父とのスキル談義 のち 母との攻撃魔法談義
間が空いてしまいました。久々の更新になります。
神測を大幅強化した影響は思ったよりも大きかった。
夜にはロドリーゴが邸を訪れ体調の戻らないジャンフランコの様子を診る。
「ジジ、君に言っておきたいことがあるんだが」
「何でしょう、父様」
「さすがに、今回は無茶をしすぎている。わかっているとは思うが、ジョヴァンナも君の急成長を見て気が急いてきているのだろうな。だがなぁ」
ジョヴァンナに【魔導書】を読めと強要されて逃れられる者はいないはずだが、ロドリーゴとしてはそれはそれとして思うところがあるらしい。
「そもそも、君は杖の天恵持ちではなく、固有の天恵持ちなのだからね。それも単にユニークなだけじゃなくて成長し能力が増えていく天恵だ。ある意味、複数の天恵を一人で抱えているようなものさ」
強力な魔法という一側面に特化して強化のために無理を重ねるのは、ジャンフランコの成長のさせ方として歪だ、と言う。
「確かに、爻の数が増えるたびにどんな能力が獲得できるか楽しみにはなりますね」
「魔道具への興味から転じて【魔法陣】に関係する能力を増やしていって、それが魔法の獲得やら【魔導書】の解読にまで発展するんだからね。放っておいたらこの世のありとあらゆる謎を紐解いてくれるかも知れないじゃないか。私としては大いに研究対象にしたいところではあるのだが」
「そこまでおっしゃるなら天恵をどう発展させるか父様と一緒に研究する時間を取りますよ。そのためにも父様から説得していただいて、母様にガッツリ押さえられている『【魔導書】を読み解く時間』を少しでも減らしていただければ」
ロドリーゴがジャンフランコの額に手を当てたまま顔を顰めるのが見えた。
「ジョヴァンナのあの顔を見てはなぁ。アレを止めるのは大変そうだ。だが...」
ジョヴァンナの暴走はいつか止めなければと言う。
「魔法使いとしての能力に限定しても、君は強大な魔力量に裏付けられ全属性の魔法をほぼ無尽蔵に使いこなせる稀有な存在だ。さらに攻撃魔法から強化・弱体、何なら生活魔法まで幅広く対応できる。控え目に言って使い勝手が良すぎる」
どんな魔法も【魔法陣】として理解する結果、満遍なく魔法を覚え使いこなせる点でもジャンフランコは優秀なのだとか。
「隠密行動で敵地に侵入からの広範囲の破壊までお手の物だ。君を連れて隣国ミルトンを散歩するついでに旧辺境伯領以外をすべて灰にしてしまう、なんてことを彼女が思いついていないことを祈りたいね」
ロドリーゴの言葉に前世の記録映像で見た黒いエイのような戦略爆撃機の姿を連想してると、当の本人は表情を苦笑いに変えてジャンフランコの部屋を出ていく。見送るジャンフランコはそのまま眠気に襲われ、眠りへと沈んでいった。
結局、ジャンフランコは三日間寝台から出ることが叶わなかった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ようやくジャンフランコの体調にロドリーゴの診断でも問題ないとお墨付きがもらえた朝、ジョヴァンナは傍から見ても分かるくらい上機嫌だった。朝食を食べ終わるのもそこそこに息子を拉致してダイニングルームを出ていくジョヴァンナを、ロドリーゴは諦め顔で見送り、自分も職場である教会へと戻って行く。
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書庫に向かうのかと思いきや、その日はジョヴァンナの執務室に入り説明を待つ。テーブルには【魔導書】が一巻置かれているので【魔導書】を読み解く作業を行うことには変わりなさそうだ。
『【魔導書】も【魔法陣】の塊であることには変わりないし、むしろ複雑な【魔法陣】を読み取り解析する時間を取れるわけだから【魔法陣】についての知見を得られるし、これ自体は無益な時間ではないのだけれど』
「では、ジジ」
と促されて【魔導書】を開き、最初は全体に目を通して記述されている内容を把握することから始める。【魔導書】の記述をすべて神測が読み込むと解析が始まる。神測の能力強化した効果は如実に現れており、途中で止まることなく【魔導書】の解読作業は進んでいく。
やはり解析能力の底上げが複雑な【魔導書】の解読の要件だったようだ。
