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銭と神具は使いよう 〜 元WEB屋は魔法陣を解析して異世界を知る 〜  作者: 冬寂
騒乱の気配 ー スフォルツァ領

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大義のために死す side モブ騎士

すみません。残酷描写と胸糞表現があります。

 今日、オレは大義のために死ぬ。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 オレの産まれは農民だったが、何故かそんなオレでも産まれた時に【剣】の天恵(スキル)を授かっていたらしい。

 滅多にないことだが貴族の血を引いてる訳でもない農民にもごくたまに天恵(スキル)持ちが生まれることがあるそうだ。コレはオレに天恵(スキル)を授けた司祭の受け売りだが。


 だが、オレの両親はオレの天恵(スキル)を隠し、オレは五歳まで「天恵(スキル)なし」として育てられた。何でも教会の司祭の弱みを握ってたとかでオレの天恵(スキル)を隠すことに同意させたらしい。更に用意周到なことにオレの右手には常にボロ布が巻きつけられてて、勝手に外そうとすると毎回ぶん殴られた。後になって分かったけど、そうまでして奴らはオレの天恵(スキル)を隠したかったってことだったんだな。


 たまたま上の兄貴・姉貴が流行り病で死んじまって、オレを手放すのがイヤだったってことなんだが、田舎の貧乏農家の生活なんてハッキリ言ってクソだ。考えてもみろ。五歳になるかならないかのガキに朝早くから水汲みだ薪拾いだ何だかんだ言って夜遅くまで働かせるんだぜ。要は働き手が欲しかっただけだ。

 食いもんだってろくに食わせて貰えないからオレはいっつも腹を空かせてた。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 それが今度はあのクソ親どもが流行り病でおっ死んじまった。

 途方に暮れたオレは教会に逃げ込むことにした。

 教会には孤児院てのがあってオレみたいな親なしでも食べることくらいはできるって聞いてたからな。


 そしたらどうだ。


 何だか小綺麗な小父さん小母さんに引き合わされて、オレさえ良ければその小父さん小母さんの子供になれるっていうじゃないか。

 何でも子供を授かれなかった貴族がオレを引き取りたいって言うんだ。


 その時になって初めて、オレは自分が騎士になれる天恵(スキル)を持っていると知ったんだ。

 司祭様に教えられて初めて【神具】に魔力を流した時はビックリしたもんだぜ。

 それ見て小父さん小母さんも大喜びさ。キレイな服がもらえて飯を食わせてやるから子供になれと言われたら断る理由なんてないだろう?


 その日からオレは貴族になった。

 クソ親どもが生きてやがった頃には、目も合わせちゃいけねぇ、不敬になるから逆らってもいけねぇって教え込まれてたあのお貴族様にだぜ。オレは有頂天になったさ。


 貴族はいいぜ。黙ってても飯を一日三食食べさせてもらえるんだ。

 そりゃ腹一杯食えた訳じゃないがそこらに生えてる雑草を噛んで空腹を誤魔化してた頃からすりゃ、遥かにマシってもんだ。


 朝早くから勉強だ剣術の練習だって色々やらされたが、飯を食わせてもらってるんだ。

 少々のことは気にならねぇ。


 だが、秋になって学校ってとこに通うようになってオレは現実を知った。

 お貴族様にも序列があるなんて初めて知ったぜ。どうやらオレを引き取ってくれた小父さん小母さんは「下級」貴族で、更にその中でも少々肩身の狭い身分だったらしい。

 オマケにオレは周りと比べて言葉遣いも礼儀作法もまるでダメで、ついでに剣術も魔力も何もかもダメだった。そりゃそうだ。こちとらつい半年ほど前までは貧乏農家の息子だったんだからな。


 特に五歳になるまで魔力なんてものを使わなかったオレの魔力の量というのはどうしょうもなく少なかったらしい。それから魔力を増やすコツとやらを教えてもらって必死になってやってみたが、結局学校を卒業する頃になってもオレの魔力量は最底辺のまんま。【身体強化】ってのを教わってから毎晩ぶっ倒れるまで続けてたんだがな。


 そんな奴が学校を出ても碌な仕事なんかあるわけがない。

 首都の、とつけば良さげに思えるが、結局はただの門番の仕事にありつけただけマシってもんだ。


 給料だって平民出の門番とたいして変わりゃしない。


 だが、門番って仕事は嫌というほどオレの身分て奴を実感させてくれた。

 門を出入りする上位貴族って奴らはいつもいつもクソでかい馬車を乗り回して偉そうにふんぞり返ってやがる。

 オレみたいな最底辺の貴族なんざ目に入らねえみたいで、規則だから書類を見せろっつったって聞きやしねぇ。更には金持ってるんだか何だか知らんが平民のはずの商人どもですら、オレのことをゴミか何かのように扱いやがる。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 そんなオレにも大きな転機って奴が訪れた。

