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銭と神具は使いよう 〜 元WEB屋は魔法陣を解析して異世界を知る 〜  作者: 冬寂
騒乱の気配 ー スフォルツァ領

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【閑話】布石を打ってお茶を濁す

自爆テロのおかげで状況はなかなかに悩ましいです。

 スフォルツァ城防衛戦勝記念式典での事件から一週間が過ぎた。ジャンフランコは工房を兼ねたスフォルツァ城内の自室で魔道具を弄りながら考え事をしている。


「まったく。あと二年くらいは内政充実を図りたかったのに、共和国のアホどもめ」

 領主夫妻が直接狙われたことが原因で、家臣団の中で共和国に対して何らか直接的な行動を求める声が危険なほど高まっているのだ。


 ただ幸いなことに、季節柄この時期は性急にことを進めたくても進めらない。その点については共通理解があるので、例えば今すぐに首都ミルトンに侵攻せよとかの過激な意見は抑えられている。


 まもなく冬が訪れるこの時期。

 冬が来てしまい各地が雪に閉ざされてしまえば何をするにしても行動に制約が課せられてしまうために、今この時期から暫くは何をするにしても雪の降る時期(タイムリミット)を考慮しなければならない。


 昨年はその制約を逆手に取ってミルトン共和国の主力部隊を誘導して完全に殲滅する大勝利を収めた。

 また、冬という制約だらけの季節から生じる先入観・油断を利用してミルトンのほぼ全土を勢力下に収めることにも成功している。


 そんな風に、昨冬から今春にかけてミルトン共和国残党をこっ酷くやっつけてしまっているので、流石にこの冬は向こうも同じ手を食うまいと用心しており同じ手は使えないだろう。


【幽霊馬車】をはじめ、昨年望外の勝利をもたらしてくれた道具は変わらず手元にあるものの、そうポンポンと妙案が湧いてくるわけもないので、ひとまずジャンフランコは今の時点で手堅く打てる布石を打っておくことにする。


 少なくとも何らか行動している限り、家臣団に対し「何もしていないわけではない」と言い張ってお茶を濁せる。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 今、ジャンフランコの私室にはジルベルトとアレッサンドロとアレックスが呼ばれて地図を前にウンウン唸っている。


「【幽霊馬車】をリモーネで運用するの?ちょっと危険すぎないかしら。ジョヴァンナ様の許可が下りるかどうか」

「冬の間に少人数で色々手を打とうとすると、【幽霊馬車】のあるなしで難易度が段違いだから考慮には値するんじゃないかな」

 先日王子を乗せてチラ見せはしといたし、と付け加える。

「問題になりそうなら駆動部分だけの劣化版を輸出して黙らせる、って手もあるしね」


「一応聞くけど、この作戦はジジが直接指揮を執るわけではないのよね?」

「そうだよ。僕は当分の間はミルトンから目が離せない。少なくともそう言われてはいる。それに心情的にも奴らに一泡吹かせられたまんまというのは気持ちがいいもんじゃない」

「一泡吹かせた、の間違いじゃないのかい?」

 水も漏らさぬ警備を敷いていたつもりが、まんまと自爆テロを目の前で実行されたことをジャンフランコが悔やんで見せれば、「写し身」を使って暗殺をすかしてみせたことへの自己評価が低いことにジルベルトが呆れる。


「で、異端審問官の潜伏場所(アジト)を潰しに行くって話しだけど、本気でこのメンバーが最適とか思ってるわけ?」

「この手の隠密系の仕事はフィオリオ子爵直伝の君の右に出る者は居ないと思ってるけど」

「女神様の加護を貰ってるジジほどじゃないわよ。まぁ、アレッサンドロには確かにこの任務向いてるわね。」

「どこがだよ!」

「あら、最終的な目的は敵の拠点を潰して更地にすることなんだから。普段から極大魔法はジョヴァンナ様とジジの次くらいには得意って吹いて回ってるアンタにはピッタリじゃない」

