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銭と神具は使いよう 〜 元WEB屋は魔法陣を解析して異世界を知る 〜  作者: 冬寂
過去を清算するために ‐ スフォルツァ辺境伯領

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バフ盛り盛りで火力マシマシ

乾坤一擲(けんこんいってき)スフォルツァ城を餌にミルトンの主力を釣ります。

【Day11~】

 ミルトン共和国を迎え撃つ作戦が固まった翌朝、ジャンフランコはフレデリカを伴ってダラヴィッラの執務室(オフィス)へ向かう。


 定例となっていた朝食付きの会議では、「回廊」両翼の小軍閥を手中に収めたことが報告され、来るミルトン共和国の偵察部隊とそれに続く攻勢への対応方針が発表された。


 発表に続いて、スフォルツァ城奪還と城壁の再建・強化、小軍閥の調略における功労者としてジャンフランコが、小軍閥調略を成功に導いた交渉役(ネゴシエーター)としてメディギーニが、ミルトン共和国を迎え討つ作戦の立案者としてフレデリカが、それぞれ紹介される。

 拍手喝采を浴びて、いよいよミルトン共和国を迎え討つ作戦でどのような功を立てようか、ワクワクしながら考えを巡らせるジャンフランコに、次の瞬間冷水が浴びせられる。


「このように多大な貢献をもたらしてくれた三君であるが、本日をもってリモーネへ帰任される」


 は?


「我らは三君の貢献に報いるためにも、城を守りスフォルツァの領地を 「少々お待ち下さい!今『帰任』とおっしゃいましたか?」 」

「いかにも。若様をお借りできるのは二週間と伺っていますぞ。国境越えを含む帰路を考えると滞在期限はもう残ってないものと」


 ジャンフランコは、今更ながら二週間の「遺跡探索研修」を隠れ蓑にしてミルトンに遠征して来たことを思い出す。


「ダラヴィッラ城代!僕にもここの城壁構築者としての責任があります!ここはやはり一月ほど滞在を延長し 「残念ながら、その件についてはご当主より期限厳守するようキツく命ぜられておりますので、このままお帰りくださいませ」 」

「そんな殺生な!この城壁があらゆる攻撃を弾き返す様をこの目で見られないなんて!」

「ご安心ください。若様の築いた城壁、ミルトンの狂信者どもには傷一つ付けさせません。また、若様の戦術、若様の魔道具、いずれも最大限に活用して敵を完膚なきままに叩きのめしてご覧に入れます。吉報は学舎(まなびや)にてお待ちくださいませ」


 ダラヴィッラがニッコリと笑うのを合図に、いつの間にか後ろに立っていたメディギーニがジャンフランコをガっと羽交い締めにする。


 ジャンフランコはそのまま、執務室(オフィス)を強制退出させられていく。成長したとは言え大人と子供には明確な体格差があり、ヒョイッと肩に担ぎ上げられるとそのまま城の玄関で待機していた装甲馬車まで運び込まれてしまう。


「若様、往生際が悪いぜ。あんたあれだけ働いたんだからもう十分ってもんだろう。ほれ、このまま馬車を出せ」馬車にはフレデリカ始め学友達も乗り込んでおり、ご丁寧にジャンフランコの荷物まで積み込まれている。ジャンフランコが朝の会議に出ている間に、全員の帰り支度が完了していたのである。


 装甲馬車が滑るようにスッと走り出すと真っすぐコルソ・マルケ砦側の城門を抜ける。


 ジャンフランコは往生際悪く装甲馬車の最後尾にしがみつき、どんどん小さくなるスフォルツァ城の姿をいつまでも見つめていた。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 ミルトンの偵察部隊がスフォルツァ城の近くに現れたのは三日後。


 十人ほどの黒衣の騎兵が「街道」の両側に沿って【隠ぺい】しながら接近する様子は、早くからスフォルツァ城の監視網に捉えられていた。


 彼らは輜重(しちょう)部隊の車輪の跡をたどり、やがて城が見えてくる地点に砲撃のような跡が複数残され、更にその先には折れた矢と木片が残されているのを発見した。


 残された痕跡を見て、輜重(しちょう)部隊は城からの砲撃で退路を断たれ全滅したと判断した。もちろん、これらの痕跡は全部偵察部隊に誤認させるための偽装(フェイク)であるが、偵察部隊が次に下した結論は間違っていない。


 スフォルツァ城がミルトンに敵対する勢力の手に落ちていると結論づけると、急ぎミルトン共和国に情報を持ち帰るべしと判断を下す。

 一人残された者は隠し通路を使って潜入する。あわよくば城内の情報を収集して後続の部隊に伝えるのが課せられた務めだ。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


『かかった』

 ミルトンの偵察部隊の動きについて報告を受けたダラヴィッラは、当初の計画通り迎撃作戦の準備に着手するよう指示を下す。


 敵偵察部隊が脚の速い騎兵で構成されていることを考えると、遅くとも二日後にはスフォルツァ城の奪還はミルトンの政府に報告されると予想する。


 そこから彼らが兵を掻き集めて最低限の軍編成で軍を動かせるまでに最速でも一月は掛かると見込む。

 そして、「最低限の軍編成」以上の兵を集められないことも確実だ。なぜなら今は十月の中旬。それ以上軍の準備に手間取れば冬が来てしまうのだから。


 ミルトン共和国が最速で動かせる最大戦力は、彼らの虎の子である常備軍の砲兵部隊と魔道士の一軍。農村からの徴発などに時間が掛かる歩兵を十分な数揃えるには一月ではまったく足りない。


 出来上がるのは、砲弾と魔法の手数だけは過剰に揃う一方で、城攻めの主戦力である歩兵部隊の数の揃っていない歪な編成の軍である。その歩兵部隊は数が揃っていないことに加えて(指揮官である)重装の騎士と通常の歩兵がほぼ同数というこれまた極端な構成である。


