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銭と神具は使いよう 〜 元WEB屋は魔法陣を解析して異世界を知る 〜  作者: 冬寂
過去を清算するために ‐ スフォルツァ辺境伯領

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終わりが見える課題の解決と目につくソフィア教会の爪痕

防衛線に必要な魔道具を城に届けてしまえばミッション完了です。

「幽霊馬車」試走の翌日には、コルソ・マルケ砦の魔道具工房で生産された伝言の魔道具(メッセンジャー) を始めとした魔道具の最初の生産分が出来上がってきた。いわゆる「初期ロット」である。


 スフォルツァ城の防戦を支える魔道具として用意するのは、伏兵が隠遁(ステルス)して接敵するための【隠ぺい】と【認識阻害】、敵を無力化するための【睡眠】、そして負傷者の回復のための【治癒】の魔道具、加えて伏兵も含めた戦場全体の連携を図るための伝言の魔道具(メッセンジャー)

 これら全部をコルソ・マルケ砦で生産できることが、新たなスフォルツァの強みとなる。

 特に【治癒】の魔道具そのものが希少であるし、希少を通り越して他領・他国では入手が不可能な闇属性の魔石を使う魔道具を豊富に用意できる軍勢など他にはないだろう。


 夕方まで待つとスフォルツァ城の防衛戦に必要な最低限の数の魔道具が出来上がってきたので、それをジャンフランコの「幽霊馬車」に積み込む。


 夕刻から出発しても夜にはスフォルツァ城に届く。

 馬車であれば二日は必要な路程を二十分の一以下に短縮できた計算になる。

 翌日には予備分の生産も完了するので、それもまたジャンフランコが幽霊馬車で運ぶ予定だ。


 最終的に四日遅延を一日遅延まで短縮することを可能にしたのはジャンフランコの幽霊馬車である。

 当初計画からの一日遅延であれば、スフォルツァ城の防衛線に向けた準備作業全体からすると許容範囲に収まる。これでスフォルツァ城の防戦準備はほぼ終了したことになる。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 ジャンフランコの次のミッションは、【中継局】に最適な拠点探しである。

 安定した通信を行うためには、コルソ・マルケ砦とスフォルツァ城との間に二箇所ほどを見つけなければならない。


 砦と城の間は通常の馬車であればどんなに頑張っても片道二日の行程であるが、幽霊馬車であれば、一日に九ないし十往復ほどできる距離である。


 ちなみに、この候補地探しは、他勢力の手に落ちていた旧スフォルツァ領について、地形などの情報収集を兼ねている。

 ジャンフランコが同乗し神測(デジタイズ)を起動させておけば勝手に測量と情報収集を行ってくれるので、そのための人員を割く必要もない。

 最終的には紙の地図に落とし込むのだが、政変で喪ってから十年以上経った今現在の姿を把握するのはスフォルツァの誰にとっても初めてとなる。


 城と砦を結ぶ直線からスタートして、少しずつルートをずらしてマッピングしていくことを繰り返していく。線が重なり面になる。退屈なようでいてなかなかに楽しい作業である。


 そこかしこにかつて農村であったと思われる廃墟が点在するのは過去の地図で分かっていたが、これから向かうのはそのうちの一つ。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


【中継局】を設置する候補地の一つである農村跡に立ち寄ってみる。


 政変から十年以上。

 この農村は、おそらくはその間何度もコルソ・マルケ砦に攻め込む共和国軍の蹂躙を受けたであろう場所だ。


 農地は略奪され踏み荒らされ、既に農地であった痕跡を見つけることすら難しい状態だし、住む者は兵として駆り出されるか、逃げ出したか殺されたか、家々も静かに朽ちはじめ、壊れた家財があちこちに転がるような状態で、人が生活していた痕跡を辛うじて残している程度。


 近くを川が流れていることから、共和国なのかスフォルツァなのか、この地に陣を設けて拠点としたような痕跡も残っており、もう戦地とならないと分かれば、いずれは人が戻ってきて生活を始めることも期待できそうな土地ではある。


