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銭と神具は使いよう 〜 元WEB屋は魔法陣を解析して異世界を知る 〜  作者: 冬寂
亡霊は無視しようとしても勝手に嚙みつきに来る

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土木工事のような敵拠点攻略

無視していても【怨霊】サイド(向こう)からちょっかいを出してくるので、元から絶つ作戦です。

 

 ジャンフランコと、彼と共に闘うために集まった家臣団は、遺跡が眠る森のすぐ外で夜明けを待つ。


 ジャンフランコの周囲は光属性持ちの杖の天恵もち(魔法使い)四人で固められており、近侍として傍らにフレデリカが立ち油断なく周囲を警戒している。


 少し離れた位置には、全身を鎧兜で固めた剣の天恵もち(騎士)が数名。

 傍らにつながれた馬車には、液状になった純粋な木属性の魔力を樽に詰めたものが満載されている。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 地平線に光が差す。


 【怨霊】に暗闇が少しでも力を与えることを嫌って、今回の作戦は夜明けとともに開始である。


 馬車がゆっくりと前進し、ジャンフランコと家臣団も馬車に合わせてゆっくりと移動する。そのまま数分ほど森の中に向かって進むと、遺跡の入り口となる石組みが見えてくる。遺跡に到達すると同時に剣の天恵もち(騎士)杖の天恵もち(魔法使い) は四方を警戒できるよう、やや間を広げる。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


【第一段階】


 まず、最初に遺跡の内部と外界とをつなぐ入り口に「蓋」をすることから始める。

 ジャンフランコが顕現(けんげん)させた写し身が馬車の荷台に上り、木属性の魔力の入った【樽】を一つ遺跡の入り口の近くまで運び、馬車に戻る。

 写し身を使うのは、機密保持が理由の一つ、もう一つは万が一【耳】を奪われても【走狗】と化す前に消滅させられること、である。


 ジャンフランコ本人は、右手を遺跡の入り口となっている石組みに、左手を【樽】の上に置き、「それでは、作戦を開始します」と声に出すと右手に魔力を込める。

 彼の天恵(スキル)能力(アビ)の一つ【細密出力(ナノプリント)】を用いて、強固で何物にも傷つけられないシリコンカーバイド(SiC)の壁を形作っていく。彼の前世でいうところの3Dプリンタのような工程で作業を行うのだ。材料(フィラメント)となるのは、元から入り口に存在する石組みと、【樽】に詰めて持ち込んだ木の属性魔力である。純粋な木属性と土属性が一対一で結合することで、強固で安定し高熱にも強い構造物を作り上げていくのだ。傍目には石組みが黒い金属光沢を放つ物体に置き換えられていくように見える。


 そうこうする内に、地表に現れている石組みが完全にシリコンカーバイド(SiC) に置き換わってしまう。元は朽ちかけたガタガタの石組みが黒い金属光沢を放つ塊に置き換わっていくのだが、大きな違いは開口部が完全に塞がってしまっていること。


 これで、少なくとも、「片耳」のような肉体を持った存在は遺跡を出入りできないことになった。


「片耳」のような敵性の存在が出てくる口を一つ塞いだわけであるが、警戒はまだまだ解かない。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


【第二段階】


 ジャンフランコは右手で「ニ」のハンドサインを掲げると、次に遺跡の入り口のあった場所から出発して、置き換えの範囲を徐々に広げにかかる。

 まずは北側、次に東、南、西と彼が進むにつれて、石組みの周囲の地面が少しずつ黒い金属光沢に置き換わっていく。


 ここまでは順調だ。敵による妨害もないまま進捗する。


 ジャンフランコは地下の構造物の大きさについて先に写し身で侵入した経験から大体の目途をつけており、入り口から出発して東西南北に進んで止まった位置が、地下に広がる遺跡の端に相当する位置だ。

 その目算が間違っていなければ、これで遺跡の【天井】は完全に覆ってしまったことになる。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


【第三段階】


 ジャンフランコが「三」のハンドサインを掲げると、彼の写し身が馬車から降りて、ジャンフランコ本人の作った【天井】の四方、周囲の地面を腰の深さまで掘り起こすと、ちょうど石造りの遺跡の内壁が露わになる。