 いきおい取りうる戦術も、砲弾と魔法の飽和攻撃で守備側の戦意を挫き、あわよくば降伏させることを狙う、というものに限定されてしまう。


 火力で城の防御を崩した後に、重装の騎士が率いる歩兵部隊が数の暴力で占領する。政変後の紛争で多用されたミルトン共和国の常勝戦術が、今回は取れないのだ。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 敵の戦術を確度高く予想できるというのは、裏を返せばそれを前提とした作戦が立てられると言うことでもある。


 ミルトンの軍主力の兵力とその編成に要する時間の見積もりには、隠し通路の罠にかかった敵偵察兵から引き出された情報が大いに役に立った。


 スフォルツァ城側の基本戦術は次の通りである。


 ・ 先鋒の大砲/魔法は城壁で受け持つ

 ・ 「回廊」の入口付近の森に兵を伏せ、退路を絶った上で後方の歩兵を無力化

 ・ 「回廊」の両側に戦況観測のための偵察部隊を配置


 この会戦の目的は第一にミルトン共和国軍の主力部隊の殲滅(せんめつ)、第二は復活したスフォルツァ城が難攻不落であることの実証とそれ自体による示威、第三に歩兵部隊の吸収による戦力強化、となる。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 秋の終わり、その早朝に「回廊」の入口に置いた伏兵からミルトンの先鋒を発見との第一報が入る。


 ミルトン側も伏兵を警戒して周辺の探査を欠かさないが、スフォルツァ側はジャンフランコの手で徹底的に強化(フルチューン)された【隠ぺい】と【認識阻害】の魔道具を携行しており、ミルトン側の【看破】を問題にしない。


 森の中とはいえ目と鼻の先にいる伏兵に気づかず行軍するミルトン軍を前に、スフォルツァ側の兵士は必死に笑いを堪えている。


 魔道具に貼られた「笑うな!厳禁!」のステッカーはこの状態を見越したものだろうことが今になって分かり、兵士たちはニヤリと嗤う。


 予測通り、先頭を重装騎士が進んだその後を通常の城攻めには過剰な数の砲兵隊と魔導士の部隊が行軍し、先鋒の規模からするとまったく見劣りする数の歩兵の集団が続く。


 歩兵の隊列も全部「回廊」に入ったと伝言の魔道具(メッセンジャー)で報告が入る同じ頃、ミルトンの砲兵隊は射撃位置への配置を完了する。


 盾を持って並ぶ重装騎士が最前列。

 その後ろ、横一列に並ぶ十門の大砲、その後ろには魔道士が横一列に並ぶ。更に後ろに従えるのは予備の大砲が十門×三列。砲弾と魔法による城壁への飽和攻撃。それがミルトン共和国の最も得意とする攻城戦の主戦術(ドクトリン)の一部ではある。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 城壁の上に仁王立ちで敵の砲列を見下ろすダラヴィッラは、敵の布陣が全く予想通りであったことに満足する。ニヤリと嗤いながら一言「撃ってこいよ」と呟くと、まるでそれが合図になったかの如く十門横並びの砲列が城壁に向かって一斉に火を吹く。


 続いて時間差で魔法を放ったミルトンの魔道士たちであるが、彼らは直後、信じられないものを目にすることになる。


 城壁に刺さり、抉り、突き崩すはずの砲弾が、どれも城壁の少し手前で一瞬止まった後、向きを変えてまっすぐミルトンの陣に向けて飛んできたのである。


 間一髪魔法使いが張った障壁に守られた大砲もあったが、せいぜい二-三門といったところ。


 そこへ魔法使いの魔法が砲弾の二の舞いを演じ、今度は無数の火球と礫弾が魔法使いの陣に戻ってきて着弾する。


 ジャンフランコが城壁に仕込んだ【反し矢】の【魔法陣】は完璧に機能している。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 いまだスフォルツァ城側からは一発の矢弾も撃っていないにも関わらず、ミルトンの先鋒は既に壊滅状態に陥っている。


 後続の砲兵隊が戦列を立て直そうと慌てて動き出すその刹那、ダラヴィッラが右手を振り下ろして追撃を指示する。


 城壁の上に並ぶ大砲が火を噴き、魔法使いも一斉射を加える。砲弾に仕込まれた魔力が爆ぜ、火球が次々に直撃して、遂には青白い色の巨大な火柱が上がる。


『おいおい、何だこの異常な火力は。これが若様の言うバフモリモリでカリョクマシマシってヤツなのか?』

 言うなれば「強化(バフ)盛り盛りで火力マシマシ」であろうが、城壁の【魔法陣】による【強化】と杖の天恵持ち(魔法使い)が掛けた【強化】、砲座にも砲身にもと何重にも()()()【強化】が掛かった結果、数倍に膨れ上がった火力がミルトンの砲兵隊と魔道士に襲い掛かったのだ。


 燃やすものがなくなったためか巨大な火柱が姿を消した時、そこには焦げ跡のほかは何も残っていなかった。ミルトン共和国が誇る精強な砲兵隊と魔道士部隊は跡形もなく文字通り完全に消滅した。


 そして、後続の歩兵部隊にはパニックになって逃げ惑う暇すら与えられなかった。

「回廊」の両側に伏せた伏兵から【睡眠】を浴びせられ、一瞬で無力化されたのである。


 ここにスフォルツァ城防衛戦は、防衛側の一方的な勝利で幕を閉じたのである。

防衛戦大勝利!

一月もあったのにジャンフランコが城に来られなかったのには理由があります。


今回の新要素:

・ ミルトン共和国軍の主力が壊滅


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