表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/101

18. ダイヤモンドフィッシュは美味

 庭先、湖のみぎわにはあの日の荘厳な生き物がくつろいでいた。

 

 

 

 「フェンリル……!」


 「おっきぃ!わんわん!」


 指差すアリスちゃんの手をそっとおろすロバート君も、皆開いた口が塞がらないという表情だ。


 

 『なんだか人間が増えたな……繁殖するのはそんなに早かったか?』


 「……はっ、我々は転移事故により、一昨日こちらへと参りました。私、アルフォンス・ヴェーザーと申します。恐れ多いことでございますが、貴方様はフェンリルの王レグルス様でございましょうか?」


 『うむ。その名は久しいな。昔そのように呼ばれたこともあったな。』


 「やはり……!我々、森を抜けるため移動を検討しております。再三にわたり失礼いたしますが、お尋ねさせていただきたく……この白龍の息吹が舞う頃、森との境界はどのようにしたら抜けられますでしょうか?。」


 『ん?……あぁ、あれは我が結界を張っておる。この時期人間がうろちょろとうざったくてな。出る分にはなにもない。』


 「ご回答感謝申し上げます。」



 膝をつき(こうべ)を垂れ丁寧に対応しているアルフォンス君の横、同じように膝をついていたが、アリスちゃんが突進しようとするのを止めるのに忙しく、話が入ってこない。



 『うん?……おう、ほれ、そこのちっこい男の子(おのこ)、少しこちらへ来い。』


 「はいっ!」



 ロバート君が呼ばれ、少し前へ出る。アリスちゃんの抵抗が激しくなるが、抱きしめながらはらはらと見守っていると、フェンリルのお腹の下から何かが飛び出してきた。


 

 『きゃんきゃんっ!』


 『ふむ、やはり相性がよさそうだな。おぬし、こやつの面倒をみよ。』


 「このこのめんどうですか?」



 フェンリルを小さく小さくした可愛らしい子犬が、ロバート君の顔を嘗め回している。



 『そうだな……たしか主従契約だったか?それをしておけ。おぬしの一生が終わるころには、こやつも成獣になるだろうから、あとは適当に放っておけばよい。』


 「しゅじゅうけいやく……このこのおなまえは、なんていいますか?」


 『あー、そやつは育児放棄されておってな、産まれたばかりで名はない。おぬしがつけよ。』


 「え、はい。えっと……えっと……うーん、スピカ!スピカにするね!」


 『きゃんっ!』



 返事をするように子犬が鳴いた瞬間、一人と一匹は光り輝いた。



 『よし、これで肩の荷が下りたわ。我は子育てなど面倒でな、丁度よいところにおった。』


 「ぼく、がんばります!」


 『適当でよい。なんでも食べるが食べんくても勝手に育つのでな。念話は早う覚えてほしいが、まあよく話かけてやれ。』


 「わかりました!」



 その後、アリスちゃんを交えて水辺で追いかけっこを始めた。アルフォンス君は主従契約の時には、驚愕で顔面が崩壊しかけていたが、今は微笑んで子供達を眺めている。



 「あ、もしかしてあれがダイヤモンドフィッシュ…?」


 「はい、あれですね。」


 「アリス、スピカ、あのさかながダイヤモンドフィッシュっていうんだよ」


 「おいちぃ」


 アリスちゃんは、ちゃっかりアルフォンス君の話を覚えていたようだ。食いしん坊の真髄に触れた気がした。


 『うむあれは美味であるな。』


 「あの、あの魚って捕ってもいいですか?……あ、でも、たしか殺生禁止でしたっけ。」



 ロバート君とフェンリルのやりとりで、なにか親近感が沸き、あれほど畏怖していたのに気軽に話しかけてしまう。しかし、さきほどまで釣りをする気満々であったが、殺生禁止のことをはっと思い出した。




 『あぁ、食って構わんぞ。』

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