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銭と神具は使いよう 〜 元WEB屋は魔法陣を解析して異世界を知る 〜  作者: 冬寂
騒乱の気配 ー スフォルツァ領

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132/186

◯人に口無し、など許さん side ジャンフランコ

前回・前々回の答え合わせです。

若干ですが残酷描写と胸糞表現があります。

「あ~あ、最悪」


 領主夫妻がオープンな場所で演説することを前提に狙撃も警戒し、爆発物や毒物なども警戒していたが、よりによって自分の身体に爆弾埋め込むヤツがいるとはジャンフランコの想像を超えていた。

 ヤツが吹き飛んだ辺りはもう何だかわからないグチャグチャになってた。爆発の威力はそんなになかったと見えて、そこに散らばっているのはヤツとあと二人分の…いや、これ以上はやめておこう。


 剣の天恵持ち(騎士)が数名、招かれて城を訪れていた近隣の住民達と爆発の起こった場所との間に立ち塞がって見えないようにしていて、一方では城の広間から外に向けて誘導する動きが始まっている。


 訓練通りの冷静な動き。城の家臣たちは冷静に訓練で確認した通りの動きを忠実になぞる(トレスする)。イヤ、領主夫妻が害されたにしては冷静過ぎか。


『自爆テロなんて異世界には不要なんだぜ』

 想定外の事態に翻弄されたことへの怒りか、ジャンフランコはいつもの年齢相応の少年の口調をかなぐり捨てていた。メディギーニもかくやというくらい荒れた中年男の口調に変わっている。

 ジャンフランコが爆発の起こった場所に駆け寄ると、ちょうど自爆テロ犯の生命が消えるところだった。急いで【死霊使役(ネクロマンシー)の鬼神】の【魔法陣】を起動して、身体を抜け出した瞬間の死霊(ゴースト)を捉える。


「逃さないよ。お前はコレから永遠にこき使ってやる」

『オ...オレは...』

五月蝿(うるさ)い。お前なんざ'11'で十分だ。名前なんかやらんよ。記号で呼びつけて使役してやる」

『高位貴族を滅ぼ...』

「いいから、お前のやったことをよく見ろ」

 目の前で領主夫妻の遺体だったものがグズグズと崩れ、塵に変わっていく。暫くすると、そこにはテロリストのもの以外は血も肉片も残っていなかった。

『おかしい...()()()()大義は...』


 その時、城のベランダからジョヴァンナの声が降ってくる。

「皆様、警備の不手際で危険な目に遭わせてしまって大変申し訳ございません。ですが、神々のご加護により、わたくし達はこの通り健在です。卑怯極まりない試みは潰えたのです」

『ぐ......』自分の手で生命を奪ったはずの相手が場所を変えて演説を続ける姿に、死霊(ゴースト)がうめき声をあげる。

「ほら、お前さんのやったことに何の意味もなかったことがわかるだろ。お前さんは大儀とやらに殉じたつもりだったろうが、誰一人傷つけられなかった。お前さんは()()()()()()()()し、()()()()()()()()()()。せいぜい石畳の上の染みくらいだぜ」

 ベランダには傷一つない領主夫妻の健在な姿がある。

 集まった来客の間から安堵の溜息と、一瞬遅れて歓声が沸き起こる。

 パニックに陥りかけていた聴衆がアッサリと落ち着く......どころか、別の興奮〜熱狂に置き換わっていく。


「皆様、コレはおそらくは『共和国』を名乗る(やから)の仕業です」

 ジョヴァンナの視線を感じ肯定代わりの頷きを返す。

「恐怖で他人の心を縛り己の願望を実現する。スフォルツァがこの城に帰ってくるまで、卑怯極まりない手口でこの地を支配していた輩です。今はまだ彼等を討ち滅ぼすには至りませんが、彼等の引き起こした政変の爪痕からこの地が回復次第、彼等を痕跡ひとつ残さずこの世から消し去ることを誓います。ですので」

 聴衆の耳はブレス・ノイズすら聞き逃さない。

「ですので、その日が一日でも早まるよう、この地の復興に協力をお願いします。幸い、今年は冬の前に大きな実りを得ることが叶いました。来年はより多くの実りを約束いたします。敵を討ち滅ぼし、豊かな領地を共に取り戻しましょう!」


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「名演説だな。無謀な襲撃すら演説の力に変えてしまったか」

 いつの間にか、ローレンス王子が近侍を連れて側に立っていた。

 彼らにも事前に襲撃の可能性は伝わっていたためか、至って冷静だ。

 領主夫妻(の「写し身」)が立っていた場所はなかなかに凄惨な様子になっていたが、顔色一つ変えていないのは流石、大国の王子である。


 フレデリカをはじめジャンフランコの護衛も主を囲むように駆け付ける。

「このような場に不用意に飛び出すことはお止め下さいませ」

 どうやら、この場で訓練を逸脱した行動をとったのはジャンフランコ一人だったようである。


 予定されていた祝宴は事件を受けて中止され、聴衆は誘導されて粛々と家路につく。


「さて、私は本日の出来事について急ぎ本国に戻り報告せねばならん。申し訳ないが帰りのアシを用意いただけるかな」

「せっかくの来訪にも関わらずご不快な思いをさせてしまい申し訳ございません。ローレンス殿下。いずれこの件については埋め合わせを」

「では、今この場で一つだけ教えてくれぬか?被害に遭ったと見えたのは領主夫妻ではなく、その身代わりか?」

「それに近いですね。詳しくはご説明出来ませんが、古代の魔術です」

「帰路でもご一緒して他にも色々とお話を伺いたかったが、コレでは難しいであろうな。名残惜しいが、私はコレで失礼する。領主夫妻にもよろしくお伝え願いたい」


 踵を返して立ち去るリモーネの王子一行を見送ると、城の広場からは既に聴衆の誘導も完了しており、領民達の姿はない。代わりに剣の天恵持ち(騎士)に囲まれた領主夫妻が姿を現す。


