【闇】属性の魔道具と魔石の考察…お金持ちになろう?
お許しをいただいた魔道具店でのアルバイトから始まります。
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※ 手に呼び出した魔道具由来の【魔法陣】のことを「【疑似】魔道具」と表記
することにしました。
12月の半ば 神学校が冬季の休暇に入る前日。
教室内にはやや浮き立った空気が漂い、教師たちも早々に授業を諦める表情に変わっていった。
その日の授業も終わりジャンフランコがメディギーニ商会へ立ち寄ると、シュナウツァー魔道具店からのメッセージが残されていた。
ジャンフランコはメッセージを渡してくれたメディギーニにシュナウツァー魔道具店へ向かうことを伝え、馬車を呼んでもらう。馬車はすぐにつかまったようで、フレデリカを伴って乗り込むと、10分ほどで魔道具店裏手の工房の前に到着した。
工房の入り口で取次ぎを頼むと、すぐに奥から前掛けに拡大鏡スタイルのシュナウツァーが出てくる。一瞬左右を見渡した後、ジャンフランコとフレデリカを見つけてニコリと笑みを浮かべて工房の中に招き入れてくれる。
「いやー。待ちかねたぜ。この間作ってもらったインクがもう底を尽きそうになっててさ。もうすぐ掻き入れ時だってぇのに開店休業を覚悟してたとこだ。今日は濃いのを多めに頼むぜ」
既にインクの魔道具が机の上にセットされ、インクを受ける空の容器が並べられているのが見える。
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前回シュナウツァー工房を訪れた日以来、ジャンフランコはジョヴァンナから魔力操作の訓練と称して課題を課せられている。その課題というのが、他ならぬ"魔導インク"を生成する【疑似魔道具】に思い通りの属性・魔力量で魔力を流す訓練なのだ。
どうやら、【金】属性だけで生成した"魔導インク"は薄く【金】と【土】二つの属性をバランスよく流して生成した"魔導インク"は濃く、と魔力操作の巧拙が目に見えて分かるからという理由で"魔導インク"の【疑似魔道具】は魔力操作の訓練に最適だとジョヴァンナに判断されたらしい。
課題と同じことをここでもやるのか、とウンザリするし、何ならここでのアルバイトも特訓の一部と思って励めと言われている。
魔力を流す間、心なしかフレデリカの視線を感じる。『ハイハイ、意識して【金】・【土】二つの属性の魔力を流すことを心掛ければいいんでしょ。元々そのつもりですよっと』
魔力のコントロールを試みて集中していたからなのか、容器が一つ一杯になった段階で軽く疲労を感じた。魔力の方はそれほど減っていないのだけれど。
フレデリカが横で見ている職人に声をかけて水を一杯もらってくれる。
水をゴクゴクと飲み干してから、容器を入れ替えて二杯目の"魔導インク"に挑む。
やはり集中し過ぎたせいか疲労は溜まっていく。おまけに魔道具の上に翳しっ放しの右手も少し疲れてプルプルしてきた。時間にしてここまで三十分弱というところ。
そこにシュナウツァーが様子を見に来る。
「相変わらず質のいいインクを出してくれるし、速さも前回と同じくらいか。けど、ちょーっとお疲れ気味の様子だな。一休みしてからもうちょっと続けてほしいんだけど大丈夫かね」後ろを通りかかった見習いっぽい子供に声をかけて茶と茶菓子を頼んでくれた。
「ちょっと今回は『濃いの』を頑張ろうと集中したら疲れちゃいました。【金】と【土】の両方の魔力をずっとムラなく出すと最高品質の"魔導インク"になるんでしょう?」
「おいおい、坊っちゃんよ。こんな場末の魔道具店で使うインクにそこまでは必要ないぜ。お貴族様相手の店で使うような、この容器一杯が小金貨一枚するようなインクになっちまうよ」ガハハと大きく口を開いて笑う。
「それで、どうだい?今日インク造り終わってから時間があるようなら魔道具修理の仕方を教えるが」小皿の上のクッキーを口に放り込みバリバリと嚙み砕く。
「ええ、できればお願いしたいです。これからもインク造りに伺った時限定でいいので手ほどきをお願いできますか」
