Y-4 異世界事情
「いやいやいや!俺、男だよ?」
「だよねー。」
「へんなのー。」
「せいじょじゃないならなにもの?」
ちびっ子達のテンションについていけない。幼児から小学生くらいの総勢9人、異世界の定番耳や尻尾の生えた子もいるようだ。一番体が大きく年長に見える、先ほどの男の子がリーダーなのだろうかちびっ子達を叱る。
「おい!まだ怪しいやつに近づくな!」
「いや、まあ、知らないおじさんだしね。あ、そうだ。ケガしてる子とかいないかー?」
「ここいたーい。」
「血でた。」
「あ、リリおでこ血がでてるよ。大丈夫?」
一気に話しかけられ右往左往する。
「……はぁ、……まったく。ロンどこ痛いんだ?……あぁなんだたんこぶなってるからほっとけ。ジョンは腕切ったのか、そこの川で一旦洗っとけ。リリはおでこが少し切れてるな、痕に残らなければいいけど痛くないか?」
ちびっ子リーダーがテキパキと皆の確認を取り、けが人を分けていた。
「あんた、治せんの?」
「いや、治せないけど簡単な手当はできるから。ちょっと待ってて。」
アプリで救急箱を取り出す。あとミネラルウォーターのペットボトルを出し、ケガを洗っていく。傷口のあとが残りずらい、湿潤療法で有名なパッドを貼っていく。
「あとは、様子見かな。ところで、何があってここに来たかわかるか?」
「……あいつっ!……くそ野郎が俺たちを売りやがったんだ。」
詳しく聞くと、前の孤児院の院長が亡くなり、新しく居座った奴が好き放題に贅沢三昧する中、金策のため子供たちを奴隷商に売ったようだ。
「せいおうこくに売るっていってた!」
「まじゅうがでたの!」
「あいつらおれたちをおとりにしたんだ!」
興奮したのかまた皆一斉に話しだした。奴隷商は国境の山間で獣人の子たちを追加で乗せ、聖王国に向かう途中で魔獣に襲われたようだ。横転したこの荷馬車は放置し、他の馬車と馭者は馬に乗って逃げたそうだ。そして、光が見えたと思ったら、この川辺に現れたらしい。
「そうか……。みんな頑張ったんだな。とりあえず飯!って言いたいけど、……まずは風呂入るか!」
もう薄暗くなってきていて、このまま放っておくことはできないとアプリで家を呼び出す。結婚当初、2人は子供が欲しいなと将来を話し合い購入した3LDKのマンション。今は1人なので荷物を片付ければ、子供9人余裕で入るだろう。
自己紹介をして皆の名前と年齢を確認しながら、ちびっ子達の服を購入しておく。好みがわからないので、一旦は皆同じスウェットとズボンだ。
「あー、女の子は別で入ろうか。お風呂の使い方教えるからちょっと一緒に来てくれ。」
「はい!」
と女の子で一番年長のキャロが元気に返事をくれた。猫の獣人で9才だそうだ。
「体のあらいかたわかるよ?」
「だよねー。」
と得意げに言う二人はミミとリリといい、6才と5才の孤児院の子たち。
「えらいな!まあ初めての物もあるかもしれないから、とりあえず流れを聞いてくれな。」
ズボンの裾を折り曲げ、腕まくりして年少の子達を洗っていく。サンとダニーは5才と3才の孤児院の子たちだ。ロンは犬の獣人で4才、耳と尻尾はシャンプーでいいのか悩んだが酷いことにらならないだろうと同じもので一緒に洗う。終わった子から順にお湯に浸からせていく。
「俺達は後で入るから先にキャロ達入りな?」
女の子3人にお風呂を譲り、年長の男子はちびっ子達の着替えの手伝いをしてくれた。
ドライヤーで乾かしながら夜ご飯を考える。皆痩せているようだが、腹水は溜まっていないようだし、そこまで神経質に考えなくてもいいだろう。一番の年長であるアレックスにいろいろ聞いてみよう。
「そういえばご飯とか食べれていたのか?」
「一応パンはもらえた。」
「そかそか。」
「あのさ、おっさんって聖女のまつえいってやつか?」