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銭と神具は使いよう 〜 元WEB屋は魔法陣を解析して異世界を知る 〜  作者: 冬寂
蠢く亡霊たち ー リモーネ王国

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改良版ドローンによる殲滅戦

ほぼぶっつけ本番でリターンマッチです。

自律飛行する魔道具(飛行ドローン)】の試験飛行(テストフライト)を行い、そこで洗い出した課題を突貫工事で解決した翌日、まだ夜明け前の早朝から叩き起こされ勝手に着替えさせられた上に身繕いまでをされると、そのまま馬車に放り込まれる。


 ジャンフランコが眠気まなこを擦っていると、テーブルの上に置かれた軽食が目に入る。


 ぐぅと鳴る腹に促されて思わず手が出る。

 昨日一日だけで相当な作業量をこなしたのだ。その疲労を回復するために身体が食事を欲しているのである。

 まだ少年と言っていい年齢のジャンフランコは、多少の無理をしたとしても食欲のままに食事を摂るだけで疲労を回復させることができる。

 歳を重ねると疲労が食欲不振を呼び、それが疲労回復を遅らせる悪循環が始まるのだが、その心配は当分先のことである。

「仮にもジャンフランコ様はスフォルツァ家の御曹司で、いずれはレイチェル姫のご夫君もなる予定なのですから、移動中の馬車の中で手掴みでお食事を摂るなど本当はお勧めできないのですけれど」遠慮なく用意された軽食をパクつく様子が少々品がないように見えたのかフレデリカのお小言が飛んでくるが、今は栄養補給が最優先だ。

「時と場合によるさ。この後は敵地に赴く訳だからね。礼儀作法よりも時間効率(ダイパ)を優先した方がいい」

 そう。これからジャンフランコ(の代理のドローン)が向かう先はまごうかたなき戦場なのである。


 丁度軽食を食べ終わった頃に目的地に到着する。人目を避けて試作機を発着させられる場所ということで、昨日実機検証を行ったのと同じ郊外の空き地である。

 別の馬車で運ばれていた【自律飛行する魔道具(飛行ドローン)】の試作機(改)は既に地面に降ろされ、主の憑依(乗り移り)を、始動を待っている。


 ジャンフランコが無造作に血を三滴四滴と垂らし魔力を流すと視界に魔道具の視点からの映像が重なり、手足の感覚として魔道具の状態が伝わリ始める。

 それは【自律飛行する魔道具(飛行ドローン)】が起動した証しであり、ジャンフランコは昨日と同じく馬車の中に駆け込み、そこからは試作機から伝えられる感覚を解釈し機体操作に繋げる作業に没頭する。


「それじゃ、始めますよ」

 そう呟き目を閉じると、「写し身」を通じた試作機から彼の脳内に流れ込む情報に集中し、試作機はブルブルと機体を震わせながら離陸のための加速を始める。そのまま離陸させると、すぐに高度を取る。目的地は昨日と同じ。西へ。西へ。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 果たして、それ程時間も掛からずミント領 領都の上空に到達すると、幸いなことに城壁を挟んだ戦闘はまだ終わってなかった。


「領都上空に到着。よくぞ持ち堪えてくれたもんだ」

 そう呟いた声は、馬車の中にいるジャンフランコ自身の口から馬車に同乗して警護するフレデリカやピエレッタの耳に届けるためでもある。そうして戦況についてリアルタイムで共有するのだ。


 倍量記法の【隠ぺい】と【認識阻害】を起動し高度を下げていく。

 眼下で続く戦闘は完全に膠着状態と見えるが、こころなしか昨日よりは城壁に張り付いてよじ登ろうとする動く死体(リビングデッド)が増えているようにも見える。あと一歩で動く死体(リビングデッド)の侵入を許しそうな、そんな絶望的なところまで追い込まれているに違いない。


 城壁の上から投げつけられる可燃物や石などの数も昨日より減っているように見えるのは守備側の疲労によるものか、それとも継戦能力の低下か、あるいはその両方か。


 危機的な状況ではあるが持ちこたえていることに違いはない。何より、ジャンフランコはその均衡を人間側に押し戻すためにこの場に(ドローンを介してだが)いるのだ。


 まずは倍量記法の【破魔】の効果を見極めるために、昨日矢弾での攻撃を受けた高度の倍くらいの高さから【魔法陣】を起動する。狙いは城壁付近の動く死体(リビングデッド)