『計測はドンピシャ』ジャンフランコが心の中でガッツポーズをとると、北側から始めて石でできた内壁の置き換えに着手する。そのまま北側の壁を上からシリコンカーバイド(SiC)に置き換えていく作業を進めていく。


 やがてジャンフランコの右手に伝わる手応えが石組みから土に変わる。これは壁の置き換えが遺跡の底まで到達したサインとなる。ジャンフランコが魔力を流すのをやめる。


 ここで、ちょうど一つ目の【樽】が空になり、ジャンフランコが左手を挙げると写し身が馬車の荷台から二つ目の【樽】を持って降り、東側の内壁の近くに【樽】を置いて馬車に戻る。


 同じように東側、南側の壁面の置き換えも完了すると、2つ目の【樽】も空になり、ジャンフランコの合図で写し身が三つ目の【樽】 を西側の内壁の近くに置いて、北側の壁の外側に動き、その場で地面を掘り始める。


 ジャンフランコが西側の壁を置き換えていくのと同時進行で、北側の壁の外側の地面が写し身により掘り進められていく。


 写し身が掘る北側の穴が遺跡の底と同じ深さまで到達するとほぼ同時に、ジャンフランコ本人による西側の壁の置き換えが完了する。

 ここまでで、遺跡の周囲【天井】と東西南北の壁が隙間なく覆われてしまっており、ちょうど遺跡全体を覆うような蓋が出来上がった形となる。

 残る底の部分を塞いでしまえば封印作戦は完了である。


 ジャンフランコが写し身を消滅させ、ラストスパートに移る。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


【第四段階】


 ジャンフランコの腰に縄が巻かれると、穴の外側にアレックスと彼女の父フィオリオ、ティツィアーノと彼の父シビエロがつき、それぞれが穴の底に向けて【破魔】の魔道具を構える。


【怨霊】が這い出す口が既に塞がれていることに気づくほど聡いのであれば、今が脱走のラストチャンスであることにも気づくはずである。

 ジャンフランコ達も警戒を最大に引き上げる。


 先に木の属性魔力で満たされた【樽】を穴の底に下し、続いてジャンフランコがゆっくりと穴の底に降ろされていく。

 昼光で明るく照らされた外とは違い、穴の底までは太陽の光は届かない。

 薄暗い穴の底に不安になりながらも穴の底に降り立つ。


 そこからは最後の仕上げである、遺跡の床部分の置き換えに取り掛かる。

 ジャンフランコが【細密出力(ナノプリント)】でシリコンカーバイド(SiC)への置き換えを行っている時間がそのまま彼が一番無防備になる時間であるため、地上で【破魔】の魔道具を構える四人に緊張が走る。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 遺跡の底面に当たる部分の半ばまで置き換えが進んだとき、それは起こった。


 遺跡の天井付近でガキンと硬質な音が響く。

「耳を覆うとは小賢しい」

 家臣団の誰とも異なる声が響く。


 何か重いものが固いものに当たる音が何度か響く。

「メディギーニ!」

「父上!」


「大丈夫だ!吹き飛ばされただけだ。何ともない」


 彼は鎧兜を身に着けたまま吹き飛ばされ、遺跡の上に張った硬質の天井の上を何度かバウンドしたようだ。それなりに重量があるのと、硬質なシリコンカーバイド(SiC)にぶつかったため、派手な音を立てる。