 たまたま酒場で知り合ったリアンって奴に誘われて行った集会で、オレのような思いをしてる仲間が大勢いるって知ったんだ。


 楽しいったらないぜ。昼間はどんな扱いにも黙って耐えてるだけのオレも、集会で仲間とつるんでる時だけは言いたいことが言えるんだ。


 高位貴族家はクソ

 お高く止まりやがって


 教会はクソ

 奴らが天恵(スキル)なんてもんを配るせいで身分なんてもんがあるんだ。


 商人どもはクソ

 平民のくせに自分らだけいい思いしやがって


 時々リアンとかそのお仲間の頭の良さそうな連中が時々集会にやってきては気持ちよくなる話をしていくんだ。

 世の中はオレたちみたいにあくせく働いてる奴らが支えているんだ。

 偉そうにしてる高位貴族や王様だって、金をうなるように持ってる商人どもだって、全部オレらの働きの上に胡座かいてチューチュー美味い汁を吸ってるだけの寄生虫だ。

 オレたちは寄生虫どもを打倒して正しい世界を作らなきゃいけないんだってな。

 そう、それを「大義」と呼ぶらしい。


 そんなある日、オレたちの集会でリアンの奴が三日後にセンザイイチグーのチャンスがくるって言い出した。

 何でもリアンの仲間のシャルとデリクって奴が王様に上手く取り入って、この国の貴族どもを粗方集める祭りをやらせることになったらしい。


 王宮に勤める料理番のミラって奴がオレたちの味方で、祭りで貴族どもの食事に毒を入れて身動きできなくするから、その間に近衛軍って王様の警護をする軍隊に潜り込んだリアンの仲間が抵抗する奴らを殺したり牢にぶち込んだりする段取りだった。


 オレはその日の門番を買って出る。門を閉め切って逃げ出そうという奴らの足止めをする役目をもらったんだ。


 その日はケッサクだったぜ。

 後ろから軍隊に追いかけられた高位貴族どもが開けてくれ!って泣きながら門を叩いてるのを眺めてるだけでよかった。

 後ろから軍隊の大砲やら魔法やらがバンバン飛んできて、そのたんびにあの偉そうな連中がゴミのように吹っ飛んで行くんだぜ。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 リアンやシャルやデリク、それにミラもか。

 奴らが偉くなっちまって、これからこの国は「ミルトン共和国だ」って宣言した。

 抵抗する連中を全部打倒していって、オレたちみたいに虐げられてた奴がこの国のご主人様になるんだとよ。


 オレはその後、門を守りきったのが認められて小隊の隊長って仕事をもらえた。

 大砲を引っ張る兵隊どもをゾロゾロ引きつれて歩いて、目的地に着いたら好きなだけぶっ放すんだ。

 相手は田舎に逃げ込んだ貴族どもだ。ゴミみたいに吹き飛ぶ姿を見るたびスッとしたぜ。


 その仕事はオレの性に合ってたみたいで手勢は少しずつ増えてった。

 あの日領地に残ってたガキやら女やらを立てて領地で踏ん張ってる連中を吹き飛ばすんだぜ。


 そうそう、あの日首都にいた貴族どもはオレたちの仲間以外は半分くらいおっ死んだそうだが、生き残った奴らは奴らで大変そうだ。天恵(スキル)を封じる魔道具を付けられて、飯もろくに食わせてもらえずに朝から晩まで畑仕事や荷運びや壁の補修の力仕事をやらせられてるんだ。

 笑えるだろ?男も女も関係なく、昔のオレみたいに地べたを這いずり回らされてるんだぜ。

 それでもはじめのうちは何人か突っかかってくる生きのいいのがいたが、そのたんびにぶん殴られてたらそのうち死んだような目になってこっちの言いなりになっちまった。いい気味だ。

 高位貴族だなんだとふんぞり返ってた奴らに身の程って奴を教えてやったんだ。


 首都の外では快進撃が続いてたんだが、それを止める奴が出てきた。

 スフォルツァって高位貴族の残党が城に籠もって頑張ってやがって、オレの隊も動員された。


 散々奴らの城に大砲の弾をぶち込んでやったが、奴らそれでも一歩も引きやがらねぇ。

 それどころかアホみたいにでかい魔法の火球がバンバン飛んできて、オレの隊も粗方吹き飛ばされちまった。オレかい?オレも吹き飛ばされたついでに片脚が千切れそうになってた。【治癒】魔法をもらってくっつきはしたんだが、どうしたって元通りには動かなくなっちまった。


 言ってみたら「スフォルツァ」ってのはオレの片脚の仇ってわけだ。


 そんなオレにも共和国は仕事をくれた。

 大砲の撃ち方を教える教官の仕事だ。

 城の中でこき使われてる中に「スフォルツァ」がいたら一発ぶん殴って片脚の敵討ちができると思ったが、どうやらあの日首都にいた「スフォルツァ」は全員殺されてたらしい。


 それからも時々「スフォルツァ」の名前はオレの耳にも聞こえてきた。

 奴ら隣国との国境近くの砦で踏ん張ってて、どうにも滅ぼせないらしかった。

 そのうち、あまりにどうしようもないから放っとこうとなったと聞いてたが...


