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63. モツが取り持つご縁



 「登録は干ししいたけと干し柿の作り方、ほかにもありますか?」


 「渋抜きの方法も登録しようかな。さくさくの今が旬の生のも食べたいよね!」


 「え!!!あの渋さが抜けるんですか?」


 

 この地方の子供は誰しもが渋柿にチャレンジしてしまうらしく、ゲルダももちろんあの渋さを経験しているそうだ。



 「難しいことはわからないけど、渋抜きって言うけど渋さの元になるタンニンを抜き取るわけじゃなくて、感じなくなるだけらしいよー。」



 ヘタの部分をアルコールに漬けたあと密封すると一週間ほどで甘く食べられると説明する。干し柿も同じでタンニンはなくなるわけじゃなく、変質しているだけなのだと昔聞いた話だ。そうこうするうちにギルドへ到着した。



 「まだまだ登録するものがでてきそうなので、用紙は多めに頂いてきますね。こちらでお待ちください。」



 ギルド内の待合場所だろうか、入ってすぐのカフェスペースのような場所でゲルダと待つ。



 「まゆ様、お昼はどうしますか?何か気になるものなどありました?」

 

 「たくさんありすぎて屋台はまだきちんと見れなかったんだよね。ただ、砦で頂いた煮込みがほんっと美味しかったからなー。ここらの郷土料理って聞くしほかの煮込みも食べてみたいかも。」


 「でしたら、私のおすすめの店があります!屋台ではなく庶民向けの食堂になりますが、日々創意工夫していてとても美味しいのです!」



 地元に戻ってすぐ通うほどにお気に入りのお店らしく、最近はこの辺りでは見ないモツの煮込みが評判らしい。



 「モツ煮込みかー。……おなか空いてきたね。」


 「お待たせいたしました。」



 思っていたよりも早くアルフォンス君が戻ってきたので、ゲルダおすすめのお店でお昼にしようと提案する。アルフォンス君に否やはないらしく、ゲルダの先導でお腹が鳴らないよう急いでお店へ直行だ。



 「結構並んでるねー。」


 「関係者席があるので空いてるか確認してきます!」


 「え、なんかVIPみたい。そんな簡単に融通してもらっていいのかな?」


 セレブのような対応に憧れもありつつ、予約もしていないのに並んでいる人に悪い気がして気が引ける。

 

 「私達騎士は休憩時間も限られまして、結構融通していただくことが多いのです。また大きめの店舗は、街の有力者はもちろん、店の経営者の友人知人なども使える席を用意するところは多いので、民も慣れております。気に病むことはありませんよ。」


 「そうなんだー。それが普通なら気にしないようにするね。」



 関係者席は空いていたようで、並ぶ人を横目に店内へ案内される。ぺこぺことお辞儀をして通り過ぎたくなったが、海外では変に見られると聞いていたので、異世界でも同じかもしれないと、一度だけ近くにいた人達へ頭を軽く下げてからドアくぐった。



 「ようこそ!いらしゃいませ!」


 店主だろう中年のおじさんとおばさんににこやかに迎え入れられ席へ案内される。おじさんの方はメニューを一通り説明したあと、ゲルダの肩をたたき厨房や接客へ戻っていった。



 「どれも美味しそうで悩むけど、やっぱりもう口がモツ煮込みかな。」


 「はは!ぜひご賞味ください!最近移住してきた獣人ハンターに毎日卸してもらってまして、鮮度と味には自信があります!」



 ここでも出てきた獣人の話に、最近は頻繁に移住が行われているのかと訝しむが、おばさんは意気揚々と解説してくれるので一旦そちらに耳を傾ける。



 「こちらのモツ煮込みも、その者たちの故郷のお祝い料理を元にこちらで入手できるものを掛け合わせ生み出したんです。」


 「そうなんですかー。あちらでは何を使われていたんですか?」


 「それがですね!聖女様の愛されるミソで煮込むそうなんですよ!帝国ではあまり手に入らないので同じ物はどうしてもできなくて……。」



 おしゃべり好きなおばさんの止まらない口と話す内容に驚きながら聞き役になっていると、いつの間に注文が通っていたのか目の前には料理が揃っていた。


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