「いいぜ、坊っちゃん。それで、護衛の嬢ちゃんはどうするよ?ついでだから一緒に教えてやってもいいが」
いきなり声をかけられたフレデリカは一口齧ったクッキーを慌てて飲み込んで答える。
「よろしいのですか?差し支えなければ一緒に習いたいです」
「おっしゃ、引き受けた。二人仲良く俺の弟子ってことだな」カカと笑う。
十分ほど休憩すると疲労も回復したので、インク作成を再開する。
魔力操作に慣れてきたせいもあって、強く意識しなくても属性の操作ができるようになっている。そのおかげか、今度は特段休憩を挟まなくても容器二杯分のインクを作成し終えることができた。合わせて容器四杯分。魔力の流す強弱には少々ムラが出たが、属性の方はコントロールを維持できたと思う。
「おーっし。今日は特別濃いやつが四杯だな。前に来た時に一杯で大銀貨八枚ってことにしたよな。てことで、今回もありがとな」
小金貨三枚大銀貨二枚を気前よく渡してくれた。これは大銀貨三十二枚と同じだ。
「今日のインクはマジで品質が良さそうだし、使ってみて本当に最高品質だと確認できたら本当に次回からは小金貨一枚で買取させてもらうぜ」
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「そいじゃ、坊っちゃん、嬢ちゃん、こっちに来てくれ。まずは基本の基本からだ」やや奥まった小部屋に案内されると、机二つの上に紙とインクの入った小瓶、それと線を描くための道具が二人分用意されていた。
インクはジャンフランコが作ったものよりはやや薄く、いかにも練習用という感じのものだ。道具は前回見たのと同じ。先に細く尖った針がついた棒だ。
「あの、教材のお代はいかがしましょうか」
「あ~、気にする必要はないぞ。これは俺の趣味みたいなもんだからな」
「すみません。お言葉に甘えます」
「さて、まず修行の第一歩だが、インクをつけて紙の上でまっすぐ線を引く練習だ」
「そんなことでいいんですか?」
「まぁ、やってみな。まっすぐ、太さと濃さを一定に引けたら合格をやろう」
ジャンフランコもフレデリカも自分の目の前の紙にフリーハンドで直線を書いていく。が、シュナウツァーの言う通り、まずはフラフラ歪む線をまっすぐにすることに苦労し、次に太さを一定にするのに一苦労。インクの濃さを一定にするトライをしようとしたところでシュナウツァーがパンパンと手を叩く。
「あー、さすがにそろそろ集中力も切れてきた頃合いか」
「そいじゃ、残りは次に来る時までの宿題だ。次に来た時に試験して、合格なら次のことを教えてやる。ちょうどいい冬休みの宿題ってとこだな」
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フレデリカが二人分の紙とインクの小瓶、それと線を描く道具を丁寧にしまっていると、シュナウツァーが戻ってきて、「坊っちゃん、今日も魔道具持って帰るだろ?」と問いかけてくる。
「いや、それが…母から叱られまして…」
事情を察したかシュナウツァーが破顔する。
「まぁ、あんたいいとこの坊っちゃんぽいからお屋敷にゴミみてぇな魔道具を持って帰ったら、そら怒られるわな」
「唐突ですけど、魔道具をいただく代わりに少し伺ってもいいですか?」と気になっていたことを問いかけてみる。
「【闇】属性の魔道具って普通に買えるものなんですか?」
「ほぉ、そういやこの間持って帰ったヤツの中にも一個あっただろ?」
「ええ。ただ母に聞くところでは魔道具があっても【闇】属性の魔石が手に入らないから手に入れても役に立たないだろうって。実際お店にも【闇】属性っぽい魔道具置かれてないですよね」
シュナウツァーは少し考え込むと
「実際、【闇】属性の魔道具が無いわけじゃない。けど、ほとんど全部が遺跡で発見されたものだし発見されたらそのままどこぞのお貴族様の屋敷に直行さ。そんなわけでマトモに動くのは市場には出回らない。【照明】や【暖炉】の魔道具と違ってウチみたいな魔道具店では扱えないわけさ」
それにな、と付け加える。
