17. けんかしてもなかよし
今日の朝ごはんはサンドイッチだ。
たくさん寝て元気いっぱいの2人に手伝ってもらいながら、一緒にいろいろな具材を挟んでいく。
「りょうりするのはじめてです!」
「おぃちぃ」
ロバート君は丁寧に具材を並べ、アリスちゃんは安定の食いしん坊だ。
「アリス、つまみぐいはダメだよ。」
「やっ!!!ちゃべるっ!!!」
「だめ!」
「ぃやーーー!!!!ぅ、ぅあ゛ぁーーー――!!!!!」
「ぅ、ぅ、だめ……なんだよ…………。ひっく。」
アリスちゃんが泣き出し、お兄ちゃんもつられて涙が溢れてきた。ずっとにこにこしていたので、やっと泣いてるところを見てなんだか安心した。知ってる大人がいないところでずっと緊張していたのだろう。
「そだねー。つまみ食いは勝手にしちゃだめだね。ロバート君が教えてくれたから、アリスちゃんはこれから覚えていけるね。」
2人を抱きしめながら背中をぽんぽんとたたく。人の温もりで心が落ち着いてくれるといいが、ここはたくさん泣いてリフレッシュもしてほしいと悩む。
「おはようございます。大丈夫ですか?」
「やっと2人とも泣けたので少し安心してます。」
「泣かずに頑張っていたんですね。」
アルフォンス君は下に兄弟がいるのか、慣れた感じでロバート君の頭をよしよしと撫でひょいと抱き上げた。
「少し散歩しようか。」
「……ぅん。」
2人が外の空気を吸いに出たあと、アリスちゃんはぐずりながら少し落ち着いてきた。
「……にいちゃ?……にいちゃ、にいちゃー!ぅあ゛ーーーーー!!!!」
しかし、ロバート君がいないことに気づくと、また涙が再発した。
「ロバート君はお外に行ったから迎えに行ってあげようか」
泣き叫ぶアリスちゃんを抱え玄関に向かうと、ちょうど2人が戻ってくるところだったようだ。
「まゆさん!みずうみにダイヤモンドフィッシュがいました!つりのどうぐとか……えっと……つりはできますか!?」
ロバート君は走ってきたのか、頬を紅潮させながら興奮気味に質問してきた。泣き顔は笑顔に変わり、気持ちも入れ替わっているようで安心した。
「にいちゃ、にいちゃ、だっこ!」
アリスちゃんはロバート君を見つけると、一生懸命手を伸ばし泣きながら抱っこをせがむ。ロバート君は苦笑いしながらもアリスちゃんを受け止める。
「アリス、わがままはめっ!だよ?」
「ぁい!」
まだ目尻に涙は残るが、満面の笑みでいつもの元気のいい返事が玄関に響いた。
「それでダイヤモンドフィッシュって何ですか?」
「魔魚の一種なんですが、凶暴性はなく攻撃力もない穏やかで希少な魚です。名前の通り、鱗がダイヤモンドでできてるんですよ。こちらの湖にはイエローダイヤの魔魚がいるみたいですね。」
後ろから戻っていたアルフォンス君が詳しく教えてくれた。
「ほら、みて?アリスのかみのいろとおなじだよ?このうろこが、みずうみのちかくにおちていたんだ。」
ロバート君はアリスちゃんに金に輝く百円玉サイズの宝石を見せてあげている。
「ダイヤモンドフィッシュの鱗はもちろん目玉も高価で、その身は頬が落ちるほど美味いらしいのです。なので、よかったら皆で釣りをしてみませんか?道具はまゆさん頼りになってしまうのですが……」
「うわー!釣りいいですね!昔やっていたので道具ありますよ!」
上着を羽織り皆で湖へ向かう。
『なんだまだいたのか。』




