【ジャンフランコ流】魔法習得法
ひょんなことから大発見をするのですが...。
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※ 手に呼び出した魔道具由来の【魔法陣】のことを「【疑似】魔道具」と
表記することにしました。
※ 「身体強化」の属性を【土】【水】から【木】【水】に変更しました。
※ 長くて読みづらいので二分割しました。
馬車がメディギーニ商会に着くと、ジャンフランコは「お土産」にもらった魔道具を自分に割り当てられているロッカーのような場所にしまう。
勉強部屋に入ると、ちょうど先に来ていたティツィアーノと目が合ったので、ジョヴァンナに鍛えられている基礎訓練の件について聞いてみる。
彼はジャンフランコと同い年の「ご学友」の中で、天恵を偽らず、ミルトンの亡命貴族の子弟として魔法学校に通っている。黒髪・黒目の元気な少年は魔法学校で一生懸命ノートを取っては、ここメディギーニ商会の勉強部屋で皆に共有してくれている。
「ねぇ、ティツィアーノ。『杖の天恵持ちの基礎訓練 』について教えてもらってもいいかな?杖の天恵持ちは小さい頃からやるんだよね」
「いいよ。僕らだと三歳くらいから指導者がついて訓練を受けさせられるんだ。ひたすら魔法撃たされる上に【相生】意識しろと言われるものだから、特に【相生】の複数属性持ちは大変なんだ」彼の場合は火土金光の四属性を持っているから、その中でも光属性以外は【相生】を意識する必要があるそうだ。
それでなくても三歳児の魔力でひたすら魔法を打ち続けるのはかなりの苦行に違いない。新生児のジャンフランコがやらかしたのと同じくらいの勢いで魔力枯渇を繰り返してたらしい。相当鍛えられたそうだ。
「人によるけど、早い奴は四歳になったくらいに一属性と二属性を意識して魔法撃てるようになるかな。遅い奴でも五歳になる頃には大抵の奴ができるようになる」
一属性と二属性使い分けられるようになったら一人前というのはジョヴァンナにも言われていたことだ。
並行して、流す魔力量についても練習が必要で、最初は最小と最大の撃ち分け。そこから刻みを増やしていって十段階くらい撃ち分けられるようになると一人前扱いされるようだ。
「フーン。杖の天恵持ちって大変なんだね」他人事を装って言うが、もちろん今のジャンフランコにとってはまったく他人事ではない。
横でフレデリカがニコニコしている。
「ちなみに、僕は四歳になる前に属性の撃ち分けをできるようになったんだよ」
ティツィアーノ が胸を張る。
「そう言えば、魔法ってどうやって使うの?母様は教えてくれないんだ」
「それは杖の天恵 を持ってないと分からないことだね。杖の天恵 を授かって生まれた魔法使いは【神具】の中に予めいくつかの魔法が最初から備わってて、【神具】に魔力込めたら魔法が飛び出すんだ」
「新しい魔法を覚えるときはどうするの?」
「【魔導書】を繰り返し読むんだ。あ。知らない文字で書かれているから読むというより目で追っかけるって方が正しいかな」
そのうちに「分かる」瞬間があり、そうすると【神具】に魔法が登録されて次から使えるようなっているんだという。
ジャンフランコはふと、イタズラを思いついた悪ガキの顔になると、右手に出さないように神測を発動する。実際に思いついた内容もほぼイタズラと言っていいものだったのだけれど。
「ねぇ、攻撃魔法とかじゃなくていいんだけど、何か魔法を見せてくれない?」
ティツィアーノは少し考える。攻撃魔法みたいに周りに影響があるのでなければ怒られないたろう。
「そうだね。【灯り】の魔法でいい?」
「うん。むしろそれでお願いしたい」
一度頷くと、ティツィアーノの意識が【神具】に集中する。杖の天恵持ちが魔法の発動を準備する動きだ。
そのタイミングでジャンフランコも『魔法を見て【魔法陣】の形で記録できると便利なのにな』と考える。
