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銭と神具は使いよう 〜 元WEB屋は魔法陣を解析して異世界を知る 〜  作者: 冬寂
過去を清算するために ‐ スフォルツァ辺境伯領

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【土】属性+【木】属性=土木工事

城壁が壊れたままで堀も埋められてるのでは、城としての体をなしません。

今回、ジャンフランコ君が頑張ります。

【Day3 → 7】

 ジャンフランコがミルトン側の城門をくぐって堀の反対側に渡ったとき、その堀では多くの騎士や兵士が集まり、まさに堀を浚う作業の真っ最中だった。

 非戦闘員の人夫を最前線に送り込むことが適当ではなかったからではあるが、多くが身体強化を使える騎士や身体強化の魔道具を装備した兵士により効率よく作業が進んだようだ。

 半ば埋まっていた堀が正門前の一部では既に深く広く掘り返されている。これが全体に広がれば、少なくとも正面からの数をたのんだ攻勢への対策としては効果が期待できる。


「それにしても酷い」コルソ・マルケ砦側から見た城壁とは対照的に、こちら側の城壁はあちこちが崩れ、穴が開き、城壁の体をなしていなかった。弓や砲撃が容易に城の本館にまで届いてしまう。

 城門に至っては、痕跡が残って堀に橋が渡してあるだけで開閉する扉すらない、門としての機能をまったく期待できない有様だ。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 ジャンフランコの傍らにはフレデリカだけではなくダラヴィッラもいる。土砂やら木材を運ぶ兵士たちの監督、と言っていたが、要は野次馬である。


 ジャンフランコが天恵(スキル)を使って壁や柱から建物まで作ってしまう様子は、リモーネ王国に滞在する家臣団の面々には既にお馴染みの光景だったが、ダラヴィッラ達にとっては「噂には聞くだけでなく一度はこの目で見てみたい」ものらしい。


 堀に立て掛けられていた梯子を伝って堀の底に立つと、素材になる土砂と木材が準備されているのが目に入る。

 起点になる場所、門の下の壁面に右手を添えると【神測(デジタイズ)】【細密出力(ナノプリント)】を起動させて魔力を込める。左手の先にある素材が魔力にまで分解されて消え去るのと同時に、右手の先では古い石組みが再構成されて黒く鈍い光沢をもつツルリとした壁面に置き換わっていく。


 城壁の厚みに必要なくらい奥まで到達したのが右手に伝わると、今度は上に向けて置き換えを進めていく。綺麗な壁面の範囲が堀の深さを超えても上に向けて伸び続け、ついにはかつての城壁がそうであったであろう高さまで伸び切ると、今度は左右に広がり始める。


 一旦魔力の流れが止まると、10メートルほどの幅で明らかに周囲とは異なる一続きの城壁が出来上がっていた。城壁や城門と呼ぶのが憚られるくらい、全く異質な巨大な塊が聳え立っている。

 堀の底から立ち上がって見上げるような高さまで継ぎ目一つなく続く鈍く黒く光る壁。いずれそこが門になるのであろう、綺麗な直線で切り取られたように穴が開いていて、そこからだけ奥が見えている。


 ジャンフランコがふぅと息を吐き周りを見渡すと、堀を浚う作業をしていた兵士たちが信じられないものを見る目でジャンフランコを見ている。

 ダラヴィッラは顎が外れたのかと思うくらい大きく口を開いたまま固まっている。

 アングリと開かれた口がそのままジャンフランコの方を向き、何か言いたげに目がグリグリと動く。

「ご覧になったご感想は?」ジャンフランコに悪戯っぽく問われて急に我に返ったのか「これだけのモノを作って魔力の消費はいかほどなのでしょうか」と急に心配を始めるダラヴィッラに「素材が充分に用意されているので、見た目ほどには魔力を使わないんです」とニッコリと笑いかける。


「素材が足りなくなったので次を持ってきて頂けますか?」と頼み、先ほど城壁を作り上げた場所から少しだけ左側にズレたところに土砂と木材が置かれたのを確認すると城壁の生成を再開する。

 崩れかけた城壁の残骸に接するところまで城壁が伸びると、今度は残骸を覆い隠すかのように滑らかな壁面が広がっていく。古い城壁と新しい城壁が繋がって大穴が塞がると、今度は門の右側に移ってこちらも同じように大穴を塞いでいく。


「これでひとまず急場は凌げそうですね」新しい壁面は幅50メートルほどだったが城壁に穿たれた大穴はとりあえず塞がった。「回復薬をもらえるかい?」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 ジャンフランコがスフォルツァ城を陥落させた知らせをメディギーニが受け取ったのは、奪還の二日後、コルソ・マルケ砦の会議室でだった。


 すぐさま手紙を二通用意して商会の者に託す。

 宛先はリモーネ首都の メディギーニ商会。そしてスフォルツァ邸で報せを待つ当主ジョヴァンナである。


 本当は早馬で届けさせたいが届け先は国境を越えた先のリモーネである。

 単騎の早馬では国境で止められること確実であるけれど、かといって荒事~要は隠密(ステルス)による秘密裏の越境~はそうそう使えないため、あくまで通常の馬車を使った商会による交易の(てい)で国境を越えさせざるを得ない。