爻 の本数で表される神測の能力は、この場合は一度に取り扱うことのできる【魔法陣】の情報量に直結する。前世でも秘匿される情報を守るための暗号化と情報を覗き盗むための暗号の解読の双方に共通して求められたのはより強力な計算能力だった。
ただし、それでも一巻の【魔導書】を読み込み解析するのにもそれなりに時間を要する。この日の【魔導書】の解析には四時間近く必要であった。それでも神測 の強化前は天文学的な時間が必要で事実上解析が不可能であったのとは天と地ほども違うのであるが。
また、本職の杖の天恵持ちと比較しても、今解析しているのはジョヴァンナクラスの魔法使いが持つ強化され尽くした杖の天恵を持ち合わせてなければ覚えることも使うことも難しい【魔導書】であり、それにしたところで例えばジョヴァンナの場合でも数日を要したそうである。それを初見から四時間で「覚える」ことが出来るのだからジャンフランコが規格外であることには変わりない。
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『あー暇だ』
神測が魔力を消費して【魔導書】を解析している間、ジャンフランコ自身は何もすることがない。神測 のほぼ全力を使っているようで、左手に別の【魔法陣】を出したりはできない。
また、魔力消費もかなりエグいため、迂闊に動き回ることもできない。何となれば枯渇に備え魔力回復薬をいつでも飲めるように目の前に据えている。
仕方ないので同じように解析を待つ間手持無沙汰のジョヴァンナとお喋りをして時間を潰す。
「母様、今解析している魔法って、規模が違うだけで魔法によって引き起こされる事象は特段変わるものではないですよね」
「そうね。ただ何事もそうだけれど、結果だけをみたら『単純な拡大』であっても、実現するためには『単純に拡大』というわけにはいかないの。量や規模の拡大を支えるための仕掛けが別に必要になります。もっとも、それは魔法に限らずどんなことでもそうじゃないかしら」
「どういうことでしょう?」
「そうねぇ。例えば業火を巻き起こす魔法にしても、単純に注ぎ込む魔力を十倍にしたら影響する範囲が十倍になるわけではないのよ。広さでいえば二倍少々がいいとこかしら」
『そりゃそうだ。三次元で考えなきゃね』
「それに、範囲が広いってことは遠くまで魔法を届かせるための別の魔法を同時に発動させる必要もあるのよ。逆に中心付近では火を維持するために必要なものが不足するの。これは逆に外から中へと送り込む必要がある。火を起こす魔法に魔力を込めるだけでいいわけじゃなくてね」
「それだけ苦労して効果範囲が上がるだけってのも何だか寂しいですね」
「あら、それなら『禁呪』を探して挑戦してみるといいと思うわ。ここにある【魔導書】なんかからは想像もつかない、強力な魔法ばかりだそうよ」
「へぇ。ちなみに母様の手持ちの魔法に『禁呪』はありますか?」
「さすがに、『禁呪』は王族の専売特許よ。一辺境伯令嬢だったわたくしには手出しのできないものだった。【魔導書】も王族が秘蔵していたのだけれど、ミルトンの政変でどうなったのかしらねぇ」
「もしかしたら、共和国の連中が奪ってしまっているのかもしれませんね。大変だ」共和国側から禁呪を使われる可能性に思い至る。
「そこは安心なさい。禁呪が王族の専売特許であるのには理由があって、わたくしと同等以上の強大な魔力量をもち、さらに属性数も多い魔法使いでなければ覚えることも発動させることもできない代物よ。王族の中に裏切り者がいたなら話が別だけれど、そんな強力な魔法使いがそう滅多にいて堪るものですか。間違いなく共和国の連中の中に禁呪を扱えるような魔法使いはいないわ」
それに、ここ何代かは王族にも禁呪を扱える杖の天恵持ち が生まれていなかった、と付け加える。必要な属性を持つ子が王族に生まれなかったのだそうだ。禁呪が王族の抑止力として機能しなくなったことが、隣国の国力低下、ひいては政変の原因ではないか、とも。
そんな物騒かつとりとめのない魔法談義をしながらの4時間近く。午前中の予定は完全に潰されてしまった。
初めての作品投稿です。
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