「これくらいで参るような柔な鍛え方はしてないぜ」


 地下で置き換えを続けるジャンフランコからはその姿は見えず、剣を交えているのか、盾で受けているのか、ガキンガキンと硬質な音だけが響く。

『手助けに行かなくていいものだろうか』

 ジャンフランコが一瞬躊躇して、置き換えの手を止め上を見上げる。


 その姿が見えたのか、フィオリオが穴の底に向かって叫ぶ。

「手を止めるな!上は上で持たせる!」

 上で戦う剣の天恵持ち(騎士)たちを信頼しているのか、視線は穴の底のジャンフランコに向けたままだ。


 その声に気を取り直し、ジャンフランコは置き換えを再開する。

『どうか、そのまま持たせててくださいよ!』

 兎に角、封じ込めを完成させることに注力する。


『あと少し』


 そう考えたときに、ジャンフランコの横、地面の下から顔が浮かび上がってくる。

 あのとき、写し身の目を通して見た、遺跡の闇の中に浮かんでいた顔

『【怨霊】?! 上で暴れているのでは!?』


「手を止めるな!」

 穴の上の四人が次々と【破魔】の魔道具を発動させ、穴の中が白銀の光で満たされる。


「ふん。上で暴れているのは我が走狗よ。アレが暴れれば上で魔道具を構えている連中の気を引けると思うたが、少々アテが外れたな」

 顔とは違う場所の地面から刃のようなものがニュッと飛び出しジャンフランコに向かって襲い掛かるが、そのたびに上からの【破魔】の光で弾かれる。


『魔道具だと弾くので精一杯なのか?』

「魔法といえど、これだけ離れていればな。まともに当たらないよう受け流すことなぞ造作もないこと」地面に浮かぶ顔が余裕をみせるつもりかニタリと嗤う。


【怨霊】の刃と【破魔】の光の攻防が続く中、『あと少し』ジャンフランコが神具に魔力を込め、最後に残った隙間を埋めるように遺跡の床を硬質のシリコンカーバイド(SiC) に置き換えようとする。


 だが、最後あと少しのところで強い抵抗を感じて、置き換えがそれ以上進まない。

 面積にして、ちょうど人の胴体一つ分くらいの隙間だろうか。そこがどんなに魔力を流しても埋まろうとしない。


「我を封じ込めようとはな。狙いは悪くなかったが、我も大人しく封ぜられるわけにはいかぬ」それに、と【怨霊】勝ち誇ったように続ける。

「上の奴らの魔力が尽きれば、ここで其方を切り刻むのも容易となろう。何より、其方その小さな身体で随分と魔力を使っているではないか。其方の魔力が尽きるのも間近であろう?さすれば、其方らは詰みじゃな。我の勝ちじゃ」

 ジャンフランコが上を見上げて叫ぶ。

「あと少し!あと少しだけ持たせてください!」


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 ジャンフランコによる遺跡の床の置き換えと抵抗する【怨霊】、

 【怨霊】の刃と上から【破魔】の魔道具を打ち込むフィオリオ達、

その攻防はしばし拮抗していたが、徐々に軍配が【怨霊】の側に傾いていく。


 上から降ってくる【破魔】の光が徐々に弱くなっていくように見え、それに気づいた【怨霊】の顔が余裕の笑みを浮かべる。

「上の奴らはもう間もなく息切れじゃの。ほれ見てみい」

【怨霊】が操る刃が軽く動くだけで【破魔】の光が弾かれていく。

「其方もなかなかに頑張ったがの。これで終わりじゃ」

【破魔】の光は既に【怨霊】が無視できるくらいに弱っており、【怨霊】はもう【破魔】に備えることすらせずに、何本もの刃をジャンフランコの周囲に構える。

「これで終わりじゃな」

 地面から【怨霊】の顔が真っ白な総髪をなびかせてニゅうっと浮かび上がる。

 元は端正な顔であったのだろうが、残忍に吊り上がり大きく開いた口、赤くギラギラと血走る目により悪鬼を思わせる形に成り果ててしまっている。


 ジャンフランコが唇をぎゅうっと真一文字に引き締める。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「残念ね。終わるのはそちらの方よ」

【怨霊】の刃がジャンフランコに届く刹那、何もない場所から光属性の刃が伸び、【怨霊】の顔の真ん中に突き刺さる。

【怨霊】の体がビクンと硬直すると、【雲隠れ】の魔法を解除したフレデリカが魔力剣を【怨霊】に突き立てたまま姿を現す。


「ジジ!今です!」

 ジャンフランコが右手の【神具】に一気に魔力を流すと、ブツンという手応えが返ってくるのと同時に遺跡の封印が完了する。邪魔をしていた何か、おそらくは【怨霊】の体の一部であろうが、それがジャンフランコが生成したシリコンカーバイド(SiC)が隙間を埋めることによって断ち切られたのだ。


