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銭と神具は使いよう 〜 元WEB屋は魔法陣を解析して異世界を知る 〜  作者: 冬寂
蠢く亡霊たち ー リモーネ王国

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遺跡探索事情の変化の思わぬ影響

 メディギーニ商会の地下演習場、その一角に壁で囲った即席のテストブースが設置されて、その真ん中あたりには大きめのジョッキくらいの大きさの黒い短い筒が固定されている。


 その黒い筒からは何本かの魔導線が壁の外に向かって伸びており、その先の壁面は一部が透明にされ、その向こう側にはジャンフランコをはじめ数人が透明な壁越しに黒い筒をじっと見つめている姿がある。


「それでは、燃焼、もとい、駆動実験を始めます。三、二、一、スタート」


 黒い筒の先に置かれた香からまっすぐ上に立ち昇っていた白い煙が黒い筒の中に吸い込まれはじめ、反対側から白い煙の筋となって流れていく。


「少しずつ出力をあげます」

 ジャンフランコが黒い筒型の魔道具の操作をすると、白い煙の流れる速さがどんどん速くなり、やがてフッと消える。魔道具の周囲を囲う壁がビリビリと震える。

 そのまま最高出力状態を続けていると筒の内側に熱が発生するのか少しずつ赤熱していくが、変形その他の異常は認められない。

 ある程度その状態を続けたあと、ジャンフランコは魔力の流れを止める。

 轟々と流れていた風の音もビリビリ震えていた壁もしんと静かになる。


「駆動実験は成功。これで終了します」


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「魔力を使った出力の調整も想定通りだし、駆動部の試作にもコレで目処がついたよ」

「順調ですね。これで、【偵察】の魔道具もほぼ完成ですか?」

 相変わらずピエレッタは魔道具作成に係る実験やら何やらには喜んでつきあってくれる。ほぼ助手と言っていい。

「最重要部分がまだまだかなぁ。駆動部や翼の操作を遠隔で行う部分はまだ実用的ではないね」


 ジャンフランコが作ろうとしているのは前世の飛行機の形を模した魔道具である。人を載せることは想定しないで、代わりに映写の魔道具(ライブカメラ)を積んで遠隔操作で飛ばす偵察用ドローンな完成を目指している。


 軽く強靭な素材で作った胴体と翼に加えて、今日の実験で駆動部にも目処がついた。筒状の部分には【風】の神の権能(けんのう)を呼び出す【魔法陣】が仕込まれており、【木】属性の魔力の流し方をコントロールすることで低速から高速まで筒の中を流れる空気の勢いを操作する。形と機能からジャンフランコが「ダ◯ソン」と呼んでいる魔道具だ。

 これをジェットエンジンよろしく機体に固定することで、推進力を得て飛行する魔道具を作ろうという寸法だ。


 ただ、課題は残っていて遠隔操縦をどう実現するかだけは具体化していない。

「『操作を行う』って、今検討してるのは伝言の魔道具(メッセンジャー)を応用した奴ですよね?文字の代わりに飛ばす向きや速度の情報を送るだけだから、って先日おっしゃったじゃないですか」

「ああ、そっちは問題ないんだけど、見えないほど遠くから魔道具を操作するために映写の魔道具(ライブカメラ)の映像を手元に伝送する魔道具がまだなんだ。これも伝言の魔道具(メッセンジャー)の応用なんだけど、まだ性能が十分ではなくてさ」


 画面を見ながらドローンを遠隔操作したいのだが、そのためには映像のデータを伝送するのに十分な通信速度を確保したい。伝言の魔道具(メッセンジャー)は元々短い文章の伝送を行うために【飛信】の鬼神を使役する魔道具なのだが、映像を送受信できるだけの高速通信には鬼神が対応できず四苦八苦しているというわけだ。


「それでしたら、その部分はわたくしに任せていただけませんか?ちょっとしたアイディアもありますし、一月ほどいただければカタチにしてみせます」

「へぇ、頼もしいね。ではお任せするね。何か必要なものはあるかい?」

「そうですね。では、『神々への道標』の写本をお借りできますか?」

「了解。ここの地下演習場の中でだけ閲覧するなら問題ないよ。あと、呼び出す権能(けんのう)はメディギーニに叱られない程度の奴にしといてね」

『神々への道標』は神々を呼び出すための【魔法陣】を集めた本だ。様々な神々と約定を結んで新たな魔法/戦技を覚えたり属性を増やしたりとスフォルツァ家臣団の戦力の底上げに使われている。