 主翼の下面から、【破魔】の魔法が光の雨となって振り注ぐ。高度を取った分、広範囲に振り注ぐこととなったが遠目には光のシャワーに見えたに違いない。【自律飛行する魔道具(飛行ドローン)】の移動に合わせて光のシャワーも動くので、一回発動するだけで思ったよりも広範囲に【破魔】の光が降り注ぐ。


 光を浴びた動く死体(リビングデッド)どもがグズグズと形を失い、サラサラとした砂へと変じていく。衣服や鎧などだけが変わらずその場に残る。


 倍量記法の【破魔】は、範囲内の動く死体(リビングデッド)を残すことなく塵芥に変えてしまったようだ。

『さすがは倍量記法ってところかな。安全マージンを見込んだ高度から発動させても動く死体(リビングデッド)に有効なダメージを与えられている』

「初撃で多数の敵を殲滅。コレは有効打になりそうだ」

 馬車の中で待機しているフレデリカ達にも伝わるように声に出して呟いていく。

 即座に「油断禁物です」「魔力の残量にお気をつけ下さい」と小言が返ってきたので、これは藪蛇になったと見るべきか。


 一度上昇して高度を取り直し再び先ほどの高度まで降下する。城壁に群がっていた動く死体(リビングデッド)は一掃されており、ならばと離れた場所から城壁に向けて動き出す動く死体(リビングデッド)どもの上に移動して再び【破魔】の光を浴びせては上昇する。これを数回繰り返すと、ミント領の領都付近には動く死体(リビングデッド)の姿は見当たらなくなった。

「目に見える範囲の動く死体(リビングデッド)はすべて殲滅」


自律飛行する魔道具(飛行ドローン)】の遥か下を何発もの矢弾が通り過ぎる。

 だが、それらは脅威とは感じられない。狙って撃っているというよりかは【破魔】の光を目当てに見当をつけて撃っているだけのようだ。撃ってくるタイミングも狙う位置も何だかチグハグだ。

「今のところ敵に発見されている気配はなし。このまま周辺の情報収集に移る」


 チラリと視界の端を探ると、【光】属性の魔力はまだ三分のニほど、【闇】属性については大半が残っていると表示されている。まだまだ撤退には早い。

『古代の魔石の保持魔力量が半端ないな。少し奥まで進んでみるか』

 目に見えない魔力を基準にそう考えるのが正しいか議論の余地はありそうだが、ジャンフランコは「物量に任せて」敵を殲滅している気分を味わえて何となく気分が高揚している。


『とりあえず、'ミント伯爵家中'と名乗った男の痕跡を辿ってみよう』

 単にこの地の目印になりそうなものが他にないからなのだが、記録されている男の痕跡で最も奥の地点を目指す。

 男の痕跡は荒れ地の奥まで進んだ後、領都近くまで折り返してそこで途絶えていた。おそらくは既に動く死体(リビングデッド)に成り果てて領都に攻め込み、最後は【破魔】の光を浴びて塵と化したのだろう。


 速度を上げて暫く飛ぶと、崖下に何やら岩で組んだ構造物のようなものが見えて来る。


『ビンゴ』


 位置的には男の痕跡の折り返し地点に一致する。どうやらここが動く死体(リビングデッド)が湧き出してきた場所のようだ。

 岩の構造物の周りに動く死体(リビングデッド)も何体か見えたので、行き掛けの駄賃とばかりに【破魔】の光を浴びせて塵に変えてから反転離脱する。

 おそらく先ほどの場所には遺跡があり、それがミント伯爵家を破滅させる原因となったのだろう。

 碌な準備も調査もしないままに不用意に手を出した結果、家中の者の大半を動く死体(リビングデッド)に変える結末になったのではないか。

 以前ローレ教室に押し掛けてきた男の顛末に係る推測は、後ほどローレ教室で共有しようと思う。


 ひとまず、千体を超える動く死体(リビングデッド)の掃討は粗方終わり、動く死体(リビングデッド)がミントの領都を飲み込むことは阻止した。

 帰りにもう一度、高度と速度を落として領都の上空を通過する。疲労のためかそこかしこに寝転がっている者が多いが、その間を縫って食事や水を配っていると思しき人の姿も見えることから、治安維持する騎士団がいなくとも一定の秩序は保たれているように見える。あるいは動く死体(リビングデッド)からの防衛戦を通じて即席の秩序が形作られたか。


 いずれにせよ、ここから先は王国騎士団の仕事だ。


 この試作機には向かって矢弾を撃ちかけてきた敵は残っていようが、それが大きなリスクになるようであれば、また次の機会に対処するとしよう。

今回の新要素:

・ ミント伯爵家が最後に挑んだ遺跡


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