10. ちいさな出会い
テントや車を片付け、家に引きこもる準備をした。テントを畳むのは少し面倒くさいと思っていると、設営の状態でそのまま収納できるようだった。
建物内の荷物は、家族でもプライベートにかかわるので、各部屋でフォルダ分けを行い、家具など全て片付けることにした。一階リビングやダイニングキッチンは共有物しかないのでそのまま使わせてもらおう。
和室があるのだが、リビングには大きな掃き出し窓がある。景色を眺めながらこたつに入るのは至福だろうと、ソファは壁に寄せ、窓側へこたつを設置する。冷凍庫から雪見の大福さんを出せば完璧である。
「はぁ……次はいつ会えるのかな。」
喉元過ぎればである。
あれほど怖気ついていたのに、話せる相手であるということが、頭を占める。ここはどこなのか。帰れるのか。どうせ直接応対したら委縮して頭が空回るのはわかっているので、携帯電話のメモ機能にまとめておく。
ぐぅ~
「よし!ラーメン食べよう!」
先ほどの緊張と建物内の安心感との緩急に、質問文のまとめに頭を使ったからか、お腹が盛大に主張してくる。今すぐ食べたいと自分で作る気は起きず、北海道旅行した際に食べた、雪国の有名な味噌ラーメンをアプリで選択する。
”容器がありません”
コンビニの菓子パンと違い、他の飲食物は入れ物がいるようだ。キッチンで再度挑戦する。ラーメン鉢を出し、アプリで選択する。
シュンッ
と音というか空気の振動を感じ、鉢の中にほかほかと湯気の立つラーメンが登場していた。踊りたくなるのを抑えながらこたつへ運び、雪景色を眺めながら麺を啜る。
「……しあわせ」
普段汁は残してしまうが、今日は一滴残らずお腹に納めた。朝のミニポットと食器を洗い、お茶を入れてこたつへ戻る。
ふと目が覚めた。
いきなりの糖分と塩分による血糖値スパイクだろうか、食後にこたつの温かさが作用して、いつの間にか寝ていたようだ。夕暮れのようで室内は薄暗くなっている。
「いろんな意味で怖い……」
今回で思い知ったびびりの本性と、元々のホラー系を苦手としている性格から、家中の電気をすべてつけてまわった。
「電気代は引き落としかな……?」
今日一日で銀行残高がどう変わるかチェックしなくては、と考えながらリビングに戻ると、外はすっかり暗くなっていた。カーテンを閉めなくてはと思い窓の端に目をやると、
「……ひぃ………………」
なにかが窓に張り付いていた。
トントントン……
見えてはいけないものが見えたのかと顔を背け震えていたが、ノック音が不思議に感じ、もう一度ちらりと目線を向けた。
子供だ。きちんと色付きの服を着ていて、足もある。
急いで駆けつけ掃き出し窓を開けた。外は先ほどから雪が振り始めていた。
「大丈夫?とりあえず中に入って?」
靴を脱ぐのを手伝い、ソファに投げ出されていたタオルケットで二人まとめて包み、こたつに入れる。
「少し待っててね。」
姪と甥の子供用のコップにホットココアを入れ、熱くなり過ぎないように牛乳とお湯で割りこたつに戻る。
「ゆっくり飲んでね。」
第一村人?発見であるが、意思疎通はうまくできるだろうか。小さな女児はまだ二語文を話すようになったくらいに見えるし、男児はまだ年中から年長さんに見える。
「親御さんは近くにいるの?ここへはどうやって来たかわかる?」
「……わかりません。ちちうえとははうえと出かけていたらぼくたちだけ森にいました。」
「……おいちぃ」