と、狙い通り右手に神測 が出現して光る。【細密走査Ⅱ】新しい能力を獲得したサインだ。右手の平を左手で覆って見えないようにしたのは右手に顕現した神測を見えなくするためだ。ひとまず、自分の魔法に集中しているティツィアーノには気づかれていない。
ティツィアーノの右手に小さな灯りがともる。
「どう?こんな感じだよ」と問われるが、(大きな声では言えないが)次が本番である。「ごめん。発動の瞬間をもう一回見たいけど、いいかな?」
ティツィアーノが了承し、一度灯りを消したので、その右手に注目する。
もう一度小さな灯りが灯るのと、【細密走査Ⅱ】 がその魔力の動きを読み取りジャンフランコの頭の中に【魔法陣】が展開されるのとが同時だった。
ジャンフランコがニンマリしていると、それに気付いたティツィアーノに「ねぇ、何で魔法見たかったの?」と問われて慌てて言い訳を用意する。
「この間壊れた【照明】の魔術具を譲って貰ったじゃない?あれから魔導具のことを研究してるんだ。折角だから直したくてヒントが欲しくてね」まぁ、嘘ではない。なぜヒントになるかの説明をしないだけで。
「もしかしたら、魔道具は魔法をコピーして作られたのかも。そんな仮説を立てていてね」
話しているうちに、残りの「ご学友」組も部屋に入ってくる。
今日はジャンフランコがシュナウツァー魔道具店に向かったから遅目の集合時間が設定されている。先に鍛錬をしていたのか、若干顔が上気した者もいる。
ティツィアーノが皆に、「ジジに頼まれて【灯り】の魔法を見せてたところだよ」と説明すると、「【灯り】ならわたくしもお見せできますよ」とアレックスが前に出る。
やや浅黒い肌で金髪が何筋か混じった黒髪の女の子だ。
一つ息を吸うと右手に灯りが灯る。
アレックスの魔法も同じようにジャンフランコの頭の中に【魔法陣】として顕れる。『アレックス:灯り』とラベルを付けてしまい込んでいると、アレックスが「ほかの魔法も」と言うのをティツィアーノが「周りを壊したりするのはダメだよ」と押し留めているのが見える。
「では」と言いながら、アレックスがティツィアーノに右手を向ける。
「まずは【防御強化】」と言うと、ティツィアーノが薄い黄色の光で包まれる。色からすると土属性だろうか。
「【暗闇】にしてー」歌うように言うと黒いモヤに包まれたティツィアーノが慌て出すのを尻目に「【闇を回復】して〜」今度は白い光。「オマケで【遅く】してー」黄色と緑の光「逆に【速度アップ】」白い光。「最後に〜【毒】」緑の光。
ジャンフランコの頭には次々と【魔法陣】が浮かび上がっては記録されていく。
「ちょっと待てよ。ダメージを与える魔法は無しだぞ」ティツィアーノが自分に向けて白い光を放つ。「これが【解毒】です。まったく」続けて「これが【治癒】で、これが【疲労回復】です。誰かさんの毒で減った分を回復します」アレックスを睨む。
「へ〜、ティツィアーノは回復系の魔法が得意でアレックスは強化と弱体かな?」
魔法使い見習い二人がウンウンと頷いている。
突然「魔法使いばかりズルいぞ」と角ばった顔立ちで体格の良い少年が前に出て右手を胸に当てると、全身が緑色と水色の混じり合った光で包まれる。「今のは」「【身体強化】だ!騎士にも使える魔法はあるんです!」
ほかの騎士見習い達は仕方のない奴、とでも言いたそうな顔、魔法使い見習いは普段間近で見ることのない身体強化魔法に興味津々の顔だったが、ふと自慢そうに胸を張る彼の後ろにメディギーニが仁王立ちしているのを見つけて青くなる。「こら!アンジェロ! 何やってる!」
続けてジャンフランコに向き直ると「ジャンフランコ様もジャンフランコ様だ。ちゃんと皆を勉強に向かわせてくれなきゃと俺が困るんだ!」
落とされた雷は残念なことに神測でもスキャンできなかった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
帰りの馬車の中、二人きりになるとフレデリカが「何であんな騒ぎになったんでしょうか?」と問いかける。