 それでも、なるべく急ぐように指示を出した。

「報せが遅くなってみろ、あの戦姫(いくさひめ)様のことだ。後先考えずに国境を強行突破して押しかけかねないからな」

 その場合は国境地帯は焼け野原か、草木一本生えない不浄の沼地と化すだろうよ、と笑う。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 リモーネに向けた報せを託した商会の馬車を見送った後、メディギーニは自らが指揮して数台の馬車からなる隊商(キャラバン)を出発させる。

 積み荷はスフォルツァ城を整えるための調度品や食料品がほとんどだが、隊商(キャラバン)に一台だけ混じる装甲馬車~ジャンフランコがリモーネに残した二台目の試作車~にはジャンフランコに託された品が積まれている。まず間違いなく国境で警備兵に止められるであろう怪しさ満点の品を秘密裏に越境させるためだけに装甲馬車を用意したくらい、急いでスフォルツァ城に必要なものらしい。


 メディギーニがスフォルツァ城に到着したのはコルソ・マルケ砦を出て二日後の夜半であった。


 視界にスフォルツァ城が入ってくるとすぐ、メディギーニは違和感を覚えた。遠目にも城を囲む城壁の異様さが目につく。見慣れた城壁の姿とは異なり、鈍く輝く黒い帯のような塊がぼぅと仄かに光を帯びて夜闇の中浮かび上がって見える。その向こうに城の主塔の影が覗くというのは、彼の記憶にあるスフォルツァ城の姿からは大きくかけ離れていたのだ。

 城壁の真中にポツンと残された城門代わりの跳ね橋だけが、馴染みのある姿形を残してくれているようでホッとする。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 夜中の到着にも関わらず、ダラヴィッラが隊商(キャラバン)を出迎えてくれた。

「お役目ご苦労さまだな、メディギーニ。積み荷は城の居室を整えるためのものだな」

「ああ、それとジャンフランコ様の置き土産だ。番犬の目を盗むのが大変な代物だったが、これもご当主に相応しい城にするためだ。仕方ない」

 普通に国境を越えたのではないことを暗にほのめかす。

「乗ってきた装甲馬車は置いて行ってくれるんだろう?」

「その予定だが、ご当主の専用にすると聞いている。あまり手荒には扱わんようにな」


 一通りの確認が終わると積み荷の確認に向かったダラヴィッラに代わってアンジェロが前に出て話しかける。

「父上。お役目ご苦労さまです」リモーネ王国内では見ることがない鎧を着けた騎士らしい姿の息子にメディギーニの頬が緩む。

「今回は私もジャンフランコ様の馬車を御する大事なお役目を果たしましたよ」

「其方、今回は城攻めを経験したのだったな。いかがであった?」

 アンジェロは頬を上気させて父親に報告する。「いかに魔道具で姿を消しているとはいえ、敵の籠る城の真正面に立ったときは暗闇の中から敵の矢や砲弾が飛んで来やしないか、生きた心地がしませんでした」言葉を切り、「ですが、誰も血を流すことなく城を陥としてしまわれたのです。ジャンフランコ様の神算鬼謀(しんさんきぼう)に鳥肌が立ちました」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「で、そのジャンフランコ様はどちらだ?」アンジェロに案内を任せると、ジャンフランコが自室として使っている、城の居住区画の一室に通される。


 部屋に入ると寝台の上にジャンフランコが大の字で寝転がっているのが目に入る。ジャンフランコもメディギーニに気づいたのだろう。起き上がるでもなく右手を僅かに持ち上げて親指を立てて見せる。視界の端に、空になった薬の容器が並んだケースが映る。

「若様、今回も大変なご活躍と伺いましたが、かなりの無茶もやらかしたようですな」

「城壁を見てくれたかい?今回のは僕の最高傑作と言っても過言じゃないと思うよ。生半可な攻城兵器や魔法じゃ傷一つつけられないはずだしね」

「それはいいですがね、そのお姿はいかがされたんですかな?」メディギーニにしてみれば苦笑するしかない状況だ。

「それなんだよね。魔力の回復薬の飲みすぎかなぁ。眩暈がして起き上がれなくなっちゃってね」

「毎度のことではありますがね。無茶のしすぎだぜ。あんだけの城壁を一人で作り上げて平気な奴なんかいねぇよ」メディギーニの口調が崩れるのはそれだけ心配している証左だ。

「せっかくリモーネの猟犬の目を盗んで持ち込んだ品が無駄にならないようにしてほしいんだがね。明日にゃ取り付けするんだろ?」 

「う。今日中に体調戻すよ。僕じゃなきゃアレの取り付けはできないからね」

メディギーニが持ってきてくれた怪しげな積み荷の設置は次回です。


今回の新要素:

・ 特になし


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初めての作品投稿です。


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