 ジャンフランコの周囲に構えられた【怨霊】の刃がボロボロと崩れ形をなくしていく。最後にはフレデリカの魔力剣に貫かれた顔だけが残った。


「【雲隠れ】とはぬかったわ、娘御よ。其方(そなた)何故(なにゆえ)にこのような者どもに与する?」

「我が誓いを捧げた主であるが故。その主を害する者は誰であろうと許しません」


「もうよい。娘御よ。我は其方の主の力により宿っておった神体から断ち切られてしもうた。最早(もはや)其方らを害する力も失せた。厚かましい願いかもしれぬが、刃を抜いてはくれまいか」

【怨霊】の顔が、先ほどまでの凶悪な笑顔から柔らかい微笑みに徐々に変わっていく。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 遺跡の封印作業を完遂して、ジャンフランコがふぅうっと息を吐き、新たに右手に【調伏】の魔法陣を、左手に魔力剣を構える。


「フレデリカ、もう剣を抜いても大丈夫だ。警戒はこっちでできる」

 ジャンフランコの声に応じてフレデリカは魔力剣に流す魔力を止め、刃の形をした光がふっと消える。


「其方ら、不可思議な者どもよな。光を操るかと思えば、【雲隠れ】などという、闇を極めし者にしか授けられん魔法をも操る。何より、其方らのような子供がこうまで大量の魔力を操り事を成すなど、俄かには信じられぬ」


 顔の真ん中に大穴を開けたまま話す【怨霊】にジャンフランコが呼びかける。


「貴方も既に宿るべき御神体から離れたのでしょう?もう身動きも叶わぬとお見受けいたします。宜しければ、わたくしが神々のおわす場所までの道行きについてご助力奉りますが、いかがいたしましょうか?」


「『神々』とはまた久方ぶりに聞いたわい。其方、 教会の走狗とは相容れぬ者か?」

 いつの間にか【怨霊】の周囲から怨みや怒りの気配が消え、穏やかな顔に変わっている。

「相容れぬ、とまでは言いませんが、彼らの所業については古くからの言い伝えを知り、その悪辣さに眉を顰め、今は喪われた神々の伝承について学ぶ者でございます」

「其方のような者に送られるのであれば悪くはないの。それでは頼むこととしよう」


 ジャンフランコが右手の魔法陣に魔力を流すと、「調伏の女神」が顕現(けんげん)する。

「■■■■■よ、久しいな。かの時は我による調伏は叶わなんだが、此度は調伏を受け入れる気になったか」

「ソフィア教会とやらの走狗ならざる者に出会えましたからな。我が怨みすべて晴れたとは言えませぬが、後事はこの者らに任せようかと存じます」


「そうか、では送るぞ」

ジャンフランコには【怨霊】であった者が満足気に頷いたように見えた。


「この地に満ち満ちたる八百万(やおよろず)の神々よ。ご照覧あれ」女神は薄く笑みを浮かべると、元は【怨霊】であった者に微笑みを向け祝詞を唱える。「ここに降臨の御霊(みたま)一柱。これより神々の懐にお返し申す。願わくは、その道が安らかなものであらんことを」


 祝詞を唱え終わると、「調伏の女神」が 元【怨霊】に手を差し伸べ、連れ立ってどこかへ向かうかのようにすうっと姿を消す。


『我を求める者にこれを遺す』


 どこからともなく声が響くと、元【怨霊】が姿を消した空中に浮かぶ魔法陣一つ。


 ジャンフランコは声に応えるように右手の【神具】を構え、空中の魔法陣を写し取る。


 そうして見ているうちに、魔法陣はまたすうっと中空に消えていった。

遺跡といっても、ダンジョンみたいな大規模なものではなく、せいぜい五~六階建てのお屋敷がそのまま地面に埋まっている、くらいの大きさを想像してください。


・昼間だった

・隙間から無理やり身体を伸ばしていたのが負担だった

・弾かれてたとは言え、【破魔】の連打はそれなりに効いた

・顔のど真ん中に光属性ぶち込まれてた


くらいの複合要因で、調伏できるくらいまで弱らせられてた…のだと思います。

あとは、ジャンフランコが「神々」と口にしたせいで、最悪の怨敵であるソフィア教会の信徒ではない、と安心したことで親近感抱かれたのかもです。


今回の新要素:

・ 【怨霊】調伏と遺跡の封印完了


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初めての作品投稿です。


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