「母様の魔力の訓練があんまりに厳しくてね。サボる口実が…いやいや、そんな慌ててやる必要があることなのか気になったんだ。でも、確かに急いで身に着けた方がよさそうだということがわかった」魔法を見せてもらったのは単なる思いつきなんだけどね、と付け加える。
「その割には魔法使い見習いが悪ノリするのを止めませんでしたね」「アレは僕じゃなくてアレックスたちがノリノリで魔法を披露してただけだよ」
まぁ、思わぬ発見はあったけどね、とニンマリするのをフレデリカは見逃さない。
「思わぬ発見って何でしょうか。最近のジジは色々なことに手を出されているので、知らずに危険なことに手を出していないか怖くなります」
「フレデリカ。当座の僕の目標は、フレデリカの魔道具を直せるようになることだよ。そのためには色んなことを知らないといけない」
ジョヴァンナの指導は計算外だけど、と付け加える。
「壊れた魔道具を集めるのも、魔道具を動かす【魔法陣】の仕組みを理解するためだしね。たくさん【魔法陣】を見るほどに【魔法陣】の描き方・直し方が分かっていくと思うんだ」
そう言って右手に神測を顕現させ、【照明】の【疑似】魔道具を出す。
一部を拡大させ、「ほら、何だか細かい文字のように見えるだろう?この一つ一つの文字の意味が分かれば、【魔法陣】の直し方が分かると思ってさ」
「ということで、今は手当たり次第に取り組むことが大事なんだと思ってる。フレデリカとは一緒に魔道具修理の練習頑張らないとね」
何だかフレデリカの目がウルウルしてきたけれど、ジャンフランコにはやることがあるのでお喋りを続けられない。フレデリカには少し待っていてもらう必要がある。
「今日一日、色々なことがあったよね。報告することもたくさんあるから、少し考え事をしてもいいかな?細かい説明は父様母様のいるところで一緒にするからさ」
目をウルウルさせたフレデリカが頷くのを見て、左手に【灯り】の魔法由来の【魔法陣】を呼び出すと、右手に呼び出した【照明】の【疑似】魔道具の【魔法陣】との比較を始めた。フレデリカは興味津々で覗き込むが、先ほどジャンフランコが釘を刺したから口を挟むことはしない。
予想していたとおり、両方の【魔法陣】には比較的多くの共通部分があった。共通でない部分を比較すると、魔法由来の【魔法陣】はシンプル 魔道具由来の【魔法陣】では中核部分と同じくらいの分量の【魔法陣】が追加になっている、というようにボリュームに大きな違いがあった。
共通部分が光を発する魔法のコアの部分で、それ以外が魔法あるいは魔道具として発動させるための仕掛けなのかも?
次に右手にアレックス由来の【魔法陣】を呼び出し、左手のティツィアーノ由来の【魔法陣】との違いがないことを確認する。
二人の杖の天恵持ちが別々に発動した魔法から魔力の流れを読み取ったにも関わらず、出来上がった【魔法陣】に寸分の違いもないことから、誰が発動しても【魔法陣】に相違はないこと、つまり【魔法】と【魔法陣】は一対一で対応する、と仮説を立てる。
最後に、右手に魔道具由来の【魔法陣】を呼び出して、右手に魔道具由来・左手に魔法由来の【魔法陣】を呼び出した状態にしてから両手の【魔法陣】に魔力を流して、同じように光を放つことを確認する。
また新しく分析の手掛かりを手に入れて充足した気分になり、達成感と疲労を感じながら馬車の座席に身を沈めた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
帰宅すると、ロドリーゴが訪問していたので、夕食後に報告事項があると告げる。今回の報告はちょっとした下心込みである。
『【神測】【細密走査Ⅱ】』狙いは執務室に入ってすぐにジョヴァンナが展開する魔法である。
ジョヴァンナが【防諜】魔法を展開すると、狙い通りに【防諜】の魔法も神測に【魔法陣】として取り込まれた。ジャンフランコが顔をニンマリさせたことに、フレデリカか訝しげな顔になる。
「まずはシュナウツァー魔道具店に関する報告です。今日は前回の倍、インク壺(大)四杯分のインクを作成しました。また、ほぼ全量に【土】【金】二属性の魔力を込めることに成功しています」