 そうして首都で何年か暮らしていると、またオレたちの前に「スフォルツァ」が立ちふさがりやがった。

 奴らあれだけボコボコにしてやった城を奪い返して立て籠もっているらしい。


 大慌てで討伐軍が編成されて首都を出て行ったんだが、そん中にゃ当然オレの教え子も大勢いた。

 奴らにゃオレの知る限りを仕込んであるからな、オレに代わってまた十何年か前と同じようにボコボコにしてやりゃいい、そう思ってたんだが、冬になっても誰一人帰っては来なかった。

「スフォルツァ」はオレの片脚だけじゃねぇ。オレの大勢の教え子どもの仇にもなっちまった。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 更に悪いことに、冬が明けて春になったら、首都の周りじゅう、どこを見渡しても「スフォルツァ」の旗が翻っていたそうだ。


 リアンやシャル、デリクたちも何をどうしてこんなことになったか分からなくなったらしい。

 どこもかしこも塞がれてて助けを呼ぼうにも首都から出られなくなったって嘆いてた。


 まぁ、飯だけは随分と溜め込んでたから食うには困らんが何ともジリ貧だよな。

 そう思っていたのはオレだけじゃなかったらしい。


 ある日リアンがオレの住む部屋を訪ねてきて、まだ「共和国の大義」のために尽くす気はあるかと聞いてきた。

「スフォルツァ」に一泡吹かせるために一肌脱げっていうじゃないか、

 教え子どもの仇を討つチャンスをもらえるんだ。

 オレが一も二もなくやるって言ったら病院に連れて行かれた。

 オレの腹の中に特殊な魔石を埋め込むって言うんだ。


 オレが【身体強化】で思いっきり腹に魔力を流したらソイツが吹き飛ぶって仕掛けらしい。


 傷が治るまでの間、リアンの奴は繰り返しオレの役目について話していった。

 傷が治ったら、オレを秘密の抜け穴に案内する。

 一人通るのがやっとの狭い抜け穴だが、そこを抜けたら何としても「スフォルツァ」の城に辿り着け。

 そしてどんな手を使ってもいい、「スフォルツァ」の城に潜り込んで「スフォルツァ」の領主に近づいてオレごと吹っ飛ばせってな。

「領主」なんてまだ残ってやがったのか。とっくに葬り去ったはずなんだがな。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 悪い脚で長い長い抜け穴を出るまでには随分と苦労したが、近くでスフォルツァの城の近くで畑をやる奴を集めてるのに出くわしたからそこに紛れ込んだ。小さいが住むとこをもらって、足が悪くて畑仕事ができない代わりに手仕事をもらって何とか食い扶持を稼いでるうちに半年ほど経っちまった。

 右手にボロ布でも巻いときゃ、天恵(スキル)持ちだとバレることもあるまいよ。


 そしたら、城で大きな祭りがあるとかでオレたちも城の中に入れてもらえるって言うじゃないか。

 村長が言うには、「領主様」のありがたいお話も聴けると。


 そして今、オレは「スフォルツァ」の城の中にいる。


 いよいよ、「領主様」とご対面だ。


 広場の真ん中にちょっとした台が置かれていて、そこにまだ若いキレイな服を着た男女が立って話を始めた。あの服に大きく刺繍されてるのは、忘れもしない「スフォルツァ」の紋章だ。


 オレはと言えば脚を引きずっているのを気の毒に思われたか、一番前に座らされた。

「領主」の話しが進むにつれ、周りの連中が嬉しそうに手を叩いたり笑ったりを始めた。

 オレもつられて笑うが、あと少しでもっと笑えることが起こるんだぜ。


 そしたら、何かで気が緩んだのか、「領主」の近くに立ってたゴツい男が一瞬余所見をしやがった。


 今だ!


 動かない脚に【身体強化】の魔力を流して無理矢理に動かすともう片方の脚でジャンプして「領主」二人の胴にしがみついて倒れ込む。


 ゴツい男が慌ててこちらを向いたがもう手遅れだ。

 腹の魔石に魔力を流すと、リアンの言った通り、オレは腹を境に真っ二つになって吹っ飛んだ。

 見ると「領主」二人ともオレが抱えたまんまバラバラになって血を流してやがる。

 これで、この国の高位貴族は全滅だ。オレたちの「大義」の勝ちだ。


 おい、教え子ども。仇は討ってやったぜ。先生に感謝するんだな。

自爆テロリストの独白です。

テロリストなんで名前なんかありません。モブのまんまです。


今回の新要素:

・ 首都ミルトンには未知の抜け穴があるらしい。


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初めての作品投稿です。


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