで、昨日より雪山の高さがあり子供達のテンションはかなり上がっている。
「ダイヤモンドフィッシュ美味しかったし、晩ごはんはソテーにしようかなー。」
「いいですね!まゆさんの料理は美味しいのでなんでも楽しみです!」
「まゆたん、おいち。」
「あはは!わたしは美味しくないよー!」
「アリス、まゆさんのごはんだよ。」
「まゆたん、ごあん。まゆたん…にょ?ごあん!」
『うむ。ダイヤモンドフィッシュか。ご相伴にあずかるとしよう。』
しれっと湖畔でくつろいでいたフェンリルと、仲良く遊ぶ子供達の姿に、ロバート君達の両親にも見せてあげようと思い、携帯電話で撮影を始めた。可愛い会話も撮れ、二人と一匹の戯れる心温まる動画も保存した。
ふと、次兄はカメラが大好きだったことを思い出した。少しだけ触らせてもらったこともあったし、この美しい風景を性能のいいカメラで撮っておこうと思い立つ。いつか帰れた時に、見せてあげられたらとも思う。
「500mmあればあの山脈に住む白龍も写ったりして……」
三脚で固定しレンズを向ける。夕暮れが迫り、山脈が薄紅に染まるころ、山脈と雲の合間を泳ぐ白龍がほのかに見えた。兄からはダメだしされるかもしれないが、美しい瞬間を納められたのではと思う。
体も冷えてきたので順番にお風呂へ入り、定番のアニメを観ている間に晩ごはんを作る。
ミネストローネに、マカロニグラタン。メインのダイヤモンドフィッシュのソテーに、ブロッコリーと人参のグラッセを添えた。あとはカプレーゼとガーリックパン。
この場所の安全性もわかり、今後の見通しもたってきたので、気持ちがかなり晴れやかだ。腕を振るった料理が並び、久々にお酒を飲もうと決意する。
「レグルス様はお酒って飲まれます?」
こたつでくつろぎ自然と馴染んでいるフェンリルに確認する。
『おう!酒か!!!よし!このままでは面倒だな。』
シュンッ
光が収縮したかと思うとパッと拡散し、そこには壮年男性が立っていた。フェンリルのときそのままの美しい銀髪が襟足の長いまさしくウルフカットになっており、湖に似たサファイアの瞳、ギリシャ神話で見るような服装をしていた。キリリとした眉のイケオジだ。
「……イケメンですね。」
『であろう。若いころはそれはモテたものだ。まあ今もモテるがな。』
「わんわん?」
『そうだ。女子の名前はなんだったか。』
フェンリルはアリスちゃんを腕に抱え、笑顔で尋ねている。幼子のわんわん呼びには寛容なタイプなのだろうか。
「ぁい!ありしゅ!」
『そうかそうか。晩餐はできあがっておる。いただこう。』
皆がテーブルに揃い、子供達にはジュース、大人は白ワインで乾杯だ。アルフォンス君は成人らしく、お酒がよいとワイングラスを構えている。
「「「「いただきます!」」」ましゅ!」
そこからは美味しいのオンパレードで、アリスちゃんに至っては、自作のおいちいの歌を披露してくれた。
楽しい時間はあっという間に過ぎ去り、いつの間にかワインも3本空いていた。半分夢の中の子供達は寝支度を整え、お布団へ直行し、アルフォンス君は顔色は普通だったが、少し眠そうに水を飲み部屋に戻った。
「レグルス様はまだ飲まれます?」
『いただこう!』
フェンリルに付き合い、晩酌は継続し、今日撮った写真を確認する。白龍が現れた時の連写は、一部山脈と湖が写ったベストショットがあった。フェンリルにはドヤったが、他の誰かにも見せたくなり、酔いでボヤける頭に山田さんが浮かんだ。
――――〈私〉今日は素敵な写真がとれました!伝説の白龍です!すごくなですか?山田さんに幸運がおとずれますよに!
誤字報告ありがとうございます!
最後の主人公から山田へのメッセージは、酔っ払いの文章をイメージしてます。伝わりづらくて申し訳ないです。恐れ入りますが、こちらはそのままの文章でお楽しみいただければ幸いです。
ご指摘いただけることとても嬉しく思います。今後もご示唆いただけると有難いです。