ちゃんとトレーニングしてますよアピールにジョヴァンナの表情が明るくなる。
「その結果、インクの品質が貴族街の店並に上がったと評価を受け、次回からの買い取り金額アップも打診されています」
「インク壺(大)に四杯とは、場末の魔道具店でそんなに使うものかね」とロドリーゴは訝しげだ。
「おそらく冬休みで僕が掴まらないことも織り込んでの量、だとは思います。また、『掻き入れ時』と言ってました」
『インクの消費量を記録していくと、魔道具商売の動きが分かるようになるかもね』
「それと、ジジだけではなく、わたくしも魔道具修理の手ほどきを受けることになりました」
『これはフレデリカからの報告でいいね』と思いつつ「『冬休みの宿題』と言って課題をもらってます」と補足する。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「この程度なら夕食の席で報告してもらったのでよかったのだけれど」と訝しむジョヴァンナに「母様、ここからが本題です」と前置きする。
「実は、目の前で発動された魔法を読み取って【魔法陣】として記録できるようになりました。その結果、魔法も魔道具と同様に【魔法陣】で記述できることが分かりました」と爆弾を落とす。
「「「はぁあああ?」」」見事に揃った驚きの声に『してやったり』とニンマリする。
右手に「【灯り】の魔法」左手に【照明】の【疑似】魔道具を呼び出して、それぞれについて紹介する。
両手に魔力を流して発光させ、「ほら、同じように光を発しているでしょう?ここから魔道具は魔法を模倣して作られたのでは?と推測しています」
両方の【魔法陣】から共通する部分を範囲選択でハイライト表示させる。
「ご覧のように、魔道具の【魔法陣】と魔法由来の【魔法陣】には共通する部分があります。それ以外の部分を比較すると、魔法由来の【魔法陣】の方がシンプルですよね。ここから、魔道具は魔法を模倣し天恵を持たない平民でも使えるようにしたものだと考えました。魔石と繋いで魔道具として発動させるための【魔法陣】が追加で必要になってる形ですね」
『さて、結構画期的な発見だと自分では思うのだけれど、どんな風に称賛してもらえるかな?』期待を込めた視線を両親とフレデリカに向けるけど、三人が三人とも表情が完全に空白になったまま動かない。
『これは、画期的過ぎて理解を拒否されてるってことかしらん?』
空気が重い 空気変えたい。
両手の【魔法陣】を見えなくしてから、やや戯けた口調で続ける。
「ほら、今【魔法陣】を外からは見えないけれど、僕の頭の中では【魔法陣】の準備ができている状態です。もし、この状態で魔法発動出来たら魔法使いの真似できちゃいますよね」
そう言って頭の中の【魔法陣】に魔力を流すことをイメージすると、右手にぼうっと灯りが灯る。
え...できてしまうのは想定外なんだけど。
「光あれ...なんつって...」最後は空気のあまりの重さに耐えかねて小声である。
沈黙が続く...続く...永遠かと思った沈黙が、ジョヴァンナの絶叫で破られた。
「魔法の基礎勉強頑張りましょう!」
両肩を掴まれ、ガクガクと揺すられる。
「あなたは私が仕込みます!」
真っ先に食いついて来ると思ったロドリーゴは、頭を抱えて知らぬふりを決め込んでる。フレデリカは呆気に取られたまんまだ。
「私の魔法全部伝授する!全属性の魔法使いよ!貴方は最強の魔法使いの素質があるってことだわ!」
そのまま、翌日から怒涛のスパルタ魔法特訓に突入するとは、事前の想定からは完全に外れていた。
【細密走査Ⅱ】
「見ただけで魔法を覚え」られるようになるなんて!
意外な発見にジャンフランコができることが大きく広がります。
もっとも、大魔法使いである母親にロックオンされて修行を強要される羽目になりますが...
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