「昨日、貴方に【魔法陣】を突きつけられて約定を結ばされた時は半信半疑だったけれど、貴方の()に従って『写し身』に演説させておいて正解だったわね」

「勘ではありません。危機意識の表われとお考えください」

「君らはよく平気でいられるな。爆発の瞬間は本当に死んだかと思ったぞ」

 青褪めた顔のロドリーゴに構わず、ジョヴァンナは目線でその場に撒き散らされているモノを示す。

「ただ、残念ながらコレでは何の情報も得られませんね」

「いえ、母様」自分の頭の銀灰色に変わった髪の毛を指差す。

「そこについても抜かりはありません。死者の魂を捕らえました。コレから洗いざらい吐かせます。死んで責任から逃れるなど絶対に許しません」

「おいおい、ついに【死】の眷属まで味方につけたかね」

「父様、首尾よくいけば、ミルトンの攻略、早まるやもしれません」


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「さて、'11'。君はどうやって重包囲されたミルトンを抜け出した?それとも以前から包囲の外に潜んでいたのかな?」

『抜け穴が、ある。王宮から、入る』

「なるほどな。いずれ外からの入り口を教えてもらうよ。さて、君はこの後どこかへ帰るのかな?」

『帰るところは、ない。薄くなって漂う。主が呼んだら駆け付ける』

「了解。当座はそれでもいいさ」


 ジャンフランコは今、フレデリカだけを伴って城の自室に戻っている。


「さて。申し訳ないけれど、君にはコレ以降は僕の最も優秀な間諜(スパイ)になってもらう。ミルトンからすれば最悪の裏切り者、だがね」

『オレは裏切らない。共和国の大義...』

五月蝿(うるさ)いってば。僕に言わせりゃ君らの『大義』ってのは、要はルサンチマンと甘々の自己憐憫と他者への共感の欠如でしかないよ。まったく、こんなクズ達のせいで一つの国がバラバラになり多くの人が犠牲になったなんてね」

『我らは寄生虫を駆除する。そうすれば理想の世の中が』

「しつこいな。お前さんらの安っぽい『理想』なんざ知ったことじゃないけど、近い内にソレを考え出した頭ごとこの世から消し去ってやる」

『貴族・王族の廃止、特権階級の再教育、極端な富裕層の粛清...』

「ソレって国が滅びるレベルで血を流してまで性急にやるべきことか?まったく、ミルトン全土で冬を越せない領民を大量に出してる時点で間違いと気づけよ」

『大義のためには必要な犠牲』

「お前さん達頭のオカシイ少数派(ノイジーマイノリティ)のために一国を犠牲にするかね。こっちは現在進行形でその後始末に奔走してんだ」

『リアン、シャル、デリク、ミラ...』

「首謀者どもの名か。もういい。お前さんの妄言(もうげん)は聞き飽きた」

『ぐ.......』

 【死霊使役(ネクロマンシー)の鬼神】の【魔法陣】に魔力を流して死霊(ゴースト)の魂を縛る。

 薄っすらと浮かんでいた死霊(ゴースト)が銀灰色の光を纏う。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「それで、今首都の中はどうなってる?食糧の不足や混乱は起きてるかい?」

『何も。食糧は何年分もある。誰も不満はない』

「予想通りか。周辺から好き放題奪い取っておいてよく言うぜ。それで、首都ミルトンにはどんな仕掛けがある?」

『城壁が魔道具になっている。鍵を持たない侵入者は迷宮に誘い込まれ永遠に彷徨い続ける』

「それが『密偵殺し』の仕掛けか。その『鍵』とやらはどこにある?」

『オレに与えられた家。隠してある』

「後で案内してもらおう。政変時の王族や貴族は生きてる?」

『あの時に半分は殺した。その後も耐えられない奴が何人かずつ死んでる』

「耐えられないって何に?」

『思想教育と強制労働...逆らうと閉じ込めて食事与えない』


「コイツらマジモンのソッチ系かよ。『スフォルツァ』の者は生き残ってる?」

『奴らは危険過ぎた。全員政変の時に殺した。仲間が何人も犠牲になった』

「そうか...」

 コレでハッキリとした。今残っている母ジョヴァンナの血族は自分だけだ。母の両親も兄弟も従兄弟さえも今はこの世にはいない。結婚のためにミルトンを離れていた母一人が難を逃れただけだ。


「お前さんにはコレからしっかり働いてもらうぜ」

『了解した。(あるじ)

「さしあたり、隠している『鍵』とやらに案内してもらおうか」


 フレデリカに声を掛け、彼女を伴って部屋を出る。

 ジャンフランコの中では怒りが渦巻いていたが、同時にいくつもの攻略プランが頭の中で構築されていく。首都ミルトンの完全制圧と(生存しているなら)王族・貴族の救出。首都に溜め込まれた財貨の回収、と戦略目標が固まっていく。ミルトン全土の掌握はほぼ終わり、残るは首都のみ。

『ここまで引っ張ったんだ。完全勝利を目指してやる』


今回の新要素:

・ 首都ミルトンの城壁に侵入するための『鍵』の存在

・ スフォルツァの血族の行方

・ 狂信者(テロリスト)死霊(ゴースト)を捕らえ使役する(名前は与えない)


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初めての作品投稿です。


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