 そういえば、ピエレッタも最近光と闇の属性を増やして全属性持ちになったんだったか。


「ありがとうございます。それと、まだ出来上がってない映像の伝送部分以外を試作機として一機組み上げていただけませんか?」

「それは構わないけど、一週間後でも大丈夫?」

「もちろんです」

「では頼んだよ」


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 地下演習場での実験の後始末をピエレッタに任せると、そのまま中庭の部屋(ディーリング・ルーム)へと移動する。


 ニュースやら何やらが貼り出されたボードを見やると、ミント伯爵家の没落が大きく取り上げられた新聞が貼り出されている。


 騎士団に続き、伯爵自身をはじめ主要な家臣が全員失踪してしまい、奥方とご令嬢が庇護を求めて首都を訪れているとか何とか。領地は完全に統治放棄のような状態になっており、西方の要であるミント伯爵領の惨状には王国政府も頭を痛めていると記事は締めくくっている。


 その隣には、ミント伯爵家の没落の原因として、遺跡探索にのめり込み過ぎたことを政府が問題視していて、遺跡探索を許可制にすることが検討されているという噂のメモ。


 その下には遺跡産の魔道具を求める声が高まっているという有力商家の集まりでの口コミ。これはメディギーニ商会の商会員が実際に集まりの中で情報収集した議事録形式の文書である。


『ふーん。ミント伯爵家が遺跡探索でやらかした影響は結構多そうだね?うちの魔道具部門を上手く動かせないかな?』

「ねぇ、【治癒】とか【解毒】とかの魔道具への引き合いとか、魔道具関係の動きはない?」

「そちらは相変わらず王国騎士団からの引き合いが中心ですが、高位貴族家から数件、問い合わせが入っています」

「魔道具と直接関係はないのですが、いくつかの商会が遺跡探索から撤退したとかで元従業員と揉めているって話があります」

「『元』ってことは解雇した、ってことで合ってる?」

「ええ、同じように契約を解除された傭兵団にも不穏な動きがあるとか」


『リモーネ国内での魔道具探索は頭打ち、ってローレ教諭(せんせい)が言ってたし、いよいよ、これはスフォルツァ領内に人材を引き込むチャンスかな?』

「その遺跡探索に関係ありそうな元商会員だったり傭兵団と個別に接触を始められないかな?将来的にスフォルツァ領内に残る遺跡探索をさせたいんだけど」

「接触するのは構いませんが、その先は流石に...」

「ハイハイ、了解です。ちゃんと母様に相談しときます。それと、ジルベルトを呼んで先日のローレ教室での会話を議事録に起こすよう宿題を出しておいて。提出先はこの中庭の部屋(ディーリング・ルーム)。皆も読み込んでおいて」

「「「「はい」」」」


『リモーネ国内では遺跡産の魔道具の供給が絶たれちゃう訳だし、このチャンスに乗じて一儲けできるかもね」


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「悪いお顔で楽しく悪だくみをされてるところ申し訳ありませんが、ご報告とご相談があります」

「いいよ。言ってみて」

「オグルディ教皇から、ミント伯爵領での人道支援について資金援助の申し入れがあります」

「了解。資金・現物両方の支援を惜しまないから必要な量について相談するよう伝えておいて。ただし領内の治安に不安があるから教皇ご本人は絶対に首都を離れないよう強く申し入れておいて」

「了解です。実は既に現地調査の人員に被害が出ているとかで、そちら方面の相談もあります」

「荒事もとい治安維持は王国騎士団の領分でしょ?当商会に相談とは?」

「その王国騎士団からの相談ですね。近々直接若様に相談されたいことがあるとか」

「了解。そっちのスケジュール調整は任せるね」

今回の新要素:

・ 偵察用ドローン(絶賛開発中)

・ 遺跡探索に関する変化(魔道具市場と雇用事情)


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初めての作品投稿です。


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