「なるほど、そうなるとクセのつよい魔道士様お二人が暴走しないためのお目付け役が僕の役目かな」

「いや、このパーティーのリーダーはあくまでアレックスだ。ジルベルトには不測の事態が起こった時のサポートを頼みたい」

「それを『お目付け役』と言うんだけど」

 苦笑しながらもジルベルトは役割分担には納得して引き受けてくれる。


「じゃあ、頼めるかな。冬の間、雪と闇夜に紛れて完全隠密(ステルス)状態で旧ミント伯爵領の端っこにある異端審問官の拠点を潰して来てもらいたい」

「最悪、中に価値あるモノが残っててもアレッサンドロに潜伏場所(アジト)を潰してもらうの優先でいいんだよね」

「ああ。でも希少天恵(スキル)持ちが閉じ込められてたり有益な情報が残ってる可能性考えてアレックスをリーダーに据えたんだから、そこは空気読んでね」

「オッケー」

「あと、これは保険。三人ともこの【魔法陣】で約定結んどいて」

 ラクタヴィージャ(分け身の魔神)の【魔法陣】を配り、「念のため、ね」と念を押す。


「後で【幽霊馬車】の隠密(ステルス)関係の【魔法陣】は倍量記法でチューンしておく。予備の【闇】魔石も多目に積んどくよ」

「ああっ!その魔石を転売して儲けたい誘惑が!」

「絶対にダメだからね」


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 アレックス達三人が退室すると、組み立て途中の【自律飛行する魔道具(飛行ドローン)】が目に入りため息を吐く。


 当初は量産試作機でいくつかの試験を経た上で工房で量産する計画だったのが、領主夫妻が直接ミルトン共和国残党から狙われたことで、計画そのものが前倒しになってしまった。


 ジャンフランコには量産試作機と同じモノを複数手作りすることを求められている。今から工房の生産調整をして【自律飛行する魔道具(飛行ドローン)】を割り込ませるには時間が掛かるため、それなら生産設備なしで魔道具を作り出せるジャンフランコに必要数を揃えさせる方が効率がよい、と判断された。何というか自分の扱いが酷い。臨時で魔道具工房の役目を肩代わりしているようなものである。


『ま、それも今作っているコイツで一旦は終わりだけど。』

 今作っている七機目が完成したら、この「生きて歩く魔道具工房」扱いにも一旦ケリがつく。


 ジャンフランコの私室には魔導線が引き込まれ、【自律飛行する魔道具(飛行ドローン)】が完成する都度接続して中に組み込まれた【人造魔石】に魔力を充填させられるようになっている。


 そうして魔力を満タン状態にするには空の状態からだと半日近く掛かるので、その合間にジャンフランコは持ち込まれた録画済みの映像を神測(デジタイズ)に読み込ませたり分析したりしている。


 そうやって朝から昼食を挟んで夕刻までを【自律飛行する魔道具(飛行ドローン)】の製作にあて、魔力の充填を行ってロールアウト。その隙間時間を使って映像の抽出と分析というのが、ここ数日のルーティンになってしまっている。


 ロールアウトした【自律飛行する魔道具(飛行ドローン)】はピエレッタが指揮するチームに渡され、次から次へと首都ミルトン上空の映像を撮っては録画データの詰まった魔石をジャンフランコに届けてくれる。


「ピエレッタがなかなかうまくやってくれている。」

 上空からの偵察は、ピエレッタが指揮して、常時二〜三機がミルトン上空を飛ぶ態勢を維持してくれているため、ジャンフランコの手元に届く映像データだけでも、この数日で膨大な量になりつつある。


 まだざっくりとしか神測(デジタイズ)による分析は回していないが、首都ミルトンについて大雑把な「地」の図は出来上がりつつある。その後、そこを往来する人の姿や顔などの膨大なデータを処理していって、各地の用途や利用される時間帯、警備の態勢やその穴になる部分の洗い出しをやる予定だ。


 おそらくは冬になって天候が荒れる前には作戦での使用にも耐える詳細な攻略地図が出来上がっていることだろう。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 正直なところ、未だ内政充実に着手したばかりのスフォルツァには、正攻法の攻城戦で首都ミルトンを落とすような力はない。

 出来るのは、いわゆる「斬首作戦」

 ピンポイントで要人を抑えて指揮命令系統を機能停止させ、引き続いて相手の混乱に乗じて戦力を封じ込め抵抗を抑え込む作戦である。よしんば完全制圧に失敗したとしても敵の継戦能力をそれなりに削ることが出来れば次回以降の攻略が少し楽になる。


 とは言え、難易度の相当高い戦術であることは間違いない。成功の肝は如何に高付加価値目標の位置を特定し、遺漏なく迅速に抑えるための戦力を的確に投入できるか。だが、それには上空からの情報だけではやはり不足だ。

「現地で動ける優秀な間諜(スパイ)が欲しいよね」


 先日捕らえた自爆テロ犯の死霊(ゴースト)をうまく使う方法を検討しなければならないかもしれない。


 そう言えば、空中からの偵察を検討していた時に【死】の女神から死霊(ゴースト)を使役するやり方を勧められたんだったか。


「一度は現地に行かないとな」と先に入手した抜け道の情報や「鍵」の存在を思い浮かべながら独り言(ひとりご)ちるジャンフランコであった。

今回の新要素:

・ 旧ミント伯爵領への実働部隊派遣(準備)

・首都ミルトンへの偵察ミッション


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