 農村跡を回っていて、おそらく教会の跡地だと思しき廃墟を見つけた。

 こころなしかほかの場所と比べても破損の度合いが酷い


 この廃墟は経年劣化や戦乱の巻き添えを食ったというだけでは説明できないくらい傷んでいる。徹底的に壁が壊され、放火の痕跡まである。

 ソフィア教会のシンボルである、内側に二つの半円を繋いだ円を瓦礫の中に見つけなければ元教会とは分からなかったほどだ。


 敷地内に踏み込んでみる。

 足元でジャリジャリと石や瓦礫が音を立てる。

 地下室への入口らしきものを見つけて足を踏み入れてみる。

 半ば崩れかけの階段を下りていくと、想像以上に広い地下室が広がる。いくつもの壁で仕切られ、そのうちのいくつかには鉄格子らしきものまで残っている。

『教会の地下に牢が並ぶっていうのは想定してなかったな』


 それぞれの房の中には何やら悍ましい形の道具が残っている。多少は崩れているものの、奇妙な形の理由はそれだけではなさそうだ。この建物だけ極端に傷みが酷い理由は推して知るべし、である。

「村を復興させるにしても、ここは復旧させたくありませんね」

 傍らで囁くフレデリカがジャンフランコの想いを代弁している。

「ソフィア教会と言えば異端審問がセットだからね。彼らが活発に活動するのはリモーネ限定かと思ってたけれど、政変前のミルトンでも同じような活動をしていたわけか。犯罪行為の証拠として残すというのも一案だけれど、正直に言って悪趣味だね。綺麗さっぱり作り直そう」


 地下室から出たジャンフランコは地面の下から始めて完全に別の建物として作り直す。地上にも二階建て程度の建屋を作り、その上に塔のような構造物を載せる。


 スフォルツァ城の防戦が成れば、この地の安全は保証されたと見なされるだろう。いずれこの地にも村民が戻って来るなら、シンボルになる建物があっても良いのではないか、そう思ったジャンフランコの考えが形になった建物でもあった。


 一旦はここを離れるので、念のために【隠ぺい】と【認識阻害】、【結界】の魔道具を置いておく。ジャンフランコの手によって魔力効率が高められて1か月程度なら魔石の魔力だけでも放置して置ける特別製である。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 探索の最中も、メディギーニ商会を通じたアポ依頼はコルソ・マルケ砦に届いていて、次の王女との対面に備えて一旦スフォルツァ邸に戻る。


 レイチェル王女との対面はスフォルツァに戻った翌日にセットされていた。

 話題は前回に引き続き商いに関することか、と身構えていたが、ジャンフランコの近況についてであった。

「ジャンフランコ様、ご予定を神学校に問い合わせてもご不在とのお答えしか返ってこないのです。なかなかお顔を見せていただけないのは学業でお忙しいからではないのですか」

「レイチェルは先日の王と王妃がいらっしゃった会席の場にご同席されていたので我が家の一大事が迫っていることはご存知でしょう?」

「ええ。ですが、陛下からのご助力の申し出をお断りされていたのでいらっしゃいましたでしょう?学び舎(まなびや)にいらっしゃるはずのジャンフランコ様がお手を煩わされるほど大変なのでしょうか」

「スフォルツァは家を上げて準備を進めております。僕とてスフォルツァの者です。さすがに戦場(いくさば)に立つことはありませんが、何もしないことが許される身ではありません」

 普通に考えれば自家の正念場にノンビリ遊んでいられる貴族などいないはずであるのだが、王女には貴族の常識もないのだろうか。


「僕も微力ながら後方支援に奔走しているのです」

「後方支援とは何をされることを指すのですか?」

「レイチェルは(いくさ)についてどれくらいご存じでしょうか?(いくさ)とは敵も味方も大勢の人が動くものです。大勢の人が動くには大量の食糧が必要になります。僕は城を支える人員のための食糧を調達し、城に運ぶように手配する仕事をしているのです」

「食糧…ですか。お金だけ払って商人に任せるのではだめなのですか?」

「お忘れかもしれませんが、僕も商人ですよ。あちこちを駆け回って食糧をはじめ様々な物資を掻き集めているのですよ」


 これは半ば本当で半ば嘘である。ジャンフランコがスフォルツァ城を支えるための食糧調達を手掛けているのは本当だが、食糧調達と運搬は既にメディギーニ商会の定常業務(ロジスティクス)に組み込まれていて、いちいちジャンフランコが手を出さなくても回っているからだ。


 いずれにせよリモーネ王室がメディギーニ商会の活動についての情報を集められるはずもない。食糧調達や物資の輸送の場に直接メディギーニ商会が顔を出すわけでもなく、その活動は別の商会の名義で行われ、巧妙に隠されているからだ。

せっかく徹底的に破壊されたので、スフォルツァ辺境伯領の復興にはソフィア教会は含まれません。


今回の新要素:

・ 特になし


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初めての作品投稿です。


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