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61. きのこの子


 「まゆ様、本日は市場へのご案内もできますが、外出されますか?」


 「市場かー!いいね!……ただ、昨日の件が気になるからお時間取ってもらえるか確認できるかな?」


 「では、伯爵様のご都合を確認いたします。そちらが分かり次第、空いている時間で市場に向かいましょうか。」





 アルフォンス君は通信機でやり取りをしすぐ報告をくれた。

 

 「午後に伯爵様との時間が取れることになりました。市場はお昼前に回りますか?まゆ様はこの地方の料理にも関心がおありでしたので、昼食を屋台や店舗でお召しになるのもおすすめです。」


 「屋台かー。どんなお店があるんだろう。そうだね!午前中に行ってみよう!市場の案内お願いしていいかな?」


 「私にお任せください!」


 ゲルダが元気いっぱいに宣言してくれ先陣を切る勢いで玄関に向かおうとするのを慌ててとめる。


 「待って待って!服着替えたいからちょっと待って!」



 部屋着のパーカーからシャツとセーターの重ね着に変更する。以前アルフォンス君にこちらの服装を聞いた際、パーカーのフードはこちらでは見たことがないと聞いていた。あまり極端に目立つのは嫌なので着替えたかったのだ。


 



 「よし!出掛けよう!」


 頂いたアイテムバックはかなり高価な高性能なものとすぐわかるそうなので、帆布の肩掛け鞄に入れカモフラージュしている。


 到着時とは違い城内を通らず敷地を抜け、正門とは別の門を通るようだ。明るく声をかけてくれた門衛に挨拶をし門を抜ける。


 「馬車を用意しようかと思ったのですが、街歩きにもご興味ありそうでしたので、こちら市街に近い門からご案内します。」


 「ありがとう!本当気が利くねー。なんだかアルフォンス君は秘書みたいだね。」


 アルフォンス君は今回の転移では自身に新たな発見が多いと語ってくれた。以前は規律や規則を守ることを当たり前とし、周りから生真面目や融通が利かない頭でっかちと揶揄されてきたので、細かく決まったことしかできないのだと思っていたそうだ。


 「驚くこと多かったもんねー。強制的に臨機応変が見に付いたのかも。」


 自身も驚く存在であることに気づかず、レグルスの森からの脱出や移動の話などゲルダへ面白おかしく話した。街の造りや話題の料理などに話は移る頃、歩道の人も多くなり朗らかな声が響く賑やかな一角にたどり着いた。




 「すごーい!こんなにあると全部見きれないかも。」



 その一角は歩行者天国のようで馬車の立ち入りは禁止され、歩道の部分に露天が並び、車道には人が多く行き交っていた。市場の始まりだろうか境には兵士が常駐しているようだ。


 人混みを分けるようにゲルダが先導し、アルフォンス君が横に位置し気をかけてくれる。有難く思いながらも、掛け声が多く飛び交う中を気になるところへ、あっちへ行こうこっちも見たいと連れまわした。




 「あ、あそこはキノコかな?」


 「珍しいですね。鑑定の魔導具は高価なので、あのような小さな子たちだけなのは少し怪しいです。」


 キノコ類はマッシュポルームなど希少種以外は食用のものを見分けるのが難しく、ほとんどが魔導具を用いた高級店のみが扱う商品と化してるそうだ。


 「私には携帯もあるし、ちょっと覗いてみよう!」


 台も設置したしっかりした露天と露天の間に、ゴザを広げただけの小さなお店は見逃してしまいそうなほど存在感がない。


 手作りだろう少し不格好な笊に種類ごと丁寧に分けられ、ぱっと見た感じは食べられそうな物ばかりだ。


 「こんにちは。おすすめのキノコはある?」


 「あ……!こんにちは!!!はい!全部です!」


 小学校高学年ほどの獣人の子供が三人並び、六年生ほどだろうか年長の少女が元気よく返事をくれた。


 「全部かー。きのこは難しいって聞くけどここにあるのは大丈夫?」


 「……ぇ、はい。私なんとなく分かるんです。」


 この子たちは自治区から最近この辺境へ移り住んだ獣人一家らしく、親は魔物の討伐や狩猟を生業としているが食べ盛りの子供たちには満足いくほどの収入はなく、冬支度も大変な中何かしたいと近くの森できのこの採取を始めたそうだ。


 「子供達だけで森に入ってるの?危なくない?」


 「大丈夫だぜー。慣れてるしー。」

 

 自治区に住んでた際も魔の森の浅瀬に出入りしており、森での歩き方、逃げ方、採取方法など親から教わっていたようだ。年長の少女はたくさん採取しているうちに、危ないものと大丈夫なものがだんだんと分かるようになってきて、家でも美味しく食べているものをここに並べているとのこと。


 「そうなんだー。じゃあ星属性があるのかもね。家でも食べているものだったら安心だし何か買おうかな。」


 「ありがとうございます!!!」


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