「俺も【闇】属性の魔道具を開けて中を見たことがあるが、ありゃ細かすぎて人間業じゃ描き写せない。つまりは複製を作るのも無理なわけだ」
「そんなわけで、ほぼお貴族様しか手に入れられない上に、【闇】属性の魔石も手に入らないから使い切ったら無用の長物になっちまう。で、持て余したお貴族様がうちのような店に売りに来て初めて、ようやくオレみたいな場末の職人のところにも流れて来るってわけだ」
「『流れてくる』ってことはいくつかお持ちなんですか?」
「【闇】属性の魔道具は魔石が空になった時点でゴミでしかない。売り物にはならないから大した買取価格も提示しないんだが、それでも手放す貴族はいるんだ。ありゃ厄介払いなのかもしれんがね」
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「こっちに来てみな」
シュナウツァーに続いて入った部屋は壁面一面が棚のようになっていて所狭しと魔道具が並べられている。
「ほら、これが俺の【闇】魔道具コレクションだ。全部魔石が空っぽだから役に立つのは一つもないけどな。まぁ、今のところは単なる趣味の品ってわけさ.......【闇】属性の魔石に魔力を充填できたらこれが宝の山に変わるんだけどなぁ」と寂しく笑いながら魔道具を眺める。
「一応コレクションみたいなもんだから、被っているのを持っていても仕方ないし、よかったら持って帰るかい?」そう言いながら「これなんかがそうだな」と呟いては積み上げていき、5つほど集まったところで「こんなところか?ほれ、持って帰りな」と渡される。
「これなんかは大事にしまってた奴だから見た目も綺麗なままだしな。お母上にゴミと間違えられて捨てられるなんてことはないと思うぜ」
何だか申し訳ない気分になる。たとえ魔道具で釣って便利な魔力持ちを逃がしたくないだけであってもここまでしてもらってもいいんだろうか。
.......そう思いながらも、ありがたくいただくのだけれど。
「ご厚意に甘えます。ありがとうございます。ちなみに、何の魔道具か教えてもらってもいいですか?」
「自分で探ってみな。一応、持ち込んだお貴族様が色々と口上を仰るんだが、何せ平民の俺なんかにはチンプンカンプンなことばっかでな」
「まぁ、大概が遺跡産だったりお貴族様の家宝だった奴とかだったりで掘り出し物には間違いないぜ。まぁ、使い道が分かったところでガラクタに変わりはないんだけどな」
「もう一つ伺っても?」
「おう。俺がわかることなら何でも答えるぜ」
魔道具を分解してみて初めて目にした魔石について疑問に思っていることを聞いてみる。
「魔石ってどうやって入手するものなのですか?」
「ああ。俺みたいな商売をしていなきゃ魔石を目にすることなんかほとんどないもんな。
鉱物の塊に天恵持ちが魔力をチャージしたものが『魔石』として売られてるんだ」
「鉱物……ですか」
「ああ、魔力充填の効率がよいという理由で石英の結晶が選ばれることが多いらしいぜ。この国ではあんまり産出しないから外国から輸入してるらしいな。まぁ、俺はそっちはあんま詳しくないがな」
シュナウツァーも「魔石」として売られているもの以外は目にしたことがないという。
「たいがいの魔石は魔力を再充填しさえすりゃ再利用できるから、空になったら『魔石』屋に売りに行って魔力入りの『魔石』を買ってくるんだ」
「じゃぁ、【闇】の魔石も買ってくれば……」
「残念ながら、【闇】はそもそも魔力を充填できる天恵持ちがいないんだ。何故だか知らんが、【闇】だけはな。あと、【光】も比較的天恵持ちの人数が少ないとかで【光】属性の魔石も高いぜ。クズ魔石はともかく、教会で使う魔道具あたりについてるような大ぶりの魔石となると他の【木】【火】【土】【金】【水】の何倍もの値段になる」
「じゃあ、もし【闇】属性の魔力を充填できる人が産まれたら、その人は大富豪間違いなしですね」
「おう!そんときゃ俺も仲間に入れてほしいもんだぜ!」
【闇】属性の魔道具事情を教わり、(使えないけど)魔道具もいくつか入手しました。
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