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19. シャッターチャンスです


 数百年前、雪の降る時期は白龍の霊力を恐れ魔物が寄り付かないことから、人間が多数押し寄せ、弱小動物や魔魚を乱獲した。風光明媚なこの地が汚されフェンリルは激怒し、この時期は森との境界に結界を張りこの美しさを守っているそうだ。また、湖付近はすべての動物に殺生禁止を言い渡したとのこと。



 『我は丸のみするのでな。汚さん。』



 年月が経ち個体数も増えたので、汚さなければ捕獲して良いとのことだ。釣りあげたらバケツ内で活締めをし、魚はクーラーボックスに、血などの水はアプリで収納しておく。汚水はどこか森を出てから、捨てることにしよう。


 作りかけのサンドイッチをぱぱっと完成させ、少し遅い朝食だが皆で食べながら釣りを始めた。


 昨夜見つけた、家族でピクニックをした際使っていた、レジャーテーブルを水際から離れたところへ出す。テーブルとベンチは、一体型になっていて折りたためて持ち運びができるので準備も片付けも一瞬だ。アリスちゃんはスピカも横に座らせ食べさせている。餌は光り物が良いそうで、宝石が好きなようだが、そんな高価なものを使う気にはなれず、ビーズで代用した。アルフォンス君が抱えるようにロバート君を支え、一匹目が難なく釣れたようだ。


 それは、太陽の光を浴び黄金に輝いて見えた。


 急いで網で掬い、バケツへ入れ処理をする。アリスちゃんも釣りをしたがり、アルフォンス君が補助にまわる。



 『我も食すとしよう。スピカよ見ておれ。』



 緩やかなさざ波がたつ湖の中程に、突如として小さな竜巻が起こる。水面が持ち上がり竜巻に巻き込まれたかと思うと、ほのかに燦くものがちらりと混ざって見えた。あ、魔魚だと認識したときには、それはぽんっと打ち上がり、綺麗な放物線を描いてフェンリルの口に入った。


 パチパチパチ……


 魔法だろうか。ワイルドでいて美しい食べ方に自然と拍手がでていた。


 「すごーい!!!」

 「きゃーーーっ!ちゅごぃ!わんわん!」


 子供達も大はしゃぎで歓声をあげ、スピカも駆け回りきゃんきゃんと楽しそうだ。負けじと挑戦したくなったのか、スピカは湖に近づき四肢を踏ん張るが、水面を揺らす一陣の風が吹き抜けるに留まった。


 『くぅーん……』


 「スピカはまだあかちゃんだから、これからがんばろうね」


 「ちゅぴか、あかちゃん。よちよち。」


 その後、雪合戦をしたり、おやつを食べたり、皆で順番に5匹は釣り、次が最後にしようとアルフォンス君が釣り竿を振った。


 「……おっと、もう掛かったみたいです。網お願いします。」


 「はーい!」


 「あれ、今回は色が違うみたいですね。」 


 「え?みたいです!なにいろですか?」


 色違いはなんだかラッキーだと思いながら、慣れた流れで網を岸部に寄せ、すくった瞬間それは起こった。




 ドゴォーーーーン!!!!!!!




 網を破壊して白銀に輝く巨大な壁がそそり立った。



 いや、龍だ。



 空高く舞い上がり、広大な空を悠然と泳いでいる。



 すごい風圧と水飛沫を感じ転げたが、他の皆も腰が抜けて放心状態のようだ。だが、フェンリルとアリスちゃんは我関せずとおやつを頬張っている。



 「…………あれは」


 『白龍だな。久々に会ったが、たまにこの湖へ遊びに来るのだ。』



 白龍との言葉に、驚きとともに現代っ子の力が働いたのか携帯電話を取り出していた。


 優美な姿を連写で納め、この世のものとは思えない景色を目に焼き付けていると、白龍は泰然自若の様子で山脈の方へと去っていった。


 辺りには、跡形もなく壊れた網と、ひっくり返ったバケツが散乱して、アリスちゃん以外はびしょ濡れだ。



 「片付けたらお風呂入っちゃおうか。」


 『ん?濡れたのか。ほれ。』


 「「うわー!「ありがとうございます!!!」」」



 一瞬で乾かしてくれ、皆で盛大に感謝申し上げた。

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