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銭と神具は使いよう 〜 元WEB屋は魔法陣を解析して異世界を知る 〜  作者: 冬寂
過去を清算するために ‐ スフォルツァ辺境伯領

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一人R&D工房で過ごす時間

短いですが日常回です。

 ここはスフォルツァ邸内に設置された、ジャンフランコにとって最初の工房。


 このところ、自宅であるスフォルツァ邸ではジャンフランコが一番長い時間を過ごす場所である。


 この工房には本邸と同じく太陽光を魔力に変換して魔道具に供給する機構が設けられていて、さまざまな魔道具のおかげで快適に過ごせる場所になっていることが一つ。さらに、壁材には【防諜】や【防音】、【防御力強化】といった【魔法陣】が仕込まれ、安心して『禁書』を紐解ける場所に変わっていることが大きい。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 そんな快適な魔道具工房にいながら、今日のジャンフランコは苛立ちを隠せない。


 魔道具の試作が思い通りにいかず、何をやっても期待した性能を出さずに袋小路に入ってしまっているのだ。


 ジャンフランコが現在取り組んでいるのは樹木から魔力を引き出す魔道具。

 太陽光の当たらない場所でも魔道具を設置して動かすための魔力を入手するための仕掛け。屋根のある建物がない場所にも魔道具を恒常的に動かすためには、太陽光以外から魔力を生み出す別の仕掛けが必要で、その実現方法の一つとして樹木の中を流れる魔力に注目したわけだ。


 ただいま直面している問題はこれ。樹木の根を一本神測(デジタイズ)権能(けんのう)で変質させて、そこから魔力を取り出すことを試みるのだが、すぐに取り出される魔力が細り、最後は根が付け根から枯れてしまう現象に悩まされている。


 解決方法を探るために様々に条件を変えて試す。半ばヤケクソ気味に引き出した魔力をそのまま樹木に戻した時に、初めて流れる魔力が変わらず根の枯死も発生しなかった。


『ここを起点に一つずつ条件を変えて試していけば最適解が見えてきそうだ』

 最初に、(かね)属性の魔力だけを取り出して、残りの魔力を樹木に返すと、樹木から引き出せる魔力量は減らず、むしろ僅かに増えた。


 そこから取り出す魔力・戻す魔力の組み合わせを様々変えていき、最後にたどり着いたのが火属性の魔力を半分程度、(かね)属性の魔力を全量引き出して残りをすべて戻す、という組合せで引き出せる魔力量が最大となった。樹木から引き出せる魔力量が元の2割増し程度まで増えるのだから、効果は期待以上だ。樹木にとって不要な魔力を抜いてやることで樹木が「喜ぶ」のだろうか?

 微量であれば光や闇などの属性魔力を引き出しても魔力量は減らない。


 【相性(そうせい)】【相克(そうこく)】から考えても、火属性は木属性によって力を増し、(かね)属性は木属性を損なう属性であるので、その二つを抜くと樹木にとって「嬉しい」状態が生じるというのはある意味納得感がある。


『よ~し、これで何日か様子見した上で試作品に落とし込もう』


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 具体的な魔道具の開発をしていない時でも、魔道具工房に籠る時間は楽しい。

 新しい魔道具の構想を練るとき、試作品を作るとき、一人きりで籠って「神々への道標」のページを繰りながら、最適な権能(けんのう)を探す。


「神々への道標」 は「幻の書庫」に秘匿されていた『禁書』の一冊で、各ページには神々の権能(けんのう)勧請(かんじょう)するための【魔法陣】が並んだ本だ。


『まるで、Webアプリを作るためのフレームワークやライブラリの使い方を並べたカタログだな』そんなことを思いながら様々な権能(けんのう) を組み合わせて魔道具の機能を考えるのは楽しい。


 今のところ、「神々への道標」を持っていることこそが、次々と新しい魔道具を開発できるジャンフランコの強みであり、ひいてはスフォルツァ領だったりメディギーニ商会だったりの強みとなっている。


 ソフィア教会の力が隅々まで行き渡るリモーネでは身を滅ぼしかねない危険な知識であるからこそ、ジャンフランコが独占できているというのはある意味皮肉だ。


 スフォルツァ家がミルトンの地を席巻した暁には、ソフィア教会の影響力を削いでおきたい。この知識を広げ、いずれは自分には思いも寄らない新しい魔道具に出会うことも叶う、と夢想する。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 樹木から魔力を引き出す仕掛けができて、 ジャンフランコが目下取り組んでいた魔道具の開発が一歩も二歩も進んだ。


 魔力供給の問題に目処が立ったことから、次に本題である「伝言の魔道具」(メッセンジャー) の伝達距離を伸ばすための検討に入る。


 要は保守不要(メンテナンスフリー)の中継局を作ろうという試みだ。


 「伝言の魔道具」(メッセンジャー) の通信可能範囲は伝言を司る神の権能(けんのう)が及ぶ範囲に限られるため、例えば、リモーネ王国内のスフォルツァ()からスフォルツァ()との間で安定して伝言を伝えあうには、その間に三〜四の中継局を置く必要があるだろう。


 「伝言の魔道具」(メッセンジャー) は今のところ軍事利用が中心で、魔道具自体の数がそれほど多くはない上に、それほどの長距離の通信を必要とする機会もそれほど多くないため、中継局にそれほど大きな能力を用意する必要もない。一定程度の魔力供給ができれば十分に運用の目途が立つのだ。


 そして、伝言を司る神の属性は(かね)属性であり、さきほど具体化の目途が立った仕掛けで樹木から引き出せるのも(かね)属性の魔力である。


 このように能力の見切りと魔力供給能力の妥協点が見出だせたことで、ようやく試作品の仕様が固まった。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 長時間魔道具の構想や検討に集中して取り組んだ疲れは、「八百万の神々」をパラパラと流し読んで、神々の微笑ましい逸話にホッコリすることで回復する。


 ここからはアイディアを発散させる時間だ。


 ソフィア教会成立以前はあちこちで行われていた神事の一つとして、土地神や木々の神にお願いするための神事についての記述があった。


 前世で家や建築物を建てる前に必ず行われていた「地鎮祭」を思い起こす。


 土地神を相手に、この地で新たに人の営みを起こすけれど、祭りを行うから人と折り合いをつけてね、とお願いする神事。


「中継局」を動かす前にこの神事を行ったら、樹木から引き出せる魔力が更に増えたりしないかな、と妄想気味に思いを巡らす。


「地鎮祭」からの連想で、同じく前世のあちこちに置かれた神棚 を思い出す。


 事務所や家屋の一角に設置され、「神事」ほど畏まらなくても、柏手を打って手を合わせ、ささやかな願いを祈る、そんな場所がこの世界にあってもいいかな、と夢想する。


 ただ、ソフィア教会が神事を独占している今は、そんなことも叶わないだろうな、とため息をつく。見つかったら異端審問まっしぐらだ。


 そんなことを考えていると、ジャンフランコの手元の「伝言の魔道具」(メッセンジャー)が呼び出し音を鳴らし、画面に一つのメッセージが現れた。


道を歩くと時々地鎮祭に出くわしたり、事務所の一角に神棚があったり、日本人は特別宗教にのめり込む民族ではない一方で、日本は神々の存在を感じる機会に事欠かない素敵な国だと思います。


今回の新要素:

・ 樹木から魔力を引き出す仕掛け(試作中)

・ 「伝言の魔道具」(メッセンジャー)のための中継局(試作中)


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初めての作